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スマホ撮影も気をつけて!絶対知るべき肖像権とプライバシー侵害
肖像権やプライバシーの侵害に厳しい昨今、私のようにストリートスナップを主とした写真を撮る人はプロ、アマ問わず理解しておくべき重要な事だ。良く理解していることで思わぬトラブルに巻き込まれずに済むかもしれない。これはスマホで撮影する場合も一緒。人類総撮影時代には必須の知識だ。
この記事ではタイトルの通り、肖像権とプライバシー侵害とは何か、撮影者が心得るべき事は何かを説明していく。
肖像権
早速肖像権から説明していく。
肖像権とは、個人が自分の顔や姿が他人に勝手に撮影・使用されないようにする権利のこと。これは、他者に自分の外見やイメージが不当に利用されることから守るための権利だ。
肖像権の要点
・プライバシーの保護
個人が望まない形で自身の写真や映像を公開されない権利。
・商業利用の制限
個人の写真や映像が、本人の許可なく広告やプロモーションで使用されることを防ぐ権利。
・文化的背景
日本では特に有名人や芸能人に関して、この権利が問題となることが多い。
肖像権が侵害されるケースとして、次のような事例がある。
・許可なく撮影された写真が公に使われた場合。
・個人の写真が商業的に利用されたが、本人の同意がなかった場合。
プライバシー侵害
プライバシー侵害とは、個人の私生活に関する情報が本人の許可なしに公開されることで、個人の尊厳や平穏が脅かされることを指す。これは、個人のプライベートな領域を守るための権利。
情報社会が進展する現代ではますます重要視されている。
プライバシー侵害の要点
・私生活の情報保護
個人の住所、電話番号、家族構成などの私生活に関わる情報が無断で公開されない権利。
・データ保護
SNSやインターネット上での個人情報が本人の許可なく収集・公開されない権利。
・自由と平穏の侵害
個人の私生活を過度に干渉する行為や、日常生活に支障をきたすような行為もプライバシー侵害にあたる。
プライバシー侵害の具体例としては、以下のようなものが挙げられる
・許可なく個人のプライベートな会話や行動が撮影され、それが公開される場合。
・個人の私生活や家族に関する情報が無断で報道される場合。
これを見ると写真に写っただけで「プライバシーの侵害だ!」と言われても、実際に撮られた人が被害を被っていないならプライバシー侵害は適用されないのではと思うが、侵害される恐れがある場合でも適用される事がある。
プライバシー侵害の適用基準
プライバシー侵害が適用される場合、被害者が実際に被害を被ったときのみというわけではなく、プライバシー侵害に関する法的対応は、侵害が発生する可能性や恐れがあった場合、または被害者の権利が侵害されたと認められる場合にも適用されることがある。
侵害の恐れがある場合
被害者が実際に損害を受ける前でも、プライバシーが侵害される恐れがあると判断される場合、裁判所が差し止めを命じることが可能。たとえば、以下のようなケースが考えられる
・個人の私生活に関する情報が無断で公開されそうな場合(例えば、まだ公開されていないが、公開が予告された場合)。
・個人のプライベートな写真やデータが、第三者によって利用・拡散されるリスクが高い場合。
こうした場合、プライバシーの侵害が発生する前に、その公開や行動を差し止めるための訴訟が認められることがある。実際の被害(例えば、名誉の毀損や精神的苦痛)が生じていなくても、侵害される可能性自体が問題となる。
侵害の事実が認められた場合
プライバシー侵害が適用されるかどうかの基準としては、被害者が「不当にプライバシーを侵害された」と感じるかどうかが重要。日本の判例では、次のような要素が判断の基準となる
・プライバシーとして守られるべき情報か
公開された情報が被害者の私生活や個人的な領域に関するものであるか。
・公開の範囲と方法
情報がどのように広められたか、広範な第三者にアクセスできる形で公開されたか。
・社会的評価に対する影響
公開された情報によって被害者の社会的評価や生活に不利益が生じるかどうか。
実際に経済的損害や社会的地位の低下といった「目に見える被害」が生じる必要はなく、精神的な苦痛や不快感を感じた場合でも、プライバシー侵害が認められることがある。
損害賠償が求められる場合
実際の被害が生じた場合(例えば、名誉が毀損されたり、精神的な苦痛を受けたりした場合)、被害者は損害賠償を請求することができる。この損害賠償には、経済的な損失だけでなく、精神的な苦痛に対する慰謝料も含まれる。
プライバシー侵害が適用されるのは、必ずしも被害者が実際に被害を被ったときだけではなく、侵害の恐れがある場合や、個人のプライバシー権が不当に侵害されたと判断される場合にも適用されます。被害が発生する前でも、適切な法的手段で侵害を防止することが可能。また、精神的苦痛やプライバシー権の侵害そのものが損害とみなされ、損害賠償の対象となることもある。
景色の中にたまたま写り込んだだけでプライバシーが侵害される恐れも全くないのに言葉だけでプライバシー侵害だと叫ぶ人は見当違いなので、これを知っていれば冷静に対処できるだろう。
肖像権とプライバシー侵害の関係
