演奏会『ふたりの女-アロイジアとベーズレ-』のお知らせ〜やりたいことをやるために
親愛なる読者諸兄のみなさま。
通りすがりの愛しいみなさま。
いきなり告知を、させていただきます。
2023年5月14日(日)13:00〜
武蔵野公会堂(吉祥寺駅)にて、
呼ぶ女リサイタル『ふたりの女-アロイジアとベーズレ-』を!!!やります!!!
この演奏会は、18世紀に実在したふたりの女性に焦点を当てたオリジナルストーリーと共に展開します。一人は美しいソプラノ歌手アロイジア・ランゲ。もう一人はモーツァルトの愛らしい従妹ベーズレ。
1777年、当時21才だった若きモーツァルトは旅の最中にアウグスブルクでベーズレと会い、その次の旅先マンハイムでアロイジアと出会います。彼女たちの性格は全く異なるものでしたが、モーツァルトはふたりの存在をとても愛していたとされています。
舞台は1792年以降の冬。
多くの人々と同じように、アロイジアとベーズレもまたモーツァルトの死という衝撃的な報せを受けました。モーツァルトの名曲を数多歌ってきたアロイジアと、モーツァルトとふざけあい手紙を交換し続けていたベーズレは、それぞれ彼の死に漠然とした喪失感を抱きながら日々を過ごしていました。同じ想いを抱えたふたりは何かに導かれるようにウィーンの街で出会い、とあるきっかけでモーツァルトが生前暮らした部屋で共同生活を送ることに。夜の灯火の中で亡き人を偲ぶふたりは、モーツァルトが遺した手紙と楽譜を心の拠り所にしていましたー・・・
このお知らせがようやくできて心から嬉しい。
今年もやりますという喜び、そしてチーム呼ぶ女一同の我々が出会った東京の街で公演ができるという喜び!今回私はキュレーター改めてドラマトゥルグという役割で参加していますが、なんとなく立ち位置的にはプロマネに近しい(=呼ぶ女のメンバーにいろんな締め切りを与えまくっている)。少しずつ公演にまつわるあれこれが形になってきて嬉しいです。
今回は、とはいえ鋭意製作中のこの公演について少し話をさせてください。
昨年4月、山口県で前作『ふたりの女-愛されたモーツァルト-』の公演を行いました。その際に制作日記的に綴っていた記録がこちらです
「歌いたい技法が正統派のそれではないが、私はこれをモーツァルトの筆致と信じていて表現したい!」という願いを打ち明けてくれたメゾソプラノのおさとに「モーツァルトの陰なる理解者、つまり、彼にもしも"愛人"がいたらというテーマで描いてみよう」と提案したことから走り出した企画。メンバー全員で妄想を炸裂し、個人企画のリサイタルなのに小説の執筆やZINE作成といったメディアミックスを展開した結果、本当にありがたいことに大成功を収めることができました。
ここで、わたしたちの演奏会における「大成功」は何かと定義するとしたら「やりたいことをやり切った」です。興行成績や動員数も大事だけど、それよりもはるかにかけがえのない主たる当事者たちの心の動きこそが成功の証だと思っています。
さて、東京公演が決まったとなったとき、やりたいことは再演か?というのを今一度メンバー内で見つめ直しました。確かに素晴らしいプログラムだったしあれを見たいと言ってくれる近しい方々もいる。けど、私たちがやりたいことは何?という視点から出た答えは、モーツァルトへの愛を捧げつつプログラムの一新、新たな表現の可能性に進むということでした。そしておさとが出した今回焦点を当てるふたりの女性は、アロイジアとベーズレという人物です。
18世紀に生きた稀代の歌姫・アロイジアと多数の文通書簡が残っているモーツァルトの従妹・ベーズレは天才作曲家モーツァルトの生涯に多大な影響を及ぼした人物たちであったはずですが、彼女たちの視点から当時を語り、残された記録はほとんど現存していません。そこで我々は、「モーツァルトを失ったふたりの女性の喪失と再生の物語」というテーマで独自の演出を展開し、モーツァルトの楽曲群を歌唱・演奏する公演を企画・制作し準備を進めています。
私は普段たくさん食べてnoteを書く人であると同時に、クリエイターとしても活動を行っています。そのときに思うのは、「やりたいことをずっとやってる人ってどれくらいいるのだろう」ということです。
私自身もひとつひとつの仕事をとても楽しく面白く豊かに取り組ませていただいている反面、達成しようとしていることは「相手(クライアント様に限らずその先のお客様や関係者の方も含めます)の望みを叶えつつ期待を上回ること」であり「自分がやりたいことをやる」なのか?と感じることが時々あります。もちろんお仕事もとてもやりたいことなので、ちょっと誤解なき説明が難しいのですが…
