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毎日超短話852「信号待ち」

信号待ちの横断歩道で、向こうからこちらに手を振る人がいる。これは俺に向けたやつかと思って手を挙げかけたけれど、違ったらものすごく恥ずかしいやつ。あいにくすぐに家に帰る予定で、メガネをかけてこなかった。あちらの顔がはっきり認識できない。しかし、あちらは相変わらず手を振り続けている。こちらで振り返している人はいない。やっぱり俺か。信号が青になった。手を振っていた人は、歩き出さないで背中を向けた。その背中に「Yesterday」と書いてあった。ああ、そうか。昨日に手を振るのを忘れていたな。俺はしっかり昨日に手を振ると、今日に向かって歩き出した。


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