こと葉たち セビリャーナス




ふとした時に思い出す
テッパンな記憶ってあるよな

小学校のグランドとか
中学時代のバスケット試合とか
大好きだった人の背中とか、、


19の時に
バックパッカーしていたスペインは
その歴史的背景から
地方により文化がかなり異なり
まるで違う国みたいだったので
ずいぶん面白かった





スペインあるあるイメージのひとつ
フラメンコは、
アンダルシアという
南部地域の舞踊


その主要都市のひとつに
セビリアがある


セビリャーナスとは、
ゴリゴリなフラメンコが
お気軽ライトになった感じ

二人一組になって
向かい合って踊るもの

比較的、踊りやすい点で
丁度、盆踊りと
似てるような気がする






スペイン3大祭りのひとつ
セビリアの春祭り、フェリアでは
各寄り合いごとで
カセータというテントを張り
セビリャーナスを踊りまくる

数パターンしかない曲を
繰り返し
延々艶々踊る

一張羅を着立てた男女は
大ホルモン大会

会場の熱気は
ウキウキワクワク
メラメラムンムン
している

男女数人のグループに
珍しい東洋人だからか
声をかけられ
一緒に歩き出すやいなや
どさくさまぎれに
ひとりの人が
おしり触わってきたから
キツめに睨んだ

ロシエンテ(ごめんよ)
ロシエンテ、言ってる

ムリ
アディオス(ばいちゃ)






そんな、
しょーもないこともあったけど

以下、本題

セビリャーナスにまつわる
印象深い思い出









それまでの旅路
あちこち宿泊する日々に
少し疲れていたので
ここらでちょいとゆっくりしたいし、
お祭り中はハイシーズンで
宿代が高いから、

一ヶ月間、街はずれの
学生寮のシェアハウスに
紛れこんでいた

部屋の掃除に来てくれるおばちゃんが
セビリアから
お祭り用臨時バスで
1時間半離れた
ロシオという聖地のお祭りで
知り合いとテントを張るという

よかったらおいでと誘われ
お言葉に甘え伺った




ロシオは不便な処なので、
行ったらおいそれと帰れない
みんなして泊まり込む
ガチなやつ




食事も終え
夜、暗がり

親戚同士やら知り合い同士
大人から子供まで
30人位が
ひとつの円になり
順々に中心に出てきて
自分のセビリャーナスを踊る


老若男女

皆、思い思いに踊る


違うようで似てる
似てるようで違う



演歌でいう節回しというか
各々の芸風というか

振り付けは同じだけれど
醸し出されるものが
それぞれにさまざま
さまざまにそれぞれ

なにがイチバンとか
どうが正しいとかない


その人はその人の踊りを踊る





足の運び

手の上げ下げ

顔の傾け方

ふたりの間合い

皆、違う


曲に合わせて
たまに
自転しながら
クルクル
お互いの位置が
何度も入れ替わる




いやー、
いいもの見させてもらってるