クオリアを平面で紡ぐ妙技|三輪瑛士「/(スラッシュ)」の鑑賞
三輪瑛士の展示に行ってきたのでメモを公開します。
開催概要は以下から確認できます。
どこからリフレクトしてきた散光が入り混じる。
祝福、喜悦、沈痛、虚無、鬱屈。「コントラスト」に収束しない感情の複雑系。
モーメントにモーメントが重ねられて音楽のように踊る。
不定形でこちらを揺さぶり、輪郭は物理によってのみ決まるのではないということを提起する。あるいは原初的にそうであるということを日もすがら忘却している我々に「視覚」の原初に還らせるかのよう。
言語を置き去りにするように引き込んでくる。
何かを語り、何かを放つようで、しかし何にも還元できない重力が充満している。
ちらつく散光
比較的安定した形態を持つものと、不確定な残像
しかし、やはりここでも三輪の言うようなリアリティが描かれているということを不思議と納得させる全体の立体的な、半ば映像的ですらある情景描写。
クオリアの極限を無言で暴き出そうとするような、あるいは平面でも立体でも映像でもないようなゲシュタルトの、複雑な構築に挑むようなアプローチ。
近くで筆致を見ると混沌として見えるが、その全体は確かな存在の輪郭が結実しているように見える不思議さ。
奥行きを感じさせる描写が、多層的な強度を与えているのだろうか。
それでいてディテール、眼光は記憶を刺すような鋭さを放つ。
洋服の揺らぎ、しなり、たわみ。
動性を、連続性を、視覚のディレイを平面で織り成している奇跡に立ち会うかのような鑑賞体験。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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