#7「認知とロールを作る」週刊連載「メタバースとコミュニティ」
週刊連載「メタバースとコミュニティ」
と題しまして書き進めているシリーズです!
これまでの記事は以下のマガジンから読むことができます。
第三章 コミュニティインフラを整備する
認知とロールを作る
メタバースで生きる、住まうためには通う場所が必要だと考えました。
人はどんなところなら通いたくなるのか
様々なメタバースコミュニティに参加して感じたポイントは「認知とロール」でした。
自分のことを知ってもらえている認知と
自分がいないと誰かが少し困るような役割があるロール
この二つがあると定期的に足を運びやすくなります。
認知に必要なコミュニケーションをどう産むか
知ってもらうためにはまず話す必要があります。
ですが私が最初に住んだメタバース(cluster)では当時お客さんのマイクがミュートになっているSHOW型イベント(音楽ライブなど)が人気で、
まだ友達がいないユーザーがコミュニケーションを取るためにはロビーと呼ばれる広場や、すでに誰かが遊んでいるオンラインのワールドに飛び込む必要があり心理的ハードルが高くなっていました。
勇気を出して飛び込んでみても、すでにできあがっている輪に上手くはいれないことも・・・。
パブリックで誰でも出入りできる場ですから良い人ばかりとは限りません。
いじわるな事を言われてしまったり、不快なアクションをされてしまう可能性もあります。
これではいつまでたっても誰とも話すことができません。
抽選制の酒場を作ろう!(2023年5月)
認知とロールの壁を解決する方法として抽選制の酒場イベントを考案しました。
抽選にして人数を絞りキャスト1人に対してお客さん2人のような少人数の場であれば話す順番が回ってこないなんてことはありません。
お話をすれば、自分のことをキャストが知ってくれている認知を生むことができます。
また、キャストというロールを用意することでお客さん側だけでなくイベントスタッフにも通う理由が生まれると考えました。
私が参加した他のメタバースプラットフォームでのイベントコミュニティでも、運営しているスタッフ同士の仲が深まっている様子をよく見かけました。
お客さんにもこれはあくまでお客さん役だよ、とおままごとのような設定を提示することでロールを用意することができます。
URLを知っている人しか入ることが出来ない限定公開イベントを作り、当選した人にだけ招待を送る「抽選イベント」を作ることにしました。
抽選イベントの露出の少なさを抽選イベントでカバーする
当時、メタバースプラットフォームclusterに住まう人の多くがイベント情報の収集に使っていたのはイベント欄でした。
このイベント欄は、cluster独自のイベント機能を使用したものだけが掲載されます。
私が考案した抽選イベントの方式ではここに掲載されません。
そこで、抽選は公開イベントの機能を使って行うことでイベント欄に掲載し知ってもらうきっかけにしようと考えました。
せっかく集まってもらうのであれば、なにかその場で抽選結果がわかるようなギミックがあればイベントとして成立するはず。
協力者を募りワールドやオペレーションの開発に乗り出しました!
ラピッドプロトタイピングで即営業
前回紹介したメタバースイベントコミュニティCLUSTARSの運営や、私自身の活動で特徴的な動きとして「ラピットプロトタイピング」があります。
ラピッドプロトタイピングとは?
今回も最初から完成を目指すのではなく、まず作れるところまで作ってもらってプレ営業と題してイベントを実施しました。
またこのような接客を模したイベントは多くの参加者がやるべき事をイメージしやすいため、素早くテストを繰り返し修正点を見つけるのに役立ちます。
プレ営業では抽選システムが上手く稼働しなかったり、当選者への限定公開ワールドへの案内もスムーズにできない可能性があります。
そのため抽選に参加する方は「お客さん役」であり、このプロジェクトの協力者として参加してほしい旨を伝えました。
こうすることで上手くいかなくてもイライラしにくくなりますし、ロールができることで役に立っている実感も得られます。
こうしてテストを繰り返して生まれたのが抽選ワールドと限定酒場イベントです。
ワールド制作がボランティアなのはなぜ?
この抽選会場は以前から作っていたメタバースコミュニティにて「やりたいことがあるから作戦会議をしよう!」と、自由参加の場をひらき
そこに来てくれた黒柳ゴウトさんというクリエイターさんが手を挙げて作ってくれました。
私が酒場作りに選んだメタバースでは、プラットフォームの外で金銭のやりとりが発生するPR案件や制作の受注をすることが禁止となっており有償でワールド制作を依頼する事ができませんでした。
(第13条 禁止行為:10本サービス上の手続によらずにユーザーから対価を得て行うユーザーコンテンツの配信等)
そこでお互いにとってメリットがあるコラボの仕方を考えました。
まずは本人が作ってみたいという気持ちがあることが大切でした。
クリエイターを指名するのではなく開かれた場所で募ったのはこの意思がある方にお願いしたかったからです。
そしてワールドはクリエイターのアカウントから公開してもらいました。
制作者としてユーザーに名前を知ってもらえて、ポートフォリオなどにも掲載でき実績になるからです。
また、以前の記事でも紹介したとおり仕事と遊びの境目は自由に試行錯誤できる余白があるかどうかだと思っているので抽選機能や導線以外は細かく指定せずにお任せしました。
さらにこのワールドは私が独占して使うものではなく誰でも使える、むしろ自分以外の誰かが使う想定で制作したので「利他」の精神で動くことが出来ました。
まさに共有地です。
みんなが使うものに誰か一人がお金を払うのでは少しバランスが崩れてしまいますよね。
逆にお金を使わないことでとれるバランスがあるのです。
やってみてわかったボランティアで生まれる絆
こうして様々なメタバース企画をボランティアで協業する経験を重ねた結果得たものがあります。
それは確かな繋がりです。
なんというか、お金には報酬という効果だけでなく関係性を清算してしまう面もあると感じていて、お金で依頼した場合相手になにか大変そうなことがあってもわざわざ声をかけずに、自分の忙しさを理由に見て見ぬふりをしてしまった経験があります。
でも、お互い無償でやっていた場合にはそのあと良い話があったらシェアしたり、つらいとき「ちょっと話きいてくんない?」と頼んだり、逆にこちらから「大丈夫?」と声をかけることが増えました。
お金で払うのではなく、相手に時間を使うことでお返しをする。
そして時間を使えば使うほどお互いを知って特別な人になっていく。
そうなるとより一層、間にお金は要らなくなります。
お金は時間がないときや、自分からはお返しできるものがない時に相手に感謝やねぎらいを伝えられる道具なのです。
特に今時期メタバースにいらっしゃるかたはこういう技術とか情報に興味があってアンテナも高い方が多いので、比較的多くの場合はお互いに技術や知識、時間で返しあえるケースが多いのだと思います。
このへんが、「メタバースで爆儲け!」的なバズワードと相性が悪かった原因かなと思います。
まだ大金が必要なフェーズまできてはいなかったんですね。
こうして、メタバースに住まうキーワードとなる「認知とロール」コミュニケーションを生むためのアイテムは揃いました。
今度はこれを使っていかないと前に進めません。
次週はこれらのワールドをどのように運営し居場所を作っていったのかご紹介いたします。
筆者 由宇霧(ゆうぎり)プロフィール
世界で初めて性教育の本を出版した特化型VTuber♨️
メタバースで居場所作りの探求中。
雑誌連載中「出張版 #特化Vの会 」(VTuberスタイル)
メタバースイベントコミュニティ CLUSTARS運営
Virtual ASOVIVA TV -ビバテレ-プロデューサー
取材や講演会のご依頼は yugiri.staff@gmail.comまでご連絡ください。