FRENZ2023に行った話(前編)
今年も行ってきましたFRENZ2023。去年に続き物理的に出られるかどうかかなり迷ったのですが、結果的には今年も出せて良かったし、終わってみれば自分の人生にひとつ読点(2夜まで観てしまえばやはりピリオドにはならんかったなあという気持ち)が打てたと感じる年になりました。
前段
チケットが……チケットが速い……!近所のローソンには10時少し前に入り時間までloppiの周囲を窺う不審者と化しているのですが、まず自分の部に連結する1昼を抑えるとすでに2日目どちらも△……体力の問題から最悪諦めがつく深夜の部を後回しにして先に2夜としましたが、結局なんとか2深夜まで抑えられたのは幸いでした。FRENZチケット購入RTA、来年は果たしてどこまで加速するのか。いつか「FRENZチケット抑えるためにローソンのオーナーになりました」という参加者が現れるのではないか。いや現れない。
しかし毎度不思議なのは、皆さんどこでFRENZを見つけてくるんでしょうね……?あなたのFRENZはどこから?私はアニメーション研究会連合から!(もう無え)
ここから作品感想タイム。当時のツイート(ポスト)をさかのぼりながら書いていますが、部分けなど間違っていましたら申し訳ございません。
1日目昼の部
出がけに準備運動のポップンと天一をキメて(恒例)会場入り。FRENZのタイミングは前後の昼飯も含め一年で一番食生活がヤバくなり胃腸に深刻なダメージを与えることで知られている。注意事項動画は今年はoloさん作ではなくクリエイティブスタッフ制作とのことでまさかのbiimシステム。黒井さんそうだスタッフになったんやなあという不思議な感慨。
マエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエマエ
◆オープニング/84yenさん
開幕エフェクトから鮮やかなセルアニメで入り、これはついにあの人か、いやマント仮面のタッチに見覚えがない、出展者アイコンキャラ化ヤバすぎるだろ、等と、スタイリッシュで蛮な映像にブチ上がりつつ考えながら、結局最後まで担当に気付きませんでした……(パターン破りの二度目担当というのもあった)本当に作風・技術の幅が広過ぎるお方……。アイコンをモチーフに時折過去作のネタを取り入れつつ仕上げられた出展者アバター?は参加者全員自分も欲しいと思ったに違いないでしょう。俺も欲しい。
そして、自分のOPの時出展者一人づつ文字アニメをやったことを思い出して、もっとそれぞれの作品・作風に踏み込んだタッチでやるべきだったかと思ってしまったのは私情の話。
◆第一部
合作あり、イラスト勢あり、プロパガンダあり、と映像格闘地獄FRENZを体現したまさにチュートリアルに相応しい部。
・ISOTOPEさん
ビジュアルはピアノを基調にしつつ、そこにゴリゴリのサウンドが重なってくるギャップに脳を揺さぶられる映像作品。開幕からこの会場で浴びるのにピッタリの作品でした。個人的にはピアノと狭い廊下を進む焦燥感のような印象から「蜜蜂と遠雷」を連想するなどした。
・madaraさん
今年勢いの凄まじかったイラスト勢最初の刺客。カラフルで可愛らしくも落ち着きも感じるイラストの色使いが良質なポスターのようでとても好きでした。人物以外の背景やエフェクトなど、絵を描く人ならではの空気の演出・統一感もすごかった。空と雲の心情世界の色合い良い。
・手提鞄 あたッしュ。さん
パワポは映像制作ツールだった……ってコト!?タイトル通りの怪作。開幕早々からこのイベントの深淵をあらためて垣間見た気持ちになりました。
聞き慣れぬ 地名覚えて いと悲し
・ペンギン映像ラジオwithひがしやしきさん
昨年の映像作家へのラブコールが印象的だったペンラジさん、今年も爽やかな青さを感じられた作品でした。この作品コンセプトに合わさると、深夜(新宿では全然深夜ではない)撮影がめっちゃ人に見られて恥ずかしかったというエピソードまでひっくるめて一個の作品のように感じる。
・bottaさん
FRENZチュートリアルの締めにふさわしい、もっっっの凄く良質でやさしく楽しい、老若男女誰もが「ああ良い」って感じるであろう手描きアニメーション。初参加の時に見てたら確実に脳みそを焼かれ自分にとっての偶像になっていたと思う一本でした。ていうか今でも普通になってる。かくありたい。
