
アート系読書感想文[8]ゴールドフィンチ
美術館爆破テロで母を亡くした少年・テオは、その時美術館から1枚の名画を持ち去った――レンブラントとフェルメールを結ぶ画家、ファブリティウスの「ごしきひわ」。孤児となったテオはそのオランダ黄金時代の小さな名画とともに、波瀾万丈の運命を辿ってゆく。友情と裏切り、恋と失望、ドラッグとギャング、そして名画をめぐる恐れと魅了……。「21世紀のディケンズ」とも称された、長編大作全4巻。
全4巻、な、長かった…。
しかも各巻350ページずつぐらいあるんですよこれ。
電子書籍と紙の本どちらでも読むのですが、私はまだまだ紙の方が読みやすいし、頭にもすんなり入ってくるし、内容も覚えていられます。
これは長いし持ち歩くの大変だからと思って電子書籍にしたのですが、紙の方が私みたいなタイプには正解だったかもしれません。
とにかくちょっと読んでは別の本に手を出してしまい、通読するのに2年ぐらいかかったかもしれないです。
じゃあつまらなかったのかというと全然そんなことなくてずっと面白かったんですよ。
舞台がニューヨーク、ラスベガス、オランダと変わるのですが、いずれの土地の描写も目の前にありありとその様子が浮かぶようでした。
主人公テオの保護者となるホービーの骨董品に囲まれたお店兼家は「絶対ここに住みたい!」と思うし。
特にこれといって重要でもないテオが街を歩くシーンですら
「ホテルへ戻る途中、曲がる角を間違えてしまい、数時間、あてもなくぶらぶら歩いた。ガラスの安物で飾られた店、発音できない名前がついた灰色の幻想的な路地、金めっきの仏像やアジアの刺繍品、古い地図、古いハープシーコード、瀬戸物やゴブレットや骨董のドレスデン磁器の壺がある、薄暗い葉巻のような茶色の店。」と、これでもかと魅惑的なものたちがどんどん登場してきて脳みそがいっぱいになっていきます。
母親と一緒に訪れた美術館でテロにあってしまったテオが1枚の絵を持ち去ってしまい、その絵を返すべきだし、でも大事だし、とりあえず自分も生きていかなきゃいけないしでどんどん大変なことになっていく物語でした。
読み進められなかったのは描写が見事すぎて物語にのめり込みすぎて、登場人物たちを身近に感じすぎたからかもしれません。
登場人物が主人公からもうなんていうか「しっかりせぇよ!」って人が多いんですよ。
みんな割とすぐ目先の欲望とか自らの内なる弱さみたいなのに負けちゃう。
危なっかしいんですよずっと。
あと個人的に薬が登場する物語があまり得意でなくて、そのシーンがかなり多いのもあるかもしれないです。
目をふさぎたくなっちゃう。
ところでこのテオがとっちゃうファブリティウスの《ゴシキヒワ》のウィキペディア充実してて読み応えがあります。↓
映画化もしているようです。