毎日超短話862「かぼちゃタクシー」
24時を回ってしまって、乗っていたタクシーがかぼちゃになった。運転手さんは定時だからと帰ってしまって、わたしはポツンと残された。かぼちゃは気まぐれなので、本当にゆっくりとしか進まない。となり、いいですか? と、若い女性が声をかけてくる。どうぞと席を空けると、女性はとなりに乗り込んだ。大きくなったね、と彼女は言う。え? と声を出すと、目の前に映画が流れ始めた。音のないその映画に彼女が映っている。彼女はわたしを産んだ。そのシーンで映画は終わった。いつの間にか朝になっていて、かぼちゃはタクシーに戻っている。隣に彼女はいない。運転手が帰ってきた。降ります。とわたしは言った。空は明るい。まだ生きようと思っている。
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