◆第二部
今年最大(主観)の問題フレーズ「CREATOR KOWAI」の誕生。
・ワタナベナスカさん
今年最大の問題作。何がCREATOR KOWAIだこんなもん作って出した時点で同類だぞ。流れた瞬間今年のテーマが「CREATOR KOWAI」になった(自分の中で)。実際この後全部勢ガンガン出てくるし……曲のキャッチーさ以外にも、「っぽい」が大好きな自分には映像も刺さりました。それ俺がやりたかったやつ!上映後の地生さんの実践的アドバイスも印象的でした。
・けーぜさん
流石のモノクロ世界の名手。全体として重苦しい世界観ながらもどこかゆるいタッチの女の子ややわらかな光表現からは優しみ・親しみも感じる、落ち着いたBGMも合わさって没入感の高い一本でした。
・イノチヅナさん
青春感ある透き通った色使いがオシャレでした。いわゆる厨二病的妄想を歌詞の題材にしつつ、その妄想が形として表に出てくることはなくただただ歌詞の中でのみ展開され、内面世界っぽい世界観の中で不穏さ・焦燥感が演出されるのもまたらしくて良い。
・Watashiさん
一目見てあっ劇場版だ!ってなる雰囲気(?)の、少女2人のひと夏の思い出を演出した一本。真夏の日常の風情がとてもよく伝わってきました。こういう眩しい日差しと暑くも爽やかな空気、年齢がどうとかとは別の次元でノスタルジーの対象なのかもしれない(現代は夏の暑さと日差しは完全に殺意なので)。
・MATSUMOさん
短編ストーリーアニメの鬼才。短い尺の中できちんとオチていいもん見たなーって気にさせる話作り、見ていてストレスなくスッとお話が入ってくるコンテは毎度お見事。かくありたい。とっくに種明かしパートに入っているのにブリッジ姿勢を崩さない先生でダメだった。
・Cubeさん
しっとりとした入りで静かな環境ムービーと思いきや、合間合間にドギツイトリップ映像が入ってきて振り幅がえぐい……音も相まって無秩序ながら美しいタイトルにふさわしい一本というか、この会場ならではの映像体験でした。
・方野冥利さん
出たぞ、逆に何ができないの族だ!歌も作れるということは映像全てを支配できるので最強。止まっている画も動いているのは強さがあり過ぎる。具体的に描かなくてもストーリー・情念は伝わってくるキャラクター演技・演出も見事でした。
◆第三部
毎年のことだが、ついさっきまでそこで天一食ってたのにもう夜なんですか!?ってなる。音速が速い。
・八重幸さん
作者自身の日記を題材に使った私小説風映像作品。生活圏と思われる映像の選び方、その編集の仕方、音の緩急一つ一つから作者の心象風景をダイレクトに感じられるという、不思議な映像体験でした。それはそれとしてベイブレード談義は作品や心情に対してギャップがあり過ぎる。
・小箱さん
冒頭「おっ今回は珍しくシリアスか?」と思ったところ、男の子のキレがあり過ぎる返し一言で完全に空気が定まってしまった……間のコントロールが見事過ぎる会話劇。アクションやセリフの端々で2人の和気藹々とした関係もきちんと演出してくる、キレの良さとゆるさの両立が気持ちいい。
・諸々+むらた+吟さん
ケモノキャラで描かれるポップな社会人は無理ムービー。無理描写が妙に生々しく、その分ラストのカタルシスが患部によく効きました。時系列をまたいでアイテムをドラッグし歯車を巻き替えていくのはゲームっぽくて面白いと思ったら、ガッツリゲームアイデアが出発点だったという。ゲーム系映像作家の流れきてるな……。
・一般的な掃除機のテクノロジーさん
今年最大の問題作(二本目)。歴史ネタ、まして幕末大好きなのでマジで泣くほど笑った。これからNHKとかで古い手紙の現代語訳が出るたびに「は?」ってルビが見える呪いにかかってしまった。木戸孝允は木戸孝允なのに西郷隆盛だけゆっくり西郷なのも酷すぎて好き。どうか今回はちゃんと公開して集団幻覚じゃないようにしてほしい。
・覇王樹さん
レトロフューチャーを題材にした、丸っこい3Dのタッチにどこか教育テレビ的ノスタルジーも感じるかわいくもスマートな一本。カメラワークとライト芸(と自分で勝手に呼んでいる。FRENZお嬢様OPのラストが好きすぎて)のリズム感がとても心地良い。どこか生の手触りが感じられる、幅広い層を受け入れてくれるようなモデリングも芸風ですね。ほんとすき。
