vsマルチ専務〜とんでも上司との出会い編〜
数年前、勤めていた小さな会社での出来事です。
少し大きなプロジェクトがあり、専務と行動することが多くなりました。
専務は女性、年齢は50代後半。独身。コシノヒロコのようなボブカットで、スネ夫のお母さんがかけているようなメガネをしています。仕事が恋人のようで、休日でも出社をし掃除や雑務をこなしていました。
いつも社員の気配りを欠かさず、少しでも体調が悪そうな社員がいると「大丈夫?早く病院にいったほうがいいよ!」「今、のど飴持ってるから食べて!」「葛根湯あるからのみな!」とフォローをしていていました。
「なんて優しいんだ!働き者なだけではなく、社員の体調に気を配れるなんて!」
私は専務が《理想的な上司》であると強く思うようになっていきます。
当然私も専務の健康面のフォローを受けます。
冬になるとインフルエンザの流行が予想されるので、社内でも予防注射が実施されることになりました。
しかし専務は「私は予防注射なんて受けないわよ、毎年そうなの」と一点張り。
世の中には注射が嫌いな方もいますし、予防接種系を一切受けたくない(アンチ予防接種派)方もいると思います。なので専務もそっち側の方なのかと思いました。
しかし専務は「そっち側」であるものの、斜め右上方向のそっち側の方であったのです…。
ゆい、謎の赤玉をもらう
一人暮らしをしている私はよく風邪をひきます。咳をすると「ちょっと、風邪?いま、いいもの持っているから待ってて…」と言い専務はロッカールームへ。
1、2分するとリップクリームより少し小さく細い筒を手にした専務が。
筒のフタを開けると中から赤い色をしたBB弾のような玉が出てきました。
「これ、いますぐ食べて。これを食べるとね、風邪を一切引かなくなるのよ」
「私ね、風邪っぽいな〜って思ったらすぐに食べるの。すると、全然不調なんてなくなるのよ」
「オーガニックで体にいいのよ!植物の天然のエキスやオイルでできているから安全なのよ」
まるで通販番組の司会のごとく、次から次へと効能や効果に関するワードが出てきます。ピュアな心を持つ私は「へぇ!風邪引かなくなるのはすごいな!」と思い、赤玉2つを口に。
噛んでみるとなんとも苦いような、ハッカのような、でも苦い汁が広がります。
「私、これいつでも持っているから欲しい時いってちょうだい」
まるで魔法の薬を手にした気分です。「助かるな〜」なんて思ってました。
しかし、その行動が後々の悪夢を呼び起こす、とんでもない召喚魔法だったのです…
〜続く〜