ヘルプ商店街 #毎週ショートショートnote
仕事を失い、家族も失った男がヨロヨロと歩いている。猫が死に場所を探すのってこういう感じか、と男は思う。
生きる気力はないが、それでも喉は乾く。自販機を探すが見当たらないので、男は商店街のコンビニに立ち寄った。
そのコンビニは無人のコンビニであった。この手のものが増えてきたなと思いながら、水を買う。無人レジにバーコードをかざすと、レジが「次のお客様に対応してください」と言う。どうやらそうしないと出れないらしい。男は後からきた女性に接客をしてから、店を出た。
お腹も空いたので、ファミレスに入る。そこでは調理をやらされた。幸い、男は調理師経験があったので、なんなくハンバーグを作り上げた。
本屋に寄ると、おすすめ本のPOPを書かされ、魚屋で魚を捌かされ、カフェでコーヒーを淹れることになり、美容室でシャンプー係を任された。
男はそれらをただこなした。そしてすべての店で「ありがとう」と言われた。商店街を後にするとき、男はつぶやいた。
「こちらこそ、ありがとう」
男は泣いていた。
たらはかにさんの企画に参加させて頂きました。
無人店舗が増えていますが、ありがとうっていう気持ちは持っていたいですね。