#2「メタバースに住む方法」週刊連載「メタバースとコミュニティ」
週刊連載「メタバースとコミュニティ」
と題しまして、先週から書き進めています!
第一章メタバースの大地に降り立つということー由宇霧がメタバースに住まうまで
まずは旅行から(2022年4月)
前回の記事までは由宇霧であることを伏せた状態でメタバースで様々な人と交流し、VR機器やプラットフォームの操作方法を教えてもらっていました。
これは、いうなればようやくバーチャルの世界で生まれて少し自分の足でよちよちと歩けるようになった状態です。
今度は由宇霧として一人旅、一人営業からはじめることにしました。
ここで、日本で作られているメタバースプラットフォームclusterを本格的に利用し始めました。
clusterでは「イベント」という機能があり、これを利用すると公式HPのイベント欄に掲載されたり、いたずらするお客さんをキックできたり、投げ銭を受け取ることができるためVTuberという活動とも相性が良いのではないかと考えました。
イベント機能について詳しく知りたい方は由宇霧がcluster公式ページに寄稿した記事があるのでぜひチェックしてみてください!
これは由宇霧のアカウントで開催した2回目のclusterイベントアーカイブです。
まだマイクの操作方法がいまいちわかっていなかったのか、チャットでコミュニケーションを取っていますね。
clusterの操作に慣れていなかったのでVRゴーグルは着用せず、デスクトップモードでの開催でした。
この頃はイベントの企画、進行、録画など全て一人で行っています。
また、イベントを開催する時の軸も「VTuberとして何ができるか、タレントとして何を提供できるかを模索する」という色が強かったと思います。
イベントでの立ち振る舞いも、YouTube配信と似ているように見えますね。
ですが、自分自身が受けた体験はYouTube配信とは異なるものでした。
実際に目の前に人が居て、こっちを見てくれている感覚が強く
さらに話を聞きたいときや語りかけたいときは私自身もその人のそばに移動したりしている様子がアーカイブからも確認できます。
リアルイベントに近い高揚感、達成感を感じたのを覚えています。
正直それがめちゃくちゃ楽しかったです。
YouTube配信だと同時視聴者数は見えるけど、コメントをしてくれないと今誰が見ているかわからないのです。
イベントでは自分を見てくれている人がどんな人なのか見えることが喜びや安心に繋がりました。
この頃は、イベントが終了したらすぐにclusterを閉じていました。
今思えば日帰り旅行のような関わり方でした。
旅先をレポするインフルエンサーとして(2022年7月)
次に始めたのはclusterをVTuberに紹介するという活動です。
実際に自分でclusterを使ってみて体験した高揚感や達成感を感じてもらえたら、VTuberが陥りやすい孤独感から救い出せるのではないかという想いではじめました。
しかし、この頃はまだメタバースの注目度はそれほど高くなく新規で興味を示してくれるVTuberさんはほとんどいませんでした。
むしろ、すでに活用している皆さんに私が教えてもらう会となりました。
イベントを重ねて人間関係と居場所が出来ていく(2022年9月)
ただ場を開いているだけではこの良さを知ってもらえないと気づき、イベントを企画してそこにゲスト出演をしてもらうという案を考えました。
VTuberさんが取り組みたいのは音楽ライブだと思ったので、初めて主催してみることにしてみました。
しかし、私は今までトークイベントの主催経験しかありませんでした。
そこで初めてclusterですでに活動している皆さんのチカラをお借りすることになりました。
ここから自分1人ではないメタバースとの関わりが始まります。
主催や出演をするだけではなく、時にはカメラマンなどのスタッフとして参加することもありました。
clusterでのイベント運営はほとんどがボランティアで成り立っています。
