「要因の特定」なしに、セールスイネーブルメントはできない
ども、nakashimayugoです!
この記事はセールスイネーブルメントにとって「要因の特定」が抜けたら元も子もないという話をします。
要因とは「誰に、何を、どうすれば売れるのか」という営業活動上で押さえておくべきポイントであり、「自社の商品が売れるためには、どんな条件を満たさなければならないのか?」という成果を左右する条件です。
イネーブルメントの取り組みは多様ですがそれらはあくまで「外見(外側、手法)」の話であり「中身」である要因について漠然としていたり間違っていたりすれば人材育成もコンテンツ作成も形骸化するというのが本記事の主旨です。
「セールスイネーブルメント Advent Calender 」の12/14日を担当させていただきます。他の方の投稿もとても勉強になりましたので、ぜひ見てみてください。
●「要因の特定」なしに、セールスイネーブルメントはできない
>セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとはなにか?という定義は、中谷さんの記事をはじめ他の人も述べている通り割とふわっとしています。書籍やWeb記事を見てみても手法・取り組みを指すものから方針まで様々です。その上で以下のようなキーワードがよく語られているように思います。
継続的な:成果を出し続ける、根本的な、仕組みの
成果のための:成果からの逆算した、計測、エンゲージ、数値測定
一連の、全社的な:トータルの設計、部署横断、データによる情報共有、一連の取り組み、情報連携、分業化と連携
取り組み:人材育成、デジタル化、体制構築、パイプラインの構築、型化、コンテンツ、ガイダンス、研修
この記事は「セールスイネーブルメントとは?」という定義について焦点を当てるものではありませんので、広義に「継続的に成果を出すための一連の取り組みの総称」だと捉えます。
>セールスイネーブルメントの重要な観点
セールスイネーブルメントでは様々な取り組みが語られます。人材育成、体制構築、それらの中での情報連携、そのための仕組み化・型化、個別の業務改善などです。これを下の図に示してみました。
これは何か言っていそうで何も言っていない図で、"何をイネーブルメントしたいんだっけ?”という部分が抜け落ちていないかという提起が本書の主旨です。セールスイネーブルメントメントを行うにあたり、これらの取り組みに注目するのではなく、下図のように中身を明確にしてから、中身を上手く活かすための取り組みとして捉えないとコケるのではないか、ということです。
この中身とは「〇〇なら売れる、〇〇でないなら売れない」という成果を左右する条件です。例えば自社のターゲットの条件、商談時に必ず握らなければならないこと、営業メンバーを採用する時の必須要件、育成時の伸ばすべきスキルの要件などです。この内容が明確でなければセールスイネーブルメントができるはずがありません。取り組みは形骸化します。どれだけカタカナ文字の体制に作り変えても、育成コンテンツを作っても、ツールで自動化しても、情報を部署間で連携しても、中身がなければ何をイネーブルメントするんだという話です。
結局この中身について、どうやって明確にするのか、明確かどうかをどうやって判断するのかが非常に重要なわけですが、このことについてあんまり語られていないなと感じます。この中身を明確にするために「データ活用」という言葉が使われますが、一種の魔法のような、呪文のような実態の伴わない使われ方をしているなとも感じます。このことを少しだけ噛み砕いて説明します。
●自社の営業の要因は明確か?
この中身ってなんや、ということを考えやすくするために、営業活動を構成する主な要素を下図のように、お客様、営業担当、タイミング、商品・提供価値、方法(折衝内容)から成り立つものだと分解してみます。これらの各要素についてどのような条件かを明確にすることが「要因の特定」です。
自社の営業と照らし合わせてもらい、各要素についてどのような条件かを一度書き出してみてください。たとえば以下のような内容です。
●どのようなお客様に営業すべきか
→IT業界で予算が多そうなところ
●どのような営業担当が営業すべきか
→お客様の課題を聞き出せる人
●どのような方法で営業をすべきか
→お客様の懐に入って本音を聞き出す
●どのようなタイミングで営業すべきか
→ニーズが高まっているタイミングで
●どのような商品、価値を営業すべきか
→競合と差別化し良さをわかってもらう
この中身の内容について、記載した例のように漠然としていることあるかと思いますが、曖昧な内容ではイネーブルメントの各活動の土台としては耐えられないでしょう。人材を育成しようにも「お客様の課題を聞き出せる営業」といった内容であれば何を育成すべきかわからず、単に「営業として優秀だと思う人材像」を目指すことになり、一般的な育成との差がありません。コンテンツを作るにも狙っている態度変容が漠然としていればサービス資料の延長のようなものを作ることになりかねません。
このように取り組みが形骸化してしまいますので、自社の営業の要因について明確に答えられなければイネーブルメントの各取り組みは破綻してしまいます。
