グリム童話ATM #毎週ショートショートnote
「本当は怖いグリム童話、だよ」
鞄からハミ出した本が何かと、そのキャバクラ嬢に聞かれて私がそう答えると、彼女は嬉しそうに、「あたしも読んだことある!」と喜ぶものだから、ついつい話が弾んで飲みすぎてしまった。
その顛末が、いま、ものすごく怖いお兄さんに腕を引かれてのATMの前、である。
「えっと、おいくらでしたっけ?」
私が聞くと、ものすごく怖いお兄さんは「100グリム童話だ」と言う。100のグリム童話を下ろせ、と腕を強く掴む。あいにく、50くらいしか残高がない。
「アンデルセンとイソップはないのか」
と、ものすごく怖いお兄さんが言う。
「エリック・カールとレオ・レオニならあります!」
「まあ、それでもいい、早くしろ」
私がATMからグリム童話とエリック・カールとレオ・レオニを引き出すと、ものすごく怖いお兄さんは、満面の笑みを浮かべて、「話のわかるやつだな」と私の腕を離した。
そんな話をATMに預金すると、ATMは不敵に笑った。グリム童話は本当に恐ろしい。
今週も参加させていただきました。
なんだかごちゃごちゃしちゃうのは、無茶ぶりお題のせいです!笑
「本当は恐ろしいグリム童話」が実在する本ですが、フィクションなので、ちょっと変えました。
自分でも予想外な展開になっていくのが、いつも楽しっす! ありがとうございます!