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23: 辛いが甘い!エンチラーダの色

森の奥深く
あなたが知っている
あるいは知らない場所のある色屋の話。

青年は,雑踏を汗をかきながら歩き抜け,
肩からかけた鞄を持ち直し,
道が交差する場所でぐるりと辺りを見渡した。

目に飛び込んでくるのは,
観光客に向けての品物か,
赤,緑,黄色の,原色の取り合わせの布や器。
これらはギラつく太陽の下で美しく映えて見え,
客の目を楽しませているようだ。

『色はどの場所にも溢れているけれど,
組み合わせや見る場所,空気によって
鮮やかに見えたりしっとり見えたりするから
本当に不思議だなぁ。

この間見た,あの場所の空,
雨が多い季節だからか,湿度を伴って
重たい青に見えたけれど,
ココは今の季節,スカーんと抜ける青だ。
本当に不思議。
だから世界中に出かけて色を汲み上げるのを
止められないんだけれどもね〜』

などと感想を胸に抱き,グゥとなるお腹をさすり
クンクンと鼻を鳴らし,いい匂いがする場所を
探し進んで行った。
ついた先は,たくさんの人が思い思いに
くつろぐ料理屋だった。
「くぅ〜,いい香りがする!ココに決定!」

メニューを持ってきてくれた店員に,
見慣れた料理を1つと指さして注文し,
ワクワクしながら待った。
なぜなら,,この料理は,
初日はびっくりしたものの,とても気に入り、
ココ数日の昼食にしているからだ。
店によって辛さが多少違うものの,
辛い〜と吠えた後に来る甘さが,次の一口を誘い
気がつくと完食しているという
不思議な料理なのだ。
「まぁ,僕はどこに行っても大抵のものを
『美味しくて好きだ!』と思える胃袋を
持っているんだけれどもね〜」

スペイン語で「唐辛子を加えた」という
語源を持つこの料理, “エンチラーダ” 。

青年は今日も汗をかきながら
辛い・甘いのせめぎ合いを楽しむ。
「この色も取っちゃって〜っと。頂きます!」
元気よく食べ出した青年をチラリと見た店員は
ニッコリと白い歯を見せて笑い,
他の客の給仕に向かうのだった。

しばらくしたら色屋にも,今回の採取で得た
原色の眩しい色たちが並ぶでしょう。
そんな色を手にとりにいらしてみませんか?
素敵な差し色になると思います。
そして,エンチラーダを
食べたくなるかもしれません。
色屋はすぐに食べたそうですよ…(笑



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