421: 風が奏でる葉っぱのささやきオーケストラ色
森の奥深くあなたが知っている
あるいは知らない場所にある色屋の話。
ざわざわ……サワサワ…
様々な葉擦れの音が聞こえる。
色屋は扉を開けて森を仰ぎ見た。
風の吹くのに合わせて,様々な葉が擦れ合い
大きな音から囁くような音まで
様々なリズムを刻む。
「新芽の頃は,大樹が若木を
優しく指導するようにざわめき,
若木たちも吸収しようと答える…
風がその声を届けるように吹き渡りますね。」
サワサワ…ざわざわ……
目を閉じると,深い森の奥のある滝の声までもが
店にまで届いているように聞こえる。
滝の音もまた,演奏の中に溶け込んで,
なくてはならない
重なりの音になっているようだった。
「ふむ。今日のこの音は
店の中の隅々にまで響き渡ってほしいので,
ドアをしばらく開けておきましょうかね。
っと,その前に若木のリズムを刻む色を
瓶にくんでおかなくては。
1週間もすればたくましい色に変わり,
奏でる音も変わりますからね。」
森に一歩踏み出した色屋は,遠目で見ると,
森に迎えられ,彼もまた緑に染まり,
オーケストラの奏者になったように
見えるのでした。
サワサワ…ざわざわ…
あなたも聴きに,この森に来ませんか?