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ゆっくり、いそげ ~人を大切にする経営の未来、資本主義の未来~

昨年12月に「ゆっくり急げ2『大きなシステムと小さなファンタジー』」(クルミド出版)を出版したクルミドコーヒー店主 影山知明さんと3月6日(木)にトークイベントを開催します。

影山さんは、大学卒業後、外資系戦略コンサル会社、投資会社を経て、鎌倉投信の設立とほぼ同時期(2008年)に地元の国分寺市でシェアハウス「マージュ西国分寺」やcafe「クルミドコーヒー」を開業した後、地域通貨「ぶんじ」など、人と人とがつながる様々な取り組みを通じて、これからの経済や社会のかたちをつくろうとされています。
影山さんが日々思索を深め、実業を通じて人と経済と社会のあり方を模索しつづける中からたどり着いた、哲学・思想、経済、経営や組織、社会への視座など、多様な要素が盛り込まれたこの著書は、読みごたえのある渾身の書です。私もこの本を読みながら何度も心が揺さぶられました。

今回のイベントの対談テーマは、「ゆっくり、いそげ ~人を大切にする経営の未来、資本主義の未来~」です。これからの資本主義や経営についてだけではなく、働く意味や自分らしく生きるヒントを見つけるきっかけになればと思い、影山さんに対談をお願いしました。参加者との距離を縮め、こぢんまりとした会にしましたので、ぜひ様々な方に参加いただけたら嬉しいです。


実際の対談は、どのように展開するかわかりませんが、私が興味を持って掘り下げたいと思っていることを、本の記述を引用しながら書いてみました。

1.  大きなシステムの問題

今、私たちの多くは、グローバルな資本主義経済の中で暮らしています。モノやサービスをふやし、金銭価値で計る経済の拡大再生産を繰り返す大きな経済の仕組み、それに適合するピラミッド型(△)の社会が影山さんの本のタイトルにある「大きなシステム」です。

このシステムの中では、経済の中核を担う企業は、生み出したい目に見える成果を定義(△の頂点)して効率的に短期間でたどり着くために経営を営み、より質の高い仕事をより効率的に実現しようとします。その結果、人そのものが規格化され、手段となり、個の存在が希薄化したといえるでしょう。

多くの人は、無意識のうちに、この△システムに縛られた時間を生きています。自分の時間を生きることができずに、孤独感や息苦しさを感じている人も多いように感じます。

著書を通じ、影山さんは、この大きなシステムの△構造をひっくり返し、逆ピラミッド型(▽)の社会づくりを考えられないか、と提案します。▽の経済・社会とは、成果を事前に定義せずに、一人一人の存在、一つひとつの仕事、関係性、偶発性、縁といった過程を大事にし、その行きつく先は事前に規定せずにオープンに考えようとするものです。あたかも植物が育つように、多様ないのちが育まれる生態系のような経済、社会です。

では、それをどのように実現するのでしょうか。影山さんが考える可能性の一つが「友愛の経済社会」です。

2.(大きなシステムをひっくり返す)友愛の経済社会

今、私たちの生活は(人々の生活の集合体である社会も)、お金を介して様々なモノやサービス、つまり他者の労働をお金で融通し合うことで成り立っています。そのため、いかに売上や収入をふやすかが、企業活動や仕事の目的になりがちです。そこに様々なひずみが生まれ、限界も生じています。そこで、影山さんは、お金をふやすことよりもむしろ、出ていくお金を減らすことを大胆に考えてみてはどうだろう、と提案します。

「お金に頼る量を減らす」とは、具体的にいうと、ある程度顔の見える特定多数の人、特定の地域に関わる人との中で、
①  あるものを使う(≒「シェアリング」)
②  関係性に目を向ける(≒「共助の経済や金融」)
③  自分達でつくる(≒「地産地消」)
ことがふつうにある社会づくりを目指すというものです。

思い起こせば、私は幼少期にこのことを体験しています。

私は島根県大田市という田舎で生まれ育ちました。両親は、町にいくつかしかない小さな食料品店と米農家を営んでいました。今でいえば相対的貧困層の部類に入る家計所得でしたが、貧しいと感じたことは一度もなく、むしろ豊かさを感じていました。おそらく、そこには豊かな人間関係と自然、お金に頼らなくてもよい共助の社会システムがあったからだと思います。そのことが、生きていく上での安心感につながっていたのだと感じます。

このように私が抱いた感覚を、影山さんは著書の中でこのように記しています。

「お金に頼り、利用し合う関係を繰り返すことで失ってきた相互理解や信頼といった関係性にもう一度目を向けることで、そうした方策(①~③)も絵空事でなくなる。そして関係性が育つほど、お金に頼る部分は減らしていける。関係性を大事にすることで経済性が改善し、経済性が改善することで一人ひとりに余裕が生まれ、いっそう関係性を大事にできる。軌道に乗れば、この両者は好循環を生む。その入り口として『お金に頼るのを半分にするには?』と問うてみるのはいいきっかけになるのだろう。僕らはもう少しお金から自由になれるといい。そのことが友愛の経済社会をつくる基盤となるのだ。」

経済成長に適合するために形づくられた一極集中型の経済・社会システムは、これからは多様で、小さな、しかし文化的にも風土的にも豊かな生態系のような経済・金融・社会システムが徐々に混ざり合ってくると予想しています。

このあたりの話は、影山さんの実際の取り組みも交えながらぜひ深めてみたいテーマです。

3. 自分の時間を生きるために大切なこと

最後に、この本の中心テーマの一つ、「いのち(植物でいえば種)」、それを生かす「土」と「縁」、すなわち「生き方」と「いのちが生きる経営」について話を伺いたいと思っています。

命の有り難さを感じ、授かった命を生涯かけて何のために使うか、という「人生の目的」を明確に持つ人は稀でしょう。私自身、このことに常に悩みます。この本の中には、それを紐解くヒントがたくさん散りばめられています。

その一つが植物から学ぶ「固着性」という考えでしょう。植物は動くことができないからこそ生きる力(知性)が高まります。つまり、あれこれ探し回るのではなく、環境を受け入れることが、能力を開花させる上で大切になると理解しました。

もう一つが「場」と、「場」が持つ「縁」の存在でしょう。そして、よい縁を育む力が「動機の利他性」「つながりへの感謝」「自らの貢献」だと影山さんはいいます。

このあたりの話は、自分自身への問いとして対談の中で迫ってみたいと思います。


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