アニメ版『推しの子』2期第6話(通算第17話)
「だって君も好きでしょ、がむしゃらに努力する子」
アニメ版『推しの子』2期第6話(通算第17話)を観ました。
あまりにも良かったので思いの丈を残しておきます。
■第一幕と第二幕の使い分けの上手さ
第一幕、アニメとして観ているはずなのに、本当に舞台を観ているような感覚になった。
そして、第二幕からはアクアのモノローグが入り、徐々に役者さんたちの心情描写に移って行ったのが上手い。
実は原作とアニメ版では第一幕と第二幕の描写の仕方が違う(特に第一幕。読み返して気付いた)。
第一幕にあたる部分では原作だと、東京ブレイドに関する読者への説明を織り交ぜつつ、ブレイドやつるぎたちの戦闘や会話のシーンは数コマで短く終わる。
それがアニメ版では第一幕の戦闘や会話のシーンの描写を増やし、その分作品に関する説明は省いた形になっている。また、観客席からの視点を映したりシアターのスクリーンの映像を多めに描写したりなど、より舞台を観ている感覚になるよう演出している。
この間、視聴者はアニメ『推しの子』を観ているのではなく、舞台『東京ブレイド』を観ているのだ。
そして次の第二幕からアクアのモノローグが入り、視聴者はアニメ『推しの子』の世界に戻る。
素人の私が言うのもおこがましいが、上手い。プロって凄い。
アニメ版ならではの描写をしている。
もちろん、原作とアニメ版どちらが良いという話ではない。
本当に舞台を観ているかのような描写は映像作品であるアニメだからこそ出来る。それをアニメ版を制作するにあたってやっているのが凄い。
■開花するメルト
そして、やっぱり1番の見どころはメルトの影の努力が本番で開花したところだった。凄い成長ぶりだった。
『今日あま』の時の自身の演技を観返して、悔しさとも後悔ともとれる感情を抱いたメルトが『東京ブレイド』の舞台では過去の自分を入れ替えるかのように演技と向き合い努力する。
その努力が匁(もんめ/鴨志田 朔夜)との対決のシーンで開花する。
メルトは直前まで観客から「演技が下手」という印象を持たれていた。
その流れからあの難易度の高い技のシーン。たくさんの練習を積まないと出来ない。
そうとう努力したことが観客にも視聴者にも、そしてアビ子先生や吉祥寺先生にも伝わる。
真剣なメルトの表情。
アニメ版ではメルトが開花したことを意味する描写なのか、一度挫折したメルトがうねるような光の中で、宝石のような、星のようなものを掴みに行く抽象画のようなシーンが描かれる(プロって凄い)。
そして手を握り締め、絞り出した血の中から生まれる新たなメルト。
メルトが1分間のシーンを全力で駆け抜けた瞬間だった。
(その後の有馬かなと姫川さんの「よくやったわ、後は私たちに任せなさい!」の台詞もメルト自身を称えるかのようで良かった)
演技が全然出来てなかったメルトの努力が、あの1分間のシーンでようやく開花した。
「今日あま」の時から彼は大きな成長を遂げたのだ。
今日あまの彼を知ってる吉祥寺先生の涙がその事を物語っている。
以上。