それが私には衝撃だったのです。
リアルイベントでは場所代はもちろん、スタッフの人件費がかかってあたりまえなのになぜこの世界ではボランティアでなりたっているのか不思議だったので自分も体験してみることにしました。
カメラマンとしてボランティアで参加したとき、居場所感を強く感じました。
ただイベントに参加しているのではなく、やるべきことがあってそれをやっていれば主催の方や出演者さん、参加者さんが喜んでくれる。
新しい世界や技術を学ぶ事ができる。
ここに居て良いんだと安心できて、自分もイベントを楽しむことができる。
それが報酬として感じられたら間にお金を挟まなくてもイベントを開催することができるのだと知りました。
もちろん、この在り方の危うさは痛いほど知っているつもりです。
でも、この時は自分の中でしっかりそれが成り立っていて、両者が合意できている時はきちんとした選択肢としてあって良いんだと気づきました。
こうして演者としてもスタッフとしてもイベントを重ねていると、スタッフ陣、出演陣、参加者さんの名前とアイコンを覚えて、そこに人間関係が生まれてきます。
すると、メタバースにログインする理由が「自分がなにかするから」だけではなくなります。
「〇〇さんに会いに行く」という理由が生まれるのです。
こうして、自分がイベントを主催する時以外もclusterに足を運ぶようになっていきました。
メタバースに対する精神的な距離も近くなっていき、隣町になじみの店ができた。
ぐらいの感覚になっていきました。
自分もなにか貢献したいと思うようになる(2022年12月)
そうして隣町のなじみの店に通ううちに、自分もなにか貢献したいと思うようになりました。
私は過去にメインで使用していた配信プラットフォームが売り上げ不振によりサービス終了してしまい、活動場所を失った経験があります。
当時は自分もまだ性教育の活動をするだけで精一杯で、プラットフォームのためになにかするという発想をもつことはできず、ある日突然終了を告げられた時に「もっとなにかできたんじゃないか」と後悔をしました。
何かが終わってしまうのは仕方がないことで、その時悲しい気持ちになってしまうのも避けようがない出来事です。
でも、だからこそ終わる時は「やりきった!でもダメだった!」と思いたいしちゃんと悲しみたいから、好きなものに対してはしっかりと危機感も持って向き合おう、自分にできることは全力でやっておこうと心に決めました。
裏切られるかもとか、上手くいかないかもっていうのは少しも考えて無くて自分のためにとにかくなにかしたいと思うようになりました。
コミュニティに住まう(2023年1月)
実はこの頃、毎日家で孤独に作業するのがしんどくなり地域のコワーキングスペースをレンタルしようかと検討していました。
お試しで何回か利用したのですが、関わる人に自分の職業を明かせないことや、モニターの画面にも配慮しなければならず逆に集中できなかったため契約を見送るという出来事がありました。
メタバース空間に対する没入感が高くなっていたので、もしかしたらこの世界で作業すれば良いのではないかと思いさっそく飛び込んだところ
クリエイターズマンションという企画に出会いました。
共通の間取りを土台にそれぞれの部屋ワールドを作り、ハブとなるマンションワールドで接続するというものです。
そこにはまさに自分が求めていた作業スペースがあり、日々そこにお部屋を出展しているクリエイターさんやそのお友達さんが通話やチャットをしながら作業をしていました。
そこでは自分の職業も隠さなくて良いし、モニターだって隣に居る人に見えるわけじゃないからどんな作業でもできる。
(clusterには画面共有機能があるので見せたい時は見せられるのも便利)
まさに自分が求めていた空間がそこにはありました。
ちょうどその頃、このクリエイターズマンションにVTuber棟を作りたいという話があがっていたことを聞き、一緒にアイデアを出して制作することになりました。
詳細はぜひこちらの記事を読んでみてね!
