雄介君
珍しいかもしれないが、中学校の頃、学校へ向かう道中の時間が非常に楽しかった。
特に約束をしていたわけではないが、気付くと僕は、雄介君と談笑しながら学校へ行くのが日課になっていた。
僕の家を真っすぐ行くと、雄介君の家がある。
雄介君の家に着くと、大体は待たされる。勿論逆もあるが、
調子の良い時は、僕が雄介君の家の前に着くと同時に雄介君が降りてくる。
これが非常に気持ちいい。無駄が無い。
この瞬間の為に生きていると言っても過言ではなかった。
そこから学校へ着くには15分ほど歩く。
毎朝15分雄介君との会話は、僕にとって至福のひと時であった。
特に深い話をしてるわけでもない。メインは僕がくだらない話をし、雄介君がその話に乗って終いには、つっこんでくれる。今思えば面白くもなんともない小ボケを連発し
よく笑って聞いてくれた。それが心地良く感じていたのだろう。
しかし、不思議なもので学校へ着くと、クラスが違ったのもあるが、校内で会話をした記憶がない。それに加えプライベートで遊んだことも無かった。
別に仲違いしたわけではないが、気付けば僕の朝のパートナーは雄介君から博文君に変わっていた。
相も変わらず、僕がふざけた事を言う。博文君は笑って聞いてくれる。
素敵な事である。時は経ち、大人になった今、仕事柄、年下と接する機会が多い。
懲りずに僕はふざける。勿論真面目に。みんなは笑って聞いてくれる。そこには愛想笑いも含むであろう。それでも笑顔には変わりないので大丈夫と自分に言い聞かせる。
自己満足でも、どんな形でも、少しでも多くの人が笑顔になれば、人生の1ミリぐらいは豊かの足しになるんじゃないかなとまた言い聞かせ、僕は明日も明後日もふざける。
今どこで何をしているか分からないけれども、また雄介君の笑顔を見る為に、僕はこれからもふざけ倒したいと思う。ぺい
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