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コロナで孤立した世界は障害者にとっての日常だった。パンデミックは変革のチャンス

#日経COMEMO #究極のバリアフリーとは

締め切り時間を過ぎての投稿になり誠に申し訳ございませんが、それでも見ていただければ幸いです。

私は発達障害の当事者目線で、ビジネスとダイバーシティについて発信してきました。

私は、発達障害が知られていなかった頃に社会人になり、働くことにおいてこだわりや衝動性の強さが壁になっていました。これまでに応募して落ちた経験は200社以上。就職できたとしても、ある職場では「障害を言い訳に甘えるな」という言葉を歩み寄りをしない方便に使われたり、「うちは健常者の職場だから、障害者用の施設に行った方がいい」と言われたこともありました。

でも、車いす当事者の経験から障害のある候補者の境遇に思いを馳せつつ候補者ありきの職域開拓を行うリクルーターがいるなど、多様な人材を活用しようという企業に巡り会えて感動したこともありました。

それからは「障害者はビジネスに価値をもたらす」ことを信じて、ビジネスSNSで国内や海外の障害者雇用事情をリサーチして発信したりするようになりました。地道な発信が知られ始め、今では、取材を受けたり、企業の障害者就労を考えるイベントに登壇したり、障害者雇用をテーマにした執筆をする機会をいただけるようにもなってきました。

〇環境を整えれば、障害はなくなる、という考え方について、あなたはどう思いますか?コロナによる障害者の暮らしの変化は、社会にどんな変化をもたらすと思いますか?

私がリスペクトし目標とする国際障害者運動のリーダーで社会起業家のキャロライン・ケーシー氏(視覚障害当事者)は、世界経済フォーラムへの寄稿で、「コロナにより孤立した世界は障害者にとっての日常」と語っています。

コロナが来る前から障害者は、働く場所がない、家の外に出られない、など孤立した状況にありました。コロナが去っても障害者は元の職場に戻れることはない、なぜなら元の職場などそもそもなかったのだから。それが障害者をめぐる現実でした。しかしそれを仕方がないとするのではなく、「コロナを機にそれは変わらなければならない」とケーシー氏は訴えています。

パンデミックのさなかには良い変化もありました。これまでなかなか進まなかったリモートワークが一気に進んだこと。これは通勤が難しい身体や精神の障害者にはチャンスです。通勤できないことが障害ではなくなるのですから。リモートワークでチャンスを得る人は多くいます、子育てや介護で家を離れられない人、地方に住む人など。

ケーシー氏は、「孤立の苦しみを誰もが共有した。コロナ後の世界は、孤立を終わらせる世界に作り替えていこう」と呼び掛けています。

ケーシー氏のメッセージは、これからの日本人が働き方のバリアフリーやダイバーシティをどう進めていくべきか、ヒントを与えてくれています。

〇バリアフリーの先、にあるものはなんでしょうか?どんな社会が待ちうけていると思いますか?

障害者が働くうえでの物理的・制度的なバリアをなくしていくことが必要なことは間違いありません。しかし課題はバリアをなくすだけにとどまりません。「はしご」となるシステムも必要です。

障害者は歴史的に様々な社会的圧力を受けてきたことまで考慮に入れるべきです。病気で大学に行かなかった人、ブランクが長い人、スピーディーな環境で働くのが難しい人、コミュニケーションの苦手な人もいます。障害ゆえにひどいいじめやハラスメントを受けた人、何社もクビになり続けた人、二次的な障害のある人もいます。こうした人が健常者と同じスタートラインにいるとは言えません。こうした障害者が、健常者を前提に作られた社会で健常者と同じ条件で競争を勝ち抜いて、就職したり、キャリアアップしていくことは、やはり困難ではないでしょうか。

そこで登場したのが、就労移行支援事業所のような企業と障害者の間に入る存在。この10年あまりで就労移行支援が充実し、障害者雇用はだいぶ変わりました。最近ではこうしたサービスを活用して障害者の定着や職域開拓に成功する企業が増えました。これからの障害者雇用は、企業と就労移行支援事業所との連携にあると考えています。

私もパラレルワークを目指して就労移行支援事業所を利用し、コミュニケーションやグループワーク、プレゼンの訓練をしています。

就労移行支援事業所は、障害者が働きたいと思う企業への「はしご」をかけてくれる存在と考えます。障害者は、正しくはしごをかけてくれる事業所を使って自力では届かない場所に辿り着けるように訓練に励み、企業は登ってくる障害者を助ける。そこでお互いの気持ちが一致すればと思います。

バリアをなくすだけではなく、「はしご」までできれば、平等な社会ができる、と考えます。

〇究極のバリアフリーとは何だと思いますか。

障害のない人もある人も、障害の有無による違いを気にしなくなり、どんな場所でどんな職種で障害者が働いていても、普通に受け入れられる社会、と考えます。

日本では障害者に合った仕事といえば、負担の少ない事務補助や軽作業や清掃といった仕事が考えられがちです。しかし海外の成熟した企業には、既に障害者の専門職や管理職への登用が行われている企業があります。

私が障害者手帳を取って就職活動した時(2017年)にも、障害者に専門職やハイクラスの求人も含めた、健常者と同等の収入や仕事内容の求人への門戸を開いているのは、外資系企業に多い印象を受けました。

海外企業の関係者も「まだまだ課題はある」と述べていますが、こういう世界は日本の私から見ると「究極のバリアフリー」に見えます。

私は、某外資系通信社で先述した車いすのリクルーターにお世話になり目標だったニュース翻訳者の職を得て、人生で最も充実した会社生活を過ごしたことがありました。仕事はとても大変だったのですが、後悔はありません。また他の外資系に勤める当事者の友人で、日本企業では得にくい働きがいや収入や人間関係を得て充実したキャリアを送っている人も何人も知っています。

ただ、ダイバーシティがいつまでも「外資系だけの話」として語られるようでいいのか、とも思っています。それは障害者にとってキャリアアップできる企業の選択肢が狭いことを意味します。

ですが最近日本企業でも、NTTでデータサイエンティストとして新卒入社した車いすの女性が、自然に受け入れられて働いていることを知って、嬉しく思っています。

こうした動きが日本のエスタブリッシュメントにも広がっていけば、と思っています。もっと多くの選択肢を。

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