肖像権は、プライバシー権の一部として扱われることがある。つまり、肖像権の侵害はしばしばプライバシー権の侵害としても認識される場合がある。たとえば、街中で許可なく個人の写真が撮影され、それが公に利用された場合、その人のプライバシーが侵害されたとみなされることがある。
法的対応と例外
日本では、これらの権利を守るためにさまざまな法的措置が存在します。肖像権やプライバシー侵害が認められた場合、損害賠償請求や差し止め請求を行うことが可能です。ただし、公共の利益や報道の自由などが認められる場合には、一定の例外が適用されることもある。
例えば、公共の場所での撮影や報道目的での肖像使用は、一定の条件下で許容されることがある。しかし、本人の権利とのバランスが重要であり、過剰な露出や無許可での商業利用などは法的問題を引き起こすことがある。
肖像権とプライバシー侵害は、個人の尊厳や平穏な生活を守るための重要な権利。これらの権利は情報社会が進展する現代においてますます重要になっており、無断での写真撮影や情報公開に対する法的保護の役割が大きくなっている。
ストリートスナップとの関係性
ストリートスナップ写真における肖像権について、写真家がどのように捉えるべきかは非常に重要だ。公共の場所で撮影された写真であっても、被写体が個人として特定できる場合、肖像権やプライバシーの問題が生じる可能性があるため、慎重な配慮が求められる。
公共の場所での撮影と肖像権
日本では、公共の場所での写真撮影自体は一般的に許可されている。しかし、次のようなポイントに注意が必要。
・特定の個人が明確に写っている場合
個人が識別できる形で撮影された場合、写真の利用には本人の許可(承諾)が必要。特に商業目的で使用する場合は、モデルリリース(肖像使用許可書)を取ることが望ましい。
・プライバシーの侵害になる場合
個人が意図せず、プライバシーに属する情報が露わになるような形で写される場合は、プライバシー権の侵害と見なされる可能性がある。たとえば、何らかのプライベートな行動や感情が撮影され、それが公表されることでその人の社会的評価が損なわれるリスクがある場合。
肖像権侵害を避けるための対策
ストリートスナップ写真を撮影する際、写真家が肖像権侵害を避けるために取るべき具体的な対策は次の通りだ。
・本人の同意を得る
公開や商業利用を予定している場合、撮影対象に事前または事後に同意を取ることが理想的。モデルリリースの書類を用意して、必要に応じてサインをもらうこともある。
・曖昧な対象の撮影
特定の個人が明確に特定されないような写真を撮る方法。たとえば、背後からの撮影や遠景の中で個人が明確に識別できない場合は、肖像権侵害のリスクが軽減される。
・不特定多数が対象となる状況
イベントや祭りなど、複数の人物が同時に写り、特定の個人が中心ではない場合、肖像権の主張が難しくなる場合がある。ただし、特定の個人に焦点を当てる場合は別。
商業利用の場合のリスク
写真家がストリートスナップを商業利用(例:雑誌、広告、展示など)する場合、リスクが特に高まる。日本では、商業利用に関しては本人の許可を得ることが基本的なルールとなっている。許可なく商業利用を行った場合、訴訟リスクや損害賠償の可能性がある。また、非商業的な利用(ブログやSNSでの投稿など)であっても、本人の尊厳やプライバシーを侵害するような形で公開された場合は、肖像権の侵害として問題となる可能性がある。
報道・アートとしての例外
報道や芸術目的の写真は、一定の条件下で肖像権の例外が認められることがある。たとえば、報道の自由や表現の自由が優先される場合が考えられる。しかし、これも無制限に許されるわけではなく、個人の権利と公共の利益のバランスが重要。
・報道の自由
社会的に重要な事件やニュースの報道目的で、特定の個人が写る写真が公開される場合、肖像権よりも報道の自由が優先されることがある。
・アートとしての表現
芸術作品としての写真は、通常の商業写真と異なり、表現の自由が認められる範囲が広い場合がある。しかし、被写体に不当な不利益が生じる場合には、肖像権が問題になる可能性もある。
まとめ
ストリートスナップ写真を撮影する写真家は、次の点に注意する必要があると思う。
・公共の場での撮影は許されるが、商業利用や公開には被写体の同意を得ることが望ましい。
・個人が特定される場合、肖像権やプライバシーの問題が発生するため、事前に対策を講じる。
・商業利用の場合は特に慎重にモデルリリースを取得し、トラブルを避ける。
・報道や芸術作品としての利用でも、個人の権利と公共の利益のバランスを取る必要がある。
肖像権を尊重しつつ、写真家としての表現の自由をどのように維持するかが鍵となると思うが、そもそも疑わしい撮影は避けることが一番だと思う。
今では一部のマナーを守らない撮影者がSNSで一気に拡散され、カメラマンや写真家など本業にしている方や趣味でカメラを持ち歩いている人にも迷惑がかかりかねないし、ありとあらゆるところで撮影禁止の張り紙が増えていくことになる。
マナーを守らない一部の人に自分自身がならないよう、常に配慮しながら写真を楽しんで欲しいと思う。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
個展開催と写真集発売が目標の藤澤です。「世界の日常」をテーマにストリートスナップを探求し、Threadsではカメラや写真について日々の気付きを発信、インスタに今までの作品載せてます。ぜひいいね、フォローよろしくお願いします!