・Suyaさん
一昼大トリは、まさに!CREATOR KOWAIを体現する音楽+手描きアニメ両方やる勢。淡い色使いともちっとしたかわいいキャラにポストアポカリプス的なスケールの大きく頽廃的な世界観、この世で最も美味しい組み合わせの一つとされている。このキャラクターでもっといろんな世界を旅するのを見てみたいと思わされる一品でした。
一日目夜の部
流れるままに夜の部。自分が出展する部のこの感じはいいよな。なんかこう、血が冷たくなるっていうかさ……(よくない)一昼は物珍しさでチルアウトをキメたので、ここでレッドブルを投入。まあ縁起物として。
◆オープニング/(実在しない)切り抜きチャンネルさん
出た瞬間、その手があったか〜〜〜ッ!!ってなったし、ていうかそれしかないだろ!!ともなった、神の配剤。物凄い変化球で豪速球。存在しないクリエイター仲間Vたちの記憶が次々と立ち上がってくるのは流石のドラマづくり。参加し続けている人、新たに参加する人の他にも、参加しなくなった・できなくなった人への視点があるのも優しい。本当にいろんな事情があるのでなかなか語りづらい話であるだけに、こういう形で共有されたのは救いだと思いました。
そして出展者紹介パート、(実在しない)実存在に名前を呼ばれるのは良いものですね……自分のところで「覚悟して見る」と言われたのは何が見えたんだろうと気になったところ。事実、俺も第三部で覚悟する羽目になったのが面白い。
◆第一部
出展者の戦いはここから始まっている。
・コジエズさん
ウン年前、興味本位で声をかけたWAFLの刺客がまさかここまで続いてしかも回のトップバッターを張るまでになるとは、と感慨深いものがありますね(私情)。ワンカットにいろんなホビーが詰まった楽しいMV。最後の視点転換にもやられる。彼の描く女の子は、FRENZ作品の中でもとりわけ自分の足だけで立ってる、って感じがしてとても良い。
・traPさん
セルアニメと3Dルックの混じり合った大学サークル制作。待ち合わせを物語軸にしているところや街の広告をイメージしたような不思議世界を旅する様子にシティの風(?)を感じるスマートな作品でした。
・Flower Alazan Arrangementさん
鴫野エイカーさん擁する合作チーム。以前、ご本人が自主制作から距離を置くことをお話ししていたので、またこの場で作品を見られて嬉しかったです。カワイイを表現することに特化した世界観は潔くて刺さりが良い。好きで押すは自主制作の醍醐味。
・うみおとさん
名は体を表すというか、歌詞(というのか何というのか)と音と演出の統一感がものすごく気持ちいい一本。ひとつのコンセプトを多彩に表現し続ける手数の多さに圧倒されました。全てがあるべきようにハマっているパズル的な美しさはかくありたい。シャープな画作りもとてもオシャレ。
・カミヤミライさん
太めの線でデフォルメされたキャラクターが動き回って描くすこしふしぎドラマ。一本の動く絵本を見たような感覚。サメとタコをモチーフにしてあのキャラクターになるデザインセンスは唯一無二と感じます。カクテルの製造過程を一本のストーリーにするコンセプトも面白い。
◆第二部
「自分の出展終わったらメシ食い行こう」と思っている段階。しかし判断が遅かった。
・wayuさん
CREATOR KOWAI勢の登場だ!歌も動画も全部やるボイロMV。イラスト・アニメ・MGなどさまざまな技法を織り交ぜて描かれる世界はまさに逆に何ができないの状態。結局珍獣、どこにいたんだろう……そしてこの後まさかの展開が続いて会場は大いに盛り上がるのだった。
・keitomoさん
そんなことある??って感じのライバル同士の直接対決。ここまで明言してしかも実現するのはなかなかないのではなかろうか……。自殺を題材にしたモノクロ調の手描きアニメ。モチーフを繰り返しながらだんだん画面を埋め尽くしていく様が痛ましい。今年は2日目まで通して、死を扱った作品が多かった気がする年でした。
・しろくまっしゅさん
会場はですやんの炎に包まれた……今年は深夜の部じゃないのかと思ったら、最近(割と前からかも)のゲームのあるあるについてだらだら言い合う平和?なお話でした。ちょいちょいシロクマとですやんが怪しい動きを見せるの本当にずるい。
