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授業紹介:教育行政論(2024年度・教育学類)

(この記事は、2024年度時点での授業内容をもとにしています。)

筑波大学における私の学群・学類(※筑波大学の学部相当)での主たる担当科目の一つが、「教育行政論」(教育学類開設・専門科目)です。標準履修年次は2年生で、講義中心で、教育行政・政策に関する内容を扱っていく授業となっています。

3年目となり、ある程度ベースとなる形もできつつあるので、せっかくなので少しばかり内容を紹介したいと思います。

授業内容の構成は、以下のようになっています。(75分×20回)

第1回~第2回 はじめに
(イントロダクション、教育行政について学ぶということ、教育行政・政策をめぐる視点/争点の概観)
第3回~第4回 教育政策はどうつくられるのか?
(中央教育行政、地方教育行政)
第5回~第7回 教育制度はどのようになっているのか?
(教育を受ける権利と教育制度、就学義務と不登校、外国人児童生徒の教育保障、学校の設置者と学校体系)
第8回~第10回 教育課程はどのようにつくられるのか?
(学習指導要領と教科書制度、教育と政治的中立性、教育課程の伝達と実施)
第11回~第13回 教育を支えるリソースはどう確保されるのか?
(教育実践を支えるリソース、教育財政のしくみ、教育財政とエビデンス)
第14回~第15回 教育政策をどう評価するのか?
(学校評価、教員評価、教育政策評価)
第16回~第19回 現代学校教育の課題と教育行政・政策
(子どもの貧困と教育費、保護者・地域住民の参加 、子どもの権利/子どもの参加、こども家庭庁の動向)
第20回 まとめと総括

実は私自身が学部生で学び始めた頃、この分野に興味を抱きつつも、当時はいまひとつ深くのめり込めなかったところもありました。そのため、学部生の頃の自分が、この分野の面白さや広がり・深まりを少しでも感じられるにはどうすれば良いか…?ということも意識しながら、授業内容を組み立てています。

授業内容を組む際に意識していることの一つは、制度や政策の解説というよりも、「問い」や「視点」を軸に授業を作るということです。この点については、こちらの書籍からも多くの示唆を得ています。

村上祐介・橋野晶寛『教育政策・行政の考え方』有斐閣、2020年

本書の特徴として,(略)個別の教育政策領域や組織に着目した「トピック型」の教科書ではなく,理論的な概念や政策選択の対立軸を章構成のベースにしていることである。「トピック型」の教科書は初学者にも比較的わかりやすく,授業担当者の側も教えやすいというメリットはあるが,教育政策・行政の考え方として何が重要なのか,教育政策・行政においてどのような価値や規範的な考え方があるのか,といった点について理解を深めることが難しい。言い換えれば,これまでの教科書は個別の仕組みやその論点・課題はよく理解できるが,全体として教育政策・行政の何がみえるようになるのかが不明確になりがちである。

村上祐介・橋野晶寛『教育政策・行政の考え方』2020年、2頁

私自身の授業でも、個別の制度や政策の解説だけでなく、その背後にどのような争点や視点があるのか、またそれらが他のトピックとどのように繋がってくるのか、といったことを意識して講義を行っています。(そのため、毎回の講義のまとめで、いくつかの視点や論点の例を提示しています。)

また、学部当時の私が、教育行政・政策に目を向けることが重要ということは理解しながらも、関心を深めづらかった別の理由として、教育制度・行政・政策それ自体で議論が閉じていることが多く、教室や学校での実践、子どもの学びや育ちとどう繋がっていくのかが見えづらかったということもありました。(このことは今でも、自分自身の研究を含めた問題意識にも少なからず通底していたりもします。)

そのため、この授業では、教育政策・行政のありようが教育実践や子どもの学びや育ちにどのように影響を与えるのか(与えないのか)、という点にもできるだけ視野を広げるようにし、学生の皆さんにもそうした視点も意識してみてほしいと話しています。

なお、授業の進め方としては、以下のような流れ(サイクル)を基本として進める形で定着しつつあります。

  • 講義(最後にいくつかの視点・論点も提示)

  • リフレクションコメントの記入

  • 次回の授業冒頭で:前回の受講生の振り返りの紹介(&古田からのコメント)→それを読んでのグループでの意見交換

徐々に形になってきているとはいえ、まだまだ改善の余地もありますが、ありがたいことに、授業がきっかけや決め手となってこの分野に関心を持ったり、ゼミに来てくれたりする学生なども少なからずいるので、引き続き改善を続けながら頑張りたいと思います。

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