毎日超短話797「愛」
カニ、食べる? と兄に言われて、何も考えず、うん、と答えたところまではよかったのだけど。まさかまだ生きてるカニが送られてくるとは。大きい鍋に水を張って、火をかける。グツグツと沸騰したところだ。ハサミが輪ゴムで止められているカニと目が合う。泡を吹きながら、ひとおもいにやってくれ、と聞こえた気がする。わたしは、震えながらカニを持ち、思わず、ごめんなさいっ! と言いながら鍋の中にカニを放り込んだ。カニはみるみる赤くなっていき、最期の瞬間に笑った。ぼろぼろと泣きながら、茹で上がったカニを食べる。
ありがとう、おいしい……
カニは、わたしの中で、ゆっくり頷いた。
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