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「カッコいい」からルワンダで起業した。チョコボールを売ってた営業が若者に贈る、やりたいことの見つけ方

SNSの普及により、多くの情報にアクセスできるようになった今日。

人生をかけてやりたいことに挑戦している人たちを見て、「やりたいことがわからない」「何者かにならなければ」と漠然とした不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

今回インタビューしたのは、25歳で日本を飛び出して青年海外協力隊に挑戦したのち、ルワンダで起業をしたタケダノリヒロさん。

今では「アフリカ×国際支援」という分野で活躍するタケダさんですが、一体どのような経緯で「人生をかけて取り組みたいテーマ」を見つけたのか。

すべては「カッコいい人になりたい」という純粋な気持ちから始まったそうです。

アフリカノオトより引用

タケダノリヒロ
1989年、熊本県生まれ。早稲田大学国際教養学部卒業後、大手食品メーカーで3年間営業を担当。退職後は、青年海外協力隊としてアフリカのルワンダでコミュニティ開発(衛生啓発活動)に従事。その後、ルワンダの情報発信サイト「アフリカノオト」を運営する傍ら、同国でスタディツアーや情報発信をおこなう会社『Africa Note Ltd.』を立ち上げる。現在はNGOデスクコーディネーターとして、JICAルワンダ事務所でも勤務中。
X:https://twitter.com/NoReHero
アフリカノオト:https://rwandanote.com/
個人ブログ:https://xn--rck1ae0dua7lwa.com/

森永製菓から青年海外協力隊へ。安定を捨てた先にあったもの

森永製菓時代のタケダさん。

——現在はルワンダで起業をされているタケダさんですが、大学を卒業後は森永製菓株式会社に3年間勤められていたそうですね。

タケダさん:
はい、森永製菓で営業担当をしていました。森永製菓が展開している、チョコを1枚買うごとに、カカオ生産地域の子どもたちに1円が寄付される「1チョコ for 1スマイルキャンペーン」に共感して入社したんです。

当時の僕は、社会貢献できることを就活の軸にしており、それを森永製菓で実現できると考えていました。

——社会貢献に興味があったんですね。その背景にはどんな想いがあったんですか?

タケダさん:
お恥ずかしいんですが…単純に、カッコよかったからです

当時の自分が憧れる人のイメージは社会起業家で、自分も同じようになりたかった。「社会のために」なんていうと、なんだか高尚な感じがしますが、当初はそこまで大きなことは考えていなかったです(笑)。

だから、正直最初は青年海外協力隊にもまったく興味がなくて…。森永製菓の同僚に何気なく「社会貢献に興味がある」という話をしたときに、協力隊を勧められたのですが、話半分で聞いていました。

———意外です。そこからなぜ挑戦しようと?

タケダさん:
僕の友人が脳梗塞で倒れてしまったんです。

それを受けて、「若くたって、人生何があるかわからない。それならばいつかおそらくできることではなく、いま確実にできることをやろう」と決意が固まりました。たしかに、森永製菓にも海外事業部や社会貢献事業部はあります。でも、当時すでに入社から3年が経過しているなかで、いつそこで働くことが実現するのかは不透明でした。だからこそ、今できることに挑戦するほうが確実だと思い、行動に移しました。

自分が「本当にやりたいこと」がわかっているのに、動かないことのほうが怖い、そう思ったんです。

無力感のなかで見つけた「自分だからこそできること」

協力隊時代のタケダさん。

——実際に協力隊に挑戦してみてどうでしたか?

タケダさん:
任期が始まってから、半年から1年ほどは無力感を感じていました。…というのも、自分にできることがほとんどなかったからです。

僕は手洗いうがいなどを啓発する「水衛生」という分野でルワンダに派遣されたのですが、具体的に何をするかは決まっていない状態でした。

村の人から「水道を修理して」と便利屋のようにお願いされることもありましたが、森永製菓でチョコボールを売っていただけの人間に、直せるわけがないし…(笑)。

しかも、英語も通じなかったので、コミュニケーションはカタコトのルワンダ語。本当に無力さを感じましたね。

——大変な日々だったんですね。

それに、「苦しんでいる人を救いたい」と思って現地に行ったはずなのに、ルワンダの人々は思った以上に幸せに生きていました。

普通に暮らしているし、日本人よりも笑顔が多いように見えた。そのなかで、経験も知識もない自分が何をすればいいのかわからない日々が続きました。

——そのようにうまくいかないことも多かった協力隊を経て、なぜルワンダで起業をすると決めたのでしょうか?

タケダさん:
実は協力隊に行く前から起業すると決めていたんです。協力隊に行ったのも“起業のタネ”を見つけたいという想いもありました。

「社会的な事業で起業したい」と漠然と思っていたものの、具体的に何をしたいのかはわからない。「協力隊に行けば、その“何か”が見つかるかもしれない」と思い、ずっと起業のタネを探していました。

——当初から起業すると決意されていたのですね。

タケダさん:
はい。協力隊として過ごすなかで見えてきたのは「自分だからこそできることを仕事にしたい」という想いでした。

ルワンダでは、『セーブ・ザ・チルドレン』や『UNICEF』などの国際支援系の団体が活動しています。専門家がたくさんいるなかで、自分にしかできないことなんてない…と無力感に襲われていたのですが、反対に自分だからこそできることもたくさんあると気づいたのです。

——自分だからこそできること…?

