中学受験・高校受験生の親御さん、将来受ける大学の「総合型選抜」について調べてみませんか:早稲田大学編その2
前回からの続きです。早稲田大学の総合型選抜入試のラインナップの中から、「地域探究・貢献入試」「社会科学部 全国自己推薦入試」の例をとりあげてみました。お子さんがなにか打ち込めるものがありそう、地域活動に情熱を注げそう、ということであれば、こういった大学入試を目指すことを前提に、中学(中高一貫校)や高校を選ぶという手があると思います。そしてその場合は、地域トップ校だけでなく、もうちょっと視野を広げて、こういった活動を熱心に行えるようなカリキュラムやプログラムがある学校、校外での活動に理解が深い学校を選ぶということも選択肢に入ってくるはずです。
とはいえ、たとえば中学受験がこれから、という小学生の時点で、そこまで人生の方向性が決まっている子もそれほど多くはないと思います。(それに、方向性は変わりますもんね。うちの子も、小学校低学年時代は結構な科学少年で毎週末どこかの博物館に通っていましたが、今は完全に文系です)
そこで、総合型選抜を活用するためのもうひとつの可能性があります。
「英語」です。
また、早稲田大学の例から見てみましょう。
早稲田大学には、学位取得を英語で行えるプログラムがいくつかあります。(つまり、授業が基本的に全部英語、ということです)その多くが留学生を対象としたものなのですが、実は日本の一般的な高校を卒業した学生でも入れるプログラムが2つあるのです。
「国際教養学部 AO入試(4月入学・国内選考)」(志願者の学力的側面を評価の中心に据えつつも高等学校時代での様々な活動経験や、当学部への志望動機をあわせて評価対象とすることで、学力・知識のみに偏重せず、問題発見・解決能力の基礎となる思考力や表現力、それらを実行に移す上での行動力まで含めて評価の対象とする入試制度)や (2025年度入試要項)
「文化構想学部 国際日本文化論プログラム(JCulP)日本学生入試」(文化構想学部においてJCulP(国際日本文化論プログラム)の4月入学枠に主に日本の高校出身者を募集する入試制度。JCulPはさまざまな日本文化についてグローバルな視点から英語で学ぶことで、当たり前のものとして見過ごしてきた日本の歴史や伝統、習慣や考え方を「新たな角度から捉え直す」ことを試みる英語学位プログラム)がそれにあたります。 (2025年度入試要項)
もちろん、このような英語で学位を取得するプログラムは要求される英語のレベルが非常に高いです。「英検」(実用英語技能検定)で言うと、2級レベル(高校卒業レベル)ではなく、準1級(大学中級程度)の取得が必須になります。おそらく国際教養学部AO入試においては、少なくない数の受験生が英検1級保持者(大学上級レベル)と思われ、また11月に行われる筆記審査のCritical Writingも、かなり高度な英語の記述が必要になります。JCulPは英検2300点以上(ほぼ準1級合格レベル)が出願の条件と明記されているので、それ以上であれば出願可能です。出願書類(英語の論文課題がたくさんあります)で選抜されると英語での面接(ビデオ会議)があります。ある程度スピーキングができる必要があるということです。ちなみにJCulPは一般選抜の入試枠はなく、全学生がこの総合型選抜から選ばれます。何らかの「日本文化」(武道からアニメまで、いろいろな切り口があると思います)に親しんでいる子であれば、プラス英語で強みを作ることができそうな面白いプログラムです。
ということで、決して簡単な試験ではないわけですが、これからの中学・高校の学生生活において、英語の習得・活用に特に力を入れたいと考えるのであれば、大学受験時にこのような選択肢もある、ということを知っておくことは有用かと思います。特に、帰国子女でなくとも英語が大好き、という子であればぜひ。
早稲田大学は私立最難関のひとつですから、総合型選抜でも相当の対策が必要になります。ただ、いわゆる受験のペーパーテストの勉強が得意でなくても合格の可能性がある、そのためには中学・高校での「経験」がとても大切、その「経験」を積む舞台としての中学・高校選びという考え方も(偏差値で学校を選ぶという考え方以外にも)ある、ということはぜひお伝えしたいです。
次回は、早稲田ではなく、「総合型選抜における英語のハードルがそこまで高くない」事例をぜひご紹介したいです。「これならうちの子でもいけるかも?」という感覚を掴んでもらえると、嬉しいです。