プロとして責務を全うしクライアントのオーダーに全力で応えるのはとても大切なことですし、なんなら基本中の基本、あるべき姿です。もちろんそうですし、私もその在り方を愛しています。加えていうならば、それが第一目標である状態や、それを正義とすることを否定もしません。
でも、音楽を始めたばかりの頃、音楽で生きてみたいと思った頃、私の願いは「ご依頼に対して真摯に結果を出す」そのものだったでしょうか?と言われると、正直迷ってしまいます。
湧き上がる情熱、満ち満ちて仕方ない創造性をどうにか表したい!届けたい!そのために上手くなりたい!…というような、自分のやりたいことという視点にもっと忠実だった、かもしれません。それが幸いにも対外的なものとして昇華したのが今なのではというのももちろん理解しています。でも、もしかしたらきっと我々以外のものづくりに生きる方々も少なからずそうなのではと仮定し、私はこのプロジェクトに参加する意義を見出しています。
つまりこの『ふたりの女』を、「私たちの、私たちによる、私たちのためのやりたいことをやる場所」として機能させる。演奏家は極めて高い技術で作曲家や演出家の意図を汲むプロであると同時に、表現者としてやりたいことがある。アートディレクターもテーマの中で表現すべきものがあると同時に、あらゆる美を信じ愛する者として表現したいものがある。私自身がそうであると同時に、メンバーの姿を見ていてその様子は痛いほどに伝わります。
その「やりたいこと」に素直でいることを一番大切にする組織として運営するために、私はこの制作に参加しているのだと様々な準備を通して自覚しました。したがって公演そのものだけでなく、プロジェクトやチーム運営を通していかにその目標を達成するかに判断基準を置いてメンバーや関係各所と話を進めていくようにしています。
ドラマトゥルクというのは演劇用語で、演出家に伴って資料を収集したり公演補佐をしたりといった役割を担う人のことなのだそうです。今回私の気持ち的には、この企画運営そのものが人生という流れのなかのいち舞台。迷ったら、どっちをやりたいか、何をやりたいか、を問うて、叶えられそうな道を調べて進む提案をすることが今作における私なりのドラマツルギーです。
さて、熱く語ってしまいました。ここまでお読みくださっている方がいらしたら、そして少しでも聴きに行ってみたい、応援したい、と思って下さった方がいらしたら、本当にありがとうございます。いま一度、公演の告知をさせていただきます。
『ふたりの女-アロイジアとベーズレ-』
【開催概要】
日時:2023年5月14日(日) 13:00開演
会場:武蔵野公会堂ホール(吉祥寺駅 徒歩3分)
料金:自由席 ¥3,000 中学生以下¥1,000
出演:近藤眞衣(ソプラノ )佐々木暁美(メゾソプラノ)辻真理恵(ピアノ)
アートディレクター:山口菜月
ドラマトゥルグ:遠山夕立
照明・舞台監督:八木清市
企画・制作:呼ぶ女
助成:アーツカウンシル東京
※本公演は、新進芸術団体による芸術創造活動の一環としてアーツカウンシル東京様のスタートアップ助成を得て開催されます。古典作品の再解釈、映画を思わせる美術など、音楽・美術・文芸それぞれの視点からモーツァルトを読み解き独特な声楽コンサートの形として昇華させる演奏会です。
【呼ぶ女Profile】
2021年6月に結成された芸術家集団。2022年4月に山口県にて初公演『ふたりの女-愛されたモーツァルト-』を上演。モーツァルトの作品から生まれた2人の女性像を克明に描き、表現力及び徹底された世界観に大きく好評を博す。
↑webですが、公演情報のみならずストーリーや人物紹介などのインフォメーションもふんだんにございますのでぜひお楽しみいただけますと幸いです。チケットもこちらのwebよりお買い求めいただけます(e+様のページに遷移します)。
また、本公演からは諸々の情報発信/記録は私のnoteから軸足をinstagramに移します。アートディレクターなっつんの美麗なデザインとともに描かれる演奏会にまつわる多様な情報や、稽古場の風景などをお届けしてまいりますので併せて是非お楽しみください。
https://www.instagram.com/yobuonna/
やりたいことをやる。そのシンプルな願いがどれほど尊くどれほど難しくどれほど愛しいかを痛感する日々です。いつかこのチームが、あらゆるひとがやりたいことをやる決意の根拠になれますように。
というわけで素敵な5月にします!
ぜひ…応援してください!