秘密の花園
一人暮らしを始めてから毎月足を運んでいる、とあるお店がある。
大塚駅より徒歩5分、南大塚の桜並木通りにポツンと現れる「ヒネルマ西部」というお店だ。
ここは、ただの"お花屋さん"とは言い難い。
小学生の頃に読んだ小説「秘密の花園(バーネット著)」のタイトルを借りて、"花園"と呼ばせていただくことにする。
階段を上り2階の入り口をくぐると、見たことのない形をしたお花や、品種は知っているけれど珍しい色をしたお花など、ビルの一室にこれでもかというほどたくさんのお花たちが立ち並んでいる。
これらのお花たちをセレクトしているヒネルマ西部の店主さんは、とっても気さくで優しい方だ。
本当にお花が大好きで、お花にも愛されているんだろうなと思える方。
花のことを「花」とは呼ばず、必ず「お花」と呼ぶとことろもまた素敵だなぁと思う。
いつもお店を訪れると「ゆいさん、また来てくれたんですね!」と声をかけてくださって、最近の出来事や仕事のことなど私の話にゆっくりと耳を傾けてくれる。
私がこの花園で何より楽しみにしていることは、店主さんに「このお花はなんですか?」とたずねることだ。
「これは岡山県から来たお花で・・・」「これは職人さんがこうやって色を混ぜたお花で・・・」「このお花の名前は・・・」
店主さんの止まらないお花への想いとエピソードを聴いて、今日はどのお花をお買い上げしよう・・・と贅沢に悩むのである。
悩んで悩んで悩んだ末に選んだお花たちを部屋の花瓶に飾ると、6.6畳の一人暮らしの部屋がたちまち幸せな空間になる。
つぼみが膨らんで花を咲かせたり、思いもよらない方向に茎が伸びたり、枯れて花びらを床に落としたり。
ドライフラワーや造花も素敵だけど、生花ならではの魅力にすっかりはまってしまっている。
この週末もまた”秘密の花園”を訪れた。
「このお花は何ですか?」と繰り返し聞いているうちに、仕事で疲れていた心がほっと平穏になっていくのを感じた。
この日もまたお気に入りのお花を見つけて「ありがとうございました〜」と帰ろうとすると
「ゆいさん!屋上見に行きませんか?」と店主さんに呼び止められた。
実は”桜並木通り”という名がついているように、お店の前の通りには桜の木がバーっと並んでいる。
道路を歩きながらでも十分に楽しめる通りなのだが、屋上からの眺めは格別なのだそうだ。
お店の人以外が入ってもいいのかな?と思いながら店主さんの後ろを追って階段を登っていくと、5階建ての屋上にたどり着いた。
「うわあ・・・!」
日が沈み始めたオレンジ色の空と屋上のフェンスから手が届きそうな高さにある桜の木々。
とても綺麗な世界だった。
すっかりお花見の機会を逃していた私だったが、思いがけず素敵な景色に出会うことができた。
来月はどんなお花に出会えるのだろうか。
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