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教育は未来への投資

僕は社員教育が中長期の収益に大きな相関があると思ってるので結構な時間や予算を教育に割り当てるようにしています。

教育費を未来費用という括りにしてるのも、単に経費項目の一つだと事業の調子悪いと安易に削りたくなる欲望を自制する為だったりします。

今はTOCとMGを必須研修にしてますが、昔は道徳の勉強がメインでした。道徳の勉強?そんなもの仕事に何の意味があるのかと思ってましたけど、やっぱりそれはうちの組織文化の形成にはかなり影響与えてるし、その組織文化が仕事や事業を支えてるところはあったと思ってます。

TOCを研修に取り入れたのは、経営において課題となる領域に対して、かなり広範囲の理論的な枠組みが用意されているのが魅力的だなと感じたことと、ちゃんとした科学理論を目指しながらも、その根本に人の気持ちや心を置いてて、そこがすごく良いなと思ったから。ゴールドラット博士は、TOCはトヨタ生産方式がなければ生まれなかったと公言してますし、「人はそもそも善良である」という考えがベースにあるのも、日本っぽさがあって良いなと思います。

TOCの研修は本格的には4-5年前ぐらいから受講してもらってるのですが、八尾の製造メンバーも少しづつ受講して、今は全員が最低一回は受講できています。

僕は全然把握してなかったのですが、TOC研修受講後、彼らは彼らなりにTOCを現場で使ってみようとしてくれていたようで、今までなら時間が空いたら、とりあえず製造していざという時のために在庫を作っておくとか、原料の仕入れも、ある程度まとまった単位で1回で納品してもらうほうが効率的と思ったみたいですが、TOC研修受講してからは、なるべく小さい単位で仕入れ、出来るだけ製造日近くに仕入れる、時間があっても無理に製造しない。在庫を増やさない。と、少しづつトライしてくれていたようです。

それだけが要因ではないとは思いますが、結果、八尾工場はどんどん時間に余裕ができるようになり、昨年、ついに平日に製造メンバー全員が有給を取る、ことが出来たということでした。
これにはかなり驚いたのですが、TOCの通りにやっていったら余裕ができた、という話よりも、むしろ製造現場のスタッフが「余裕がある」ことや、「暇である」ことに後ろめたさを感じなくてよくなった、ことが大事だなと思ってます。

時間が余ったら製造する、在庫を増やすのも、何かしないと後ろめたいからだと思うんですね。ある意味「善良」だからやってしまうことです。TOCでは全員が忙しい工場は倒産に最も近い、みたいな話が出てきます。TOCを深く理解していなかったとしても、そういう印象的なフレーズをいくつか共有できてるだけでも、集団での行動を変えるトリガーにはなると思うんですね。

自分達の時間に余裕ができ始めたら、今度は今はIGA(三重工場)の方はめちゃくちゃ忙しい状況なので、何か八尾の方でカバーできることがないか調整してくれてたりします。なかなかここの連携って難しんですけどね。意識として、今、ボトルネックになってるところにヘルプに行くって姿勢は凄く良いなと思ってます。

会社において教育は、すぐに成果に結びつくような即効性のある施策ではないとは思います。でも、きちんと方針をもって、必要な教育を実施していけば、それは最終的には何かしら成果に繋がってくるもではないかなと思うんです。

上記八尾製造現場の事例も、1~2人だけしか研修を受けてなかった時は特に何か目立った変化があったわけではありませんでした。それが全員が同じ研修を受けてる状況ができて、初めてTOCを現場に取り入れてみようという動きになった。研修の質云々も大事ですが、受講者の数も重要だったりもします。皆に同じ研修を受けてもらい、理解してもらうには、それだけでも時間はかかります。

TOCやMGは、組織のOSを共通にするため、というような話を社員にはしています。使う言葉やその言葉の概念を共通にする。それだけでもそれはその組織の世界観や文化の共通化に繋がることだと思うのです。例えば、「ボトルネック」は悪ではなく、このボトルネックをいかにフル活用するかが大事です。TOCを勉強してないと、「ボトルネック」という言葉を聞いたら、それは悪いところ、改善しないといけない箇所のような扱われ方をする可能性があります。

あと、教育って研修とか講義受けるイメージに偏りがちだけど、自分で勉強する、本を読む、違う分野の人と話して知識を得る、とか「学習」の要素も僕の中では「教育」に含まれてます。もっと拡大解釈すると、雑談も「学習」の側面はあると思うんですね。明確な目的はないけど、雑談の中で人のことを知ったり、何か気づきを貰ったりすることは普通にあると思うんで。

MVVやパーパスなんかを整備して価値観を統一させるみたいなことは昨今企業ではよく行われていて、それはそれでとても大事なことだとは思うんですが、それと同じぐらいか、それ以上に、僕は教育はその組織の性格形成にすごく大きい影響を与えると思うんですね。日本という国の教育には色々な問題点があることは指摘するまでもないですが、一方で、義務教育が当たり前で、大半の子供が学校に通える、学べるという状況はそれはそれで世界で見れば当たり前というわけではないですし、それはなんだかんだ国力のベースにはなってきたと思います。また、学校で掃除の時間があったりも、日本特有だと思いますが、日本人の衛生観念や清潔さへのこだわりとかも、実は長い義務教育の期間に養われているところがあると思います。

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