生きる力をすべての人に(2019.04)
~ラジオドラマプロジェクトを終えて~
生きる力とは、
明日を生きる意味を感じること。
生きたいと思う理由ではないかと思います。
生きる意味を感じるのは、
居場所・役割・他者との繋がりが
自覚できる状態ではないでしょうか。
居場所と役割を見定めるには、
自己と対話しながら
客観的に自己を見つめる作業を経て
ある程度自分にどんな特性があり、
何を喜び何を嫌い、何を求めているか
を把握することが必要です。
その上でどこに自分の身を置くか、
何をするか決めることにより
よりよい選択が可能となります。
加えて自分が今までどんな変化をし、
これからどんな変化をするのかという
ことを考えるのことも必要です。
また、他者との繋がりは、
対話を通じてどんな特性があり、
何を喜び何を嫌い、何を求めているか
を相互理解し、
同じでなくてもそれを尊重できる相手と
関わることです
「居場所・役割・他者との繋がり」は
心理的安定性をもたらし、
生きる意味を作り出します。
この対極にあるものが孤立です。
生きる力を育むこと。
私はこれらを通信制高校とフリースクールでの
20年の教育活動において、
半年から一年じっくり時間をかけて
若者が自己対話するきっかけとなる
「他者」になり、その変化に寄り添い
新たな場所へ羽ばたく手伝いを行ってきました。
私の教室では、卒業式で全員にスピーチを
してもらいます。
その時「初めてここへきた時は…」と
振り返った時、多くの卒業生から
「絶望」「諦め」「不信」
などの言葉が出てきます。
まさに生きる力を失っている状態で
彼らは私のもとに辿り着いていたのです。
それが時を経て卒業を迎え、
自信をつけた明るい表情で、
自分がここに来たこと、
ここで進路を見つけたことなど
自らの選択を肯定します。
自分が人前で話すようになるなんて
信じられないと言う生徒も少なくありません。
ひとりひとりと丁寧に対話を重ね、
自己対話を促すことは時間がかかる。
それは仕方のないことだと思っていました。
しかし今回のラジオドラマプロジェクトでの
多角的な自己客観視ができるワークでは、
数ヶ月で1年かけて対話したことに近い
効果を参加者に見いだすことができました。
今回、DSTを作成したのは高校2年に当たる
若者たちでした。
高校に通う参加者は、
学校で進路決定を迫られ焦っている状態でした。
自分と向き合うこともせず、
時期が来たから誰かのモノサシを借りて
自分を測り進路を決める。
ハッキリそう自覚はせずとも、
漠然と進路選択に疑問を感じていたこと。
何か得られるものがあるかもとこのような
校外活動に自主的に参加した原動力のひとつに
なっているかもしれません。
さまざまな方法で浮かび上がらせた「自分」を
把握し、彼らは主体的な進路選択をはじめました。
自分が何に喜び、何を求めて、
どんな場所に身を置き、何をすべきか。
これらを考えることは、
前向きに「未来の自分」を見つめることであり、
まさに生きる力を生み出していることなのです。
その過程に寄り添い、見守ることは、
私にとっても刺激的で自分を変容させる
貴重な時間となりました。
このダイナミックな体験を多くの若者、
いや多くの老若男女に感じてもらいたいと思います。