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成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈


Amazon商品ページより

『たくさん種をまいて、ひとつでも花が咲けばいい。花が咲かなかったとしても、挑戦した経験はすべて肥やしになる。』

2024年の本屋大賞を受賞した、言わずとしれた宮島未奈のデビュー作。
帯文にある「最高の主人公」というキャッチコピーに偽りはなく、最初から最後まで、手が止まらない一冊。

圧倒的主人公

主人公「成瀬あかり」は一言でいうと『ぶっとんでいる。』
彼女のやることなすことは、常人からすると奇想天外なものばかりで、そのの一挙手一投足に読者は目を奪われる。その上、(表紙を見る限り)容姿端麗、頭脳明晰、品行方正とかなりのハイスペック人間だ。
そして、彼女を魅力的にする要素の一つに(親友の島崎に言わせれば)「変なことを言い出す」がある。

成瀬あかりの魅力

その「変なこと」の内容は差し控えるが、要は「天下を取りにいく」のである。その分野はスポーツや学業といった一般に想定される範疇を軽々と超え、想像もつかない方向へ成瀬は動く。成瀬は次は一体何を目指すのか、そして周囲の人間は彼女にどう振り回されるのか、読者は知りたいという欲求に突き動かされる。

影響は周囲の人間へ

しかし、成瀬あかりだけではもちろん物語は成立しない。彼女の奇想天外な行動によって、彼女の周囲の人間の魅力もまた光り輝く。特に親友の島崎は平凡を気取っているが、私からすれば彼女も十分に主人公たる性質を持っている。成瀬あかりという影響力の塊とずっと身近にいるのだから、島崎もその光を十分に受け取ってきたのだろう。

青春とその名残

彼女が何かに挑戦することで、周囲の人間と線をつなげていく姿は、まさに青春を思わせる。同時に描かれるのは、青春の時間が限られていること、そして青春は大人になろうと取り戻せるものであるということ。大人になった読者にとって、彼女たちの日常の中で見せる輝きに憧れを抱かずにはいられない。

終わりに

冒頭でも述べた通り、清々しく一気に読み進められる青春小説である。まだ未読の方には、一度手にとっていただくことを強く推奨する。続編もでているようで、余韻が冷めきらぬうちに読んでおきたい。


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