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残暑の昼が来る前に


東の太陽を思いながら、西側のベランダでタオルケットを干し竿にかける。
水気を吸ったタオルケットはちょっと重くて、夏の終わりを持ち上げて確かめている気になる。

「暑かったけど短かったよね 夏」

これで、ピンと何かを感じる人はどれくらいいるだろう?

桑田佳祐の「稲村ジェーン」
一緒に見に行った当時付き合ってた人が、お前は何様だ?…くらいのこき下ろしていたけれど、私は一緒に映画を見ただけで嬉しかったから、映画も楽しかった。
それに、夏の終わりってこんな感じだよね…って、思えたんだ。

タオルケットを持ち上げると、遠く遠く遠く遠く、飛行機らしきものが浮かんでいた。
飛行船ならいいのに…。
そう思うけど、余りに遠く音もない飛行機は飛行船にも見えたし、本当はUFOじゃない?…とも、思えた。
だからずっと、両手で叩けば潰れてしまいそうな遠い飛行機を目で追った。
ゆっくりとゆっくりと移動するそれは、異世界のモノにしか思えない。
それは、途中で消える事なく静かに静かに見えなくなった。

次にシーツを干した。
ピンピンと引っ張ってシワを伸ばす。
バスタオル、タオルを次々干していく。
全てが乾く頃、太陽は南にやって来るから、そしたらベットパットを干しにかかろう。
全てを洗って日に干した物でベットメーキングしたベットは、すごくふわふわそうで、想像するだけで気持ちよさそうだ。
休日にシーツを洗うのはとても幸せだ。
太陽がまだ東にある時のちょっと冷たい澄んだ空気。
残暑の日中とは違う、秋の予兆。

全てを干したら、冷水で淹れた緑茶を飲む。
冷たいお茶が喉を潤していく。
季節はまだ夏の空気が強いみたいだ。

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