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体は魂の乗り物ではなかった。遺伝子のタクラミ。


「死は最大の発明」と、 スティーブジョブズは言った。

確かに、死ぬことがなく、永遠の命があったら、やるべき事を幾らでも先送りしそうだ。先送りしてるうちに、何もやる気が無くなりそうな気がする。それなのに、命は永遠にあって、何だか気が狂いそうだ。

でも、そういうことではなかった。

染色体の先端にあるテロメアは、細胞が分裂する度に短くなり、細胞分裂がうまく行われなくなる。いわゆる老化だ。そしてとうとう死んでいく。なので、人の死は、止められない。人間にはリミッターが付いている。

テロメアを永遠に細胞分裂させる研究があったそうだが、研究は成功しなかった。

「それって…。」と、気付かれた方もいるとも思うが、
そう、
それは、
永遠に細胞分裂する細胞、ガン細胞だ。
永遠に細胞分裂させると、ガン細胞になってしまう。

しかし、人間の体で唯一、生殖細胞にあるテロメラーゼがテロメラを修復する。

生殖細胞にあるテロメラだけは、短くならない。卵子と精子が劣化すると、次の子孫に、劣化した遺伝情報を伝えてしまうか、正常な遺伝子情報を伝えられないからと言うことだ。

生殖細胞は不死だった。

生殖細胞は、次々と、新しい体に乗り換えて、遺伝子だけをを面々と伝え続ける。体は遺伝子の乗り物。

スピリチュアルな、魂の乗り物ではなかった。

生物は進化が作った。
その都度、環境に適した体に乗り換えて、遺伝子だけが引き継がれて行く。

そう言えば、戦後30から40年で、5等身から7等身になり手足が長いく、
顔が小さい人の割合が増えた。
栄養状態の変化と言われていたが、
遺伝子を有効に残すための変化が起きているとも、
言えるのではないか?
栄養が変わっても、顔が小さくはならないだろう。

人間以外の生き物は、殆どが、生殖時期が終わると死んでいく。

遺伝子を残すことが、最大の目的のようだ。

スティーブ・ジョブズの言う、「死は最大の発明」とは、そう言うことらしい。

そう考えると、死自体は、それ程悲観的なものではなくなる。

でも逆に、子孫を残すと言う最大の目的を考えると、悲観的になるところがある。

健康なカップルが避妊せず性交した場合80%が妊娠すると言われている。自然妊娠率は、35歳以上で50%。40前半で30%台。45歳以上で5%以下に低下。その他に、様々な不妊要因があり、自然妊娠率は低下する。二人目不妊も増えている。不妊に悩んだことのあるカップルは時代や地域で割合は違うが、9〜25%とも言われている。10人に1人から、4人に1人は悩んだ事があるという事だ。

遺伝子のタクラミなのだから、子供を残す事は人生の最大の目的のハズで、不妊はかなり、デリケートで深刻なな問題だ。  

それでも人間は、妊娠には期限があるのに、結婚適齢期が遅くなっていたり、生殖期が過ぎてもかなりの年数生きていたり、お一人様が増えていたり、遺伝子のタクラミだけで生きている訳ではなさそうだ。
そこには社会情勢が大きく関わって来るだろうが、遺伝子のタクラミより、社会情勢が優先されているのは、生物としての目的も違って来ているのかも知れない。人間に関しては、面々と続く遺伝子のリレーより、個体としての何かが優先されるのではないかと思う。個体としての価値を見出したと言うべきか? 

もしかしたら、それさえも遺伝子のタクラミで、増え過ぎた人口を調節にかかっているのかも知れない。
もしかしたら、さらに優秀な遺伝子を残すための策略かも知れない。
それは抗えない、うちなる声で、時間が過ぎなければ見えては来ないだろう。

話しをもっと大きくすると、太陽の寿命はあと50億年くらい。赤色矮星になって大きく膨らむ。そうすると地球は太陽に飲み込まれ、その後、宇宙のチリになる。

私には子供がいない。だから、私の遺伝子は私が死ねば消滅する。

しかし、私が死んで生殖細胞が微生物の膜で覆われ、砂粒ほどの鉱物の中に閉じ込められたらどうだろう?
宇宙のチリとして漂い、その後、地球から脱出した宇宙船より早く、どこかの星にたどり着くかも知れない。
体を持たない私の遺伝子は、体を持った人間より、その星に適応できる。地球に適した体は邪魔なだけだ。

そう考えると、やはり、遺伝子のリレーは永遠に続くのだろう。

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