邦楽ロック好きが読んでにやける「告白撃」
住野よるさんの最新作「告白撃」を日本のロック(邦楽ロック)好きが読んだら、フラッドの歌詞が取り上げられているのを始め、思わずにやりとするシーンが散りばめられていた。嬉しくなったのでいくつか紹介したい。
真面目な感想は別のnoteに書いた。
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登場人物である千鶴と響貴が、旅行プランを計画・発表しあう遊びに興じるシーンがある。
そのシーンで千鶴が紹介したプランが、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「サーフ ブンガク カマクラ」をモチーフにしていて、あまりの懐かしさにひっくり返った。検索してみたら、2023年に完全版のEPが発売されていてなお驚いた。
住野よるさんが「告白撃」は2024年の話だと言っていたので、もしかすると彼らは完全版を聴いているかもしれない。
一方の響貴のプランでは、千鶴の地元・ナポリタンが名物・宿泊しても翌朝ギリギリ出社できる、という三拍子らしい。これは名古屋だろうか。読み返したが千鶴の地元は分からず。
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作中には、千鶴が革ジャンを着ているエピソードが散りばめられている。
実際に着ていることもあるし、他の友人から「今日は革ジャンじゃない!」と意外そうなリアクションをされることもある。「魂に(革ジャンを)着ている」と返す千鶴が毎回微笑ましい。
千鶴が歴代の夢を話す場面では、大学時代の夢だった「佐々木亮介になりたい」に思わず笑ったし、引越し前の荷物がほとんどない部屋で、革ジャンとギターだけある状態が「バンドマンみたい」と言われていたのもじわじわくる。a flood of circleのボーカル・佐々木亮介さんはいつも革ジャン。
そういった具体的なエピソードから、千鶴たちが「現実を生きている」手触りを得られる。フィクションが現実に侵食してくる感覚。
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「告白撃」を知るきっかけとなったロックバンド・a flood of circle(以降フラッド)は、2009年頃の最初期に少しだけ聴いていた。泥水のメロディーやシーガルの辺り。シーガルは今も好きな曲だ。
これまでライブに参加したことはなかったが、もともと好きなバンド(9mm Parabellum Bullet)との対バンが決まり、行くならちゃんと楽しみたいからフラッドを聴こう!と過去のアルバムを聞き始めたらまあエグいくらいカッコいい。
カッコいいなあ〜〜と思いながらX(Twitter)で佐々木さんのポストを眺めていたところ、「告白撃」に出会って今に至る。
好きなロックバンドを辿っていったら、好きな小説に辿り着いた。興味の数珠つなぎほど楽しいものはない。
フラッドは、最新EPのリードトラック「キャンドルソング」と、2023年リリースのフルアルバムに収録されている「月夜の道を俺が往く」が痺れる。
最近だと「ふつうの軽音部」でも主人公・鳩野がフラッドの曲を歌っていた。いいぞ。
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住野よるさんと佐々木亮介さんの刊行記念対談も赤裸々でよい。どきっとする箇所がいくつもある。
住野さんも佐々木さんもだいぶ酒飲みで、「告白撃」の登場人物たちもよく酒を飲んでいた。登場人物たち(特に千鶴)がどんな心情で飲酒していくのか、酔っているときの内面の描写のリアルさに苦笑する。
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いよいよ今週末がフラッドのライブ。楽しみだ。
「もしかしたら千鶴が来ているかもしれないな」と想像を膨らませながら、当日はライブハウスに向かうことにしよう。