・カソウさん
うってかわって儚くも美しい、冬虫夏草を題材にした映像作品。アナログで描いたようにも感じられる胞子の淡い光が幻想的でとても良かったです。全体的に美しい空気の中で人の手がにゅるにゅる蠢くところが印象的で、AIで出力したみたいな不気味さもありつつキノコ(冬虫夏草)のイメージも想起させる。
・GAさん
意外と今年はこれが初?のミクさんを題材にした映像作品。細かなカット割りとシャープなモノクロの画作りがスマートに切り込んでくる。ラストのエッチングのような不思議なデザインも美しい。
・tama-style × RINAさん
親子合作動画。これまでのように出演までかと思いきや娘さんがアニメーションを担当してらっしゃって末恐ろしい限り。撮り方の綺麗さもさることながら、俳句のようにも感じる細かくリズミカルな心情描写も素敵。観る文学。
◆第三部
出前さんから同行する花京院の画像が送られてきて笑った。三部繋がりかと思ったら意識してなかった模様で二重に笑った。メシは結局ありつけず。米切れっていつ以来だろう。
・むらたむうたさん
これまでの作風をイメージしていたらバリバリのセルアニメ作品でうれしい驚き。背景・エフェクトまで一貫したセルルックは大好物です。バトルシーンがあるのもとても良い。バトル描きたくなってきました。ピンクの方の子のオフェンス系じと目(?)、ヘキです。
・oloさん
まさかのアメリカからの参戦。#FRENZ_USA……ってコト!?やたら懐かしい顔ぶれだなーと思ったら、なんと制作期間10年の超大作(10年前に撮ったものの蔵出しとも言う)。喧嘩を軽々に売ってはいけないという、安定の教育的一本でした。
・specterさん
正体不明と思いきや「WORLD」でご一緒したお二方の合作名義(お二人とも目の前に座っていた)。手法が全く違うにもかかわらず1人の手でコントロールされているかのような調和のとれた美しい映像。それでいてお二人の個性もバッチリ出ているから凄い。合作かくあるべしという、きれいな作品でした。
・FTDさん
前作の異次元表現には度肝を抜かれ激しい敗北感を覚えましたが、今回も現実世界を素材としながらまるで異質な世界を描く、脳を揺さぶられるタイプの作品でした。映像編集をテーマにした、いじくりまわした現実世界をさらに一つ上の視点から弄る手つきも面白い。とにかく「興味深い」タイプのおもしろさ。
(このあたりで残りメンツを見てさすがに覚悟を決め始める)
・出前さん
タイトルの時点でだいたいみんな察してた……自分をバラすのは性癖で言うと何になるんでしょうかね……扱っている題材は表現によってはめちゃめちゃ人を選ぶのにポップな画づくりとノリノリの演出で楽しく見せてしまうのは流石の一言。今年の作品はアニメ表現が目立っているのもあり、さらにキャラクター的なおもしろさがマシマシな一本でした。
・misokabochaさん
頭の中を見せられた作品のはずなのに頭の中どーなってるの???ってなった恐ろしい映像。ひとつひとつのレイヤーをとっても気持ちい平面MGなのにそれが7層重なって1つの作品を作り出している……パズルを見ているような感覚。まだ上映会場で一度見ただけですが、これまでの作品同様何度でも見てみたくなりそうな作品でした。
・ワイ
ついに来てしまったか~~~という気持ち……上映作品については↑をお読みください。あとの私情は2日目のレポの後で書くかも……どうかな……。
一日目を終えて
ああついにか……という達成感とも寂寥感ともつかない気持ちで一日目を終え、そういえばメシ食えてなかったんだったと思い打ち上げ組に混ざって地鶏とビールを頼み、さらに帰りにコンビニで麻婆豆腐丼を買ってしまう。池袋の宿はふとんがちょっと湿っぽかった。
一日目は昼夜どちらもセルアニメーション系作品で〆というのもあり、今年は特に手描き勢の元気が良かったように感じました。その時々でやはり流行の手法・作風はあるように思いますが、最近はハッシュタグindie_animeだったりイラストMVの盛り上がりが反映されているのかなあと思ったり思わなかったり(先週インディーアニメXに行ったことでの思いつき)。手描き勢のともだちが たくさんほしいんです。どうぞよろしく。来年もがんばろうな!
後半へつづく。つづかないかも。