タケダさん:
僕の場合は「ルワンダからの情報発信」でした。
当時、僕はルワンダでの経験や価値観をブログで発信していたのですが、これには大きな反響がありました。

「村に遊びに来ませんか」というブログがきっかけで、日本から大学生が遊びに来てくれたうえに、近所の農家さんが宿泊させてくれたことがありました。協力隊の任期中は利益を得てはいけないので、自分はお金をもらわずに、100%ホストファミリーにお金がいく仕組みにするとすごく喜んでくれて。

自分が仲介をすることで、ここにしかない価値が生まれている。この経験が、ホームステイのプログラムや、今のスタディツアー事業にもつながりました。
ルワンダからのリアルな情報発信は、協力隊として現地にいる自分にしかできないことだったんです。

自分の軸を見つけられたのは、わからないなりに「発信」していたから

       豊かな自然の中に近代的な建物も並ぶルワンダ          

——「ルワンダからの情報発信」という「自分にしかできないこと」を見つけたタケダさんですが、この軸を見つけることができたのはなぜですか?

タケダさん:
禅問答のようですが、やっぱり「発信をしていた」からです

僕は、やりたいことに向かって突き進むために会社を辞めたので、また会社組織に戻ろうという気はありませんでした。だからこそ、「タケダノリヒロ」という自分の名前で勝負出来るようになるために、発信を通じて「個の力」をつけたかったんです。

当時はアクセス数を稼ぐことに躍起になっていました。その観点でいくと、ルワンダよりもワイドショーで流行していることを書けばアクセス数を稼げる。実際に、当時話題になっていたSNS「Mastodon」を取り上げたことで、フォロワーが伸びたこともありました。

——ルワンダ以外のことを発信していたんですね。意外です。

タケダさん:
そうなんです。でもそんなときに、知り合いのブロガーにこんなことを言われました。

「たしかに、ルワンダの記事はすぐにはアクセス数は伸びないかもしれない。でも、数年後には絶対に貴重な情報として残るから、タケダ君だからこそ書けることに注力した方がいいよ」と。

ハッとしました。ルワンダについて書くことは、すぐに結果が出なくても、ルワンダに興味がある人にとってはとても価値があるものになる。

「本当に必要だと思ってくれる人のために情報発信がしたい」と強く思い、ルワンダに特化したブログ「ルワンダノオト」を作りました。

自分にしかできない発信をすると振り切ったおかげで、「ルワンダといえばタケダ」と認知していただき、現在の事業の中心であるスタディツアー事業にも繋がりました。

ルワンダの発信を続け、すでに協力隊時代に20組ほどを受け入れていたので、起業もスムーズにできましたね。

「カッコいい」「やってみたい」から始めていい

現地ツアー参加者は約200名に

——タケダさんが今の活動にたどり着いたのは、地道に情報発信を続けてきたからこそなのですね。起業当時から行っているスタディツアー事業にはどのような思い入れがありますか?

タケダさん:
お客様の可能性が広がる瞬間に立ち会えることにやりがいを感じています。

スタディツアーでは、農村でのホームステイや学校・国際協力機関への訪問など、さまざまな視点からルワンダを学べる内容になっています。

実は今年(2023年)の夏にも、日本から高校生が2人来てくれたんですよ。彼らと一緒にJICAやNGOへ視察に行ったのですが、2人とも「カッコよかった」「鳥肌が立つほど感動した」と言ってくれました。実際に自分で体験した感動は、これから先もずっと彼らの心に残るはずです。
日本でのしがらみを離れて、ルワンダという異国の地に来たからこそ、核に触れるような体験ができる。自分だからこそできる仕事を通して、感動を作れていることが1番嬉しいです。

——タケダさんが信念を持って事業に取り組まれていることが伝わってきます。最後に、「自分のやりたいことがわからない」と悩む若者にアドバイスをお願いします。

タケダさん:
まずは、焦らないことです。

SNSを見ていると「自分も何者かにならなければならない」と思ってしまいますが、決してそうではありません。焦れば焦るほど、自分の得意なことも、自分がやりたいこともわからなくなってしまいます。

力を抜いて、興味があることを気軽に試してみましょう。僕の場合は、大学のときにたまたま読んだ本がきっかけで、「この人たちカッコいい!」とソーシャルビジネスに興味を持つようになりました。

「やりがい」や「誰かのためになること」なんて最初から大きなことを考えるのではなく、今の自分が「カッコいい」「やってみたい」と素直に思えることを試すなかで、結果的に人生の軸が見つかると僕は思います。

優しく、穏やかに取材を受けてくれたタケダさん。

              〇 〇 〇

今回のインタビューを通して一番印象的だったのが、タケダさんが「カッコいい」という素直な想いで行動されてきたこと。自分の直感を信じ、軽やかに行動したからこそ、自分のやりたいことが明確になったのだと思います。

情報が溢れかえっている現代。便利になった一方で、直感で行動しづらい世の中にもなりました。

だからこそ、自分が素直に「カッコいい」と思えるものに飛びついてみる。頭で考えずに行動した先に、自分がやりたいことが見つかるのかもしれません。

タケダさん初著書『アフリカに7年住んで学んだ50のこと: ルワンダの光と影』発売中!

ルワンダ生活7年、会社経営5年のなかで、タケダさんが得た学びを1冊にまとめた本書。

日本にいながらルワンダのことが身近に感じられる内容です。ぜひ、お手にとってみてください。

〈取材・文=高松勇飛(@yuhi1321)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)〉

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