>こんな風に変えてみる
先で見た中身の内容は、少なくとも以下を踏まえた内容になっているべきです。
・観測・計測が可能な内容であること
・判断が人によってぶれにくい内容であること
・商談前、もしくは商談中に得られる情報であること
たとえば以下のような内容であればイネーブルメントに利用しやすいのではないでしょうか。
●どのようなお客様に営業すべきか
→上場企業で、かつイネーブルメントをミッションに持つ専任担当者がいる企業
●どのような営業担当が営業すべきか
→お客様と同じ業務経験がある(イネーブルメントの重要性を実体験もベースに語れることが投影された条件)
●どのような方法で営業をすべきか
→商談時点で想定工数と想定期間、巻き込むべき人員を提案する(実態がなく拡大しやすい商品の弱みを投影した条件)
●どのようなタイミングで営業すべきか
→4月~6月(新入社員の研修タイミング) or 資金調達のプレスリリースが出てから3ヶ月以内
●どのような商品、価値を営業すべきか
→「セールスイネーブルメント」のROIが計測できるツールとして打ち出す
これらは「顧客理解」、「顧客目線」、「インサイト」、「商品の強み(弱み)」、「ニーズ」、「営業課題」...といった言葉でも表現されるものです。つまり自社の営業活動の特徴そのものであり、ここで書いてもらった内容が自社の営業への理解そのものであるはずです。
これが言語化できない、具体化できないということは自社の営業についてよくわかっていないのかもしれません。
●検証しているか?
ここまで、「中身を具体的にしよう」という主旨でしたが、この内容が本当に成果に繋がっているのかわからなければ意味がありません。
セールスイネーブルメントでは「成果から逆算した」とか、「計測」とかいったキーワードがありますので、本当に成果に繋がるのかということについて検証しなければなりません。
仮にトップセールスが「早口で頭良さそうに話す」という特徴があったとしても、本当に「早口で頭良さそうに話せば売れるのか」ということについて検証しなければなりません。
これはアホみたいな例ですが、トップセールスのトークやノウハウなどを検証なしに利用することは多いように思えますし、営業責任者がセンスと独断でターゲット条件や育成条件を決めたりしていることが多いようにも思われますが、そのような主観をベースに取り組みを進めることはイネーブルメントではないはずです。客観性を伴って説明がなされなければ「胡散臭い」で終わってしまいます。
>何を検証するのか?
そして、この検証の対象は取り組み事態であると考えることもできますが、本質的には先で述べた中身、要因についてであるべきです。なぜならこのような検証は時間もかかり、本質的に知りたいことではないからです。
△:外側の検証
ex.今年はイネーブルメントでツールを導入したら、前年比で売上が1.5倍になった
◯:中身の検証
『業界知識の有無』という育成条件について、既に条件が当てはまっている社員とそうでない社員で比べた際に、『業界知識の有無』によって成績が1.5倍差が出た
※活躍している人から抽出した特徴は、片面しか見ていないことになる(いわゆる生存バイアス)のでここも注意が必要です。
あまりないと思いますが、「成果から逆算した」とか、「計測」とかいったキーワードを「必要な商談数の逆算」とか「行動数の計測」などと読み違えれば悲惨なことになります。
>たとえば...
手前味噌で恐縮ですが、過去行った取り組みでは、お客様や商談方法の2つの条件だけで7~8割方の結果が説明できるまで要因を特定していました。このように明確に「これがうちの営業は絶対大事」という情報を言語化し、検証できていれば、セールスイネーブルの取り組みもこの2つの条件をどうするかをだけを考えればよいわけで、仮に人材育成の手法を行うにしてもこの条件をベースに考えるわけです。
●具体化すること、検証することを恐れない
ここまで、セールスイネーブルについて様々な取り組みがあれど、「外見」ばかりに注目していて「中身」が明確でなければ形骸化すること、そしてこの「中身」とは自社の営業で押さえておかなければならないポイントであり、具体的な内容で検証されたものでないといけないという考えを書いてきました。
色々かきましたが、「自社の商品が売れるためには、どんな条件を満たさなければならないのか?」ということについて具体化すること、検証することを恐れない気持ちが重要なのではないかなと思います。
抽象的な内容で濁したり、検証せずに「過去売れた人間のありがたい意見」で気持ちよくなったりしてしまうことは私自身陥りがちなのですが、そこにどれだけ打ち勝てるのかなのかなと。そしてそのためには、きちんとトップセールスや責任者に対し「それの根拠は?」と良い疑いをかけ、議論が歓迎される空気を作り、判断の基準を役職などではなく客観的なファクトベースの組織にし、言語化や検証のプロセスを会社としてどれだけサポートできるかなのかなと思っています。
兎にも角にも「要因の特定」が大事だよ、という話でした!
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