VTuber棟の制作プロジェクトに関わる中で、大きな発見がありました。
それは「自分の意見が反映されると愛着がわく」ということです。
実際に自分が手を動かしてワールドを作ったわけではないのですが、あれが欲しい、こんなふうになったら良いなという希望が盛り込まれたワールドは確かに自分事になっていきました。
そのため、このワールドをぜひ知ってもらいたいと思うようになり上記のような記事も書きましたし、コミュニティの活性化のために頻繁にワールドに顔を出したり住人限定の遊びを企画するようになりました。
これは自分にとって大きな変化でした。
最初の由宇霧のスタンスを表す一文を思い出してみてください
ですが、いつのまにか「見せるための行動」ではなく「繋がるための行動」をとるように変わっていったのです。
まわりの人に「住人」として認識され、自分も住人である自覚をもっていく。
これが私にとってのメタバースに住まうという体験の始まりでした。
メタバースに住みたいと思った時に大切なポイント
このような流れでメタバースに住まうことになった私が考える
メタバースに住みたい、知りたいと思った時に大切なポイントを紹介していきます。
・まずは旅行として楽しんで
メタバースが流行っているらしい!自分もここで一旗あげよう!と意気込む気持ちはわかるのですが、まずは難しいことを考えずにぜひ旅行を楽しんでみてください。
モチベーションの高い方ほど、メタバースがバズワードになるほど焦っていきなり何かをしなければと行動して惨敗してしまう姿をお見掛けしています。
でも、この世界の魅力をまずは自分が知らないと他の人に楽しさを提供することは出来ないのです。
私はイベントが大好きなので、イベントの話が多くなってしまいますがメタバースでの楽しみ方はイベントだけではありません。
まずは旅行としてゲームで遊んでみたり、ワールドをめぐってみたり、人とお話してみたり様々な在り方に触れてみて、自分に合うコンテンツや居場所があるかを探してみて欲しいです。
そして、見つけたらぜひ楽しんで。
この世界に来た当初じゃないと得られない感動や体験があるので、いきなりなにかを起こす側になって、それを楽しむ時間がとりづらくなるのは凄くもったいないことですし、その後のメタバースへの理解にも大きく関わるのでぜひゆっくりしていってほしいです。
・腕を組んで上から話すのではダメ
住みたい、知りたいと思った場合に
「さぁ私になにを見せてくれるんだい?どう楽しませてくれるんだい?」というお客さん根性ではなかなか地域に馴染んだり、人々の営みを見ることはできません。
それは、あなたが普段仕事や社会で偉い人であったとしても同じです。
メタバースでは社会的な地位や年齢、性別をオフにすることができますしあまり興味もない人が多い傾向にあります。
そこにきて「私は普段こんなにすごくて、メタバースを活用したいと思ってるからお前らのこと教えろ!」なんて言っても効果はあまりありません。
普段物理の世界で凄いとかより、この世界で一緒にいて楽しいかのほうが重視される気がします。
でも、無理して面白い話をする必要もないのです。
この世界の楽しみ方は非常に多様で、初心者の方にメタバースの遊び方を教えるのが好きな人や、一緒に遊ぶ仲間が増えることが嬉しい人も居ます。
だから無理に何者かであることを示す必要はありません。
皆がやっていることを試しにマネしてみたり、ゲームに参加してみたり
ただそこに居て、共に時間を過ごすことで伝わるものがあります。
・通う事が大切
つまり通うことが大切なのです。
一回で全部自分を知ってもらう必要はありません。
無理に自己紹介をする必要もありません。
(プロフィール欄に好きなものなどを書いておくと会話のきっかけになるかもしれません)
最低限「こんにちは」「こんばんは」などの挨拶をしておけばあとは少しずつで大丈夫です。
最初から長時間いると疲れてしまうかもしれないので無理に最後までいようとせず(そもそもこの世界の「最後」は非常に区切りづらい)
長時間よりもまずは複数回会うことを目標にすると良いかもしれません。
終わりに
私は運よくclusterの超黎明期に立ち会うことができたし、そこからは由宇霧であることも明かして参加していたので周りからの協力を多少頂きやすい立場であった事は自覚しています。
ですが、逆の経験として私がバーチャルYouTuberであることを知らずに接してくれた方も沢山居て、何者かになっていた自分が由宇霧のままで何者でもなくなるという経験もすることができました。
それは決して嫌な経験ではなく、自分がまた鎧を降ろしてみんなと共に生きることができる素敵な出来事でした。
時が立ち、2023年現在は様々なメタバースプラットフォームが盛り上がり文化や界隈がずいぶん成熟してきました。
人の手によってどんどん深く、複雑になってきたメタバースでは「住まう」に至るハードルが日々上がって来ているように思います。
そこで、これからこの世界に住みたい、参加したいと思う人が気軽に足を運べるメタバースイベントコミュニティを作りたいと思うようになりました。
これについては、またいくつか先の記事で紹介しようと思います。
次回は「メタバースに住み、メタバースに出かける」について書いていきます。
🌟今回話した内容に近い話をしているイベントアーカイブはこちら!
筆者 由宇霧(ゆうぎり)プロフィール
世界で初めて性教育の本を出版した特化型VTuber♨️
メタバースで居場所作りの探求中。
雑誌連載中「出張版 #特化Vの会 」(VTuberスタイル)
メタバースイベントコミュニティ CLUSTARS運営
Virtual ASOVIVA TV -ビバテレ-プロデューサー
取材や講演会のご依頼は yugiri.staff@gmail.comまでご連絡ください。