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『敗軍の名将』読書感想文

『敗軍の名将 インパール・沖縄・特攻』(古谷経衡・幻冬舎新書)

読み終えて大興奮している。

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もう中学高校の課題図書にしてほしい。いや課題図書にするとみんな敬遠するからこっそり学級文庫とかにおいてほしい!!! 

なぜなら、これを読むと(逆説的に)平和の尊さが実感でき、ネトウヨ防止になるからです。

私は右翼ではありません。9条は変える必要はない、とこの本を読み終えた今も思っており、日本が戦争するくらいなら降伏した方がマシだとすら思っています。(昔は小林よしのりの『戦争論』とか読んでましたが…)

戦争、戦記、武器、艦隊、軍事、一切何の興味もなかった。

むしろ戦争映画は嫌いでした。悲惨だから。

日本の平和教育って「一部のアホなやつら(軍部)のために、庶民は本当に苦労した、たくさん人が亡くなった、悲惨でした、だから絶対戦争はダメ」一辺倒。

私にも戦死者への追悼の念は(軍属、民間人問わず)当然ありますが、8月という季節も正直苦手でした。お盆と重なるこの時期だからポツダム宣言を受諾したのかとすら思っていました。

戦争は悲惨です、庶民が苦労しました。それだけをいくら植え付けても本当の意味で「戦争をしてはいけない」とは思えない。ずっと私もそうだった。8月の暑い夏、みたいなイメージしかなかった。

違う。圧倒的に戦争はリアルで今もそこにある。

戦争は「理不尽だから」してはいけないのだ。

この本には軍上層部の理不尽に、昂然と反旗を翻し、部下のため日本のために戦おうとした人たちが出てきます。

でもこれを読んだからと言って戦意は全く高揚せぬ! むしろ平和ありがとうと思う。

私は絶対に日本は戦争しちゃダメと思った。命が尊いのは当たり前。この国は日本は戦争に向いてない・・・!

命令系統に致命的欠陥があり、その欠陥が今に至るまで温存されている。

それが「コロナ禍における「政府の無策」→現場の人が頑張る→でも根本的な解決にはならない」だと思う・・・何も変わってない。

私は(今は)9条改憲は不要、戦争は絶対に反対、核保有も反対であり、著者とは思想が異なるかもしれない。しかしこの本の価値は分かる。

戦争は、一部の軍事オタ男性の夢や、フェミニストの嫌悪の的ではない。先の戦争は「単なる事実」である。あの戦争を総括しないかぎりこの国の致命的な欠陥は温存され続ける。

ちなみに、戦争のことを全然知らなくても、旅行記部分が面白すぎます(笑) 古谷さんの「現場に行く」主義が貫かれ、過酷な戦地の様子がリアルに筆に起こされている。フツーに面白い!…インパールのこと書こうと思ってもインパールに行かないですよ(笑) この旅程がまた過酷で、日本軍はこれを「徒歩」で行軍、敗走したのか…ていうリアルが「戦争ハンターイ」なんていう空疎な言葉よりなにより強い! 「軍事」に関するコラムも充実。

今も敗戦に至ったエラーを抱えながらこの国はよろよろと生き永らえているのだ。


▼『敗軍の名将』を読むおともには、シラスの「#ゲンロン211208」をおススメします! 私は女性で、軍事と軍事オタたちは苦手(すまん)でしたが、これは”抱腹絶倒”のうちに戦争のことが学べます。
※タイトルで引くかもしれませんが、全くネトウヨ・戦争賛美番組ではありませんので、ご安心ください(笑) 

古谷経衡×辻田真佐憲×東浩紀「夢としての『大東亜戦争』——80年代生まれが架空戦記を軸に語る開戦後80年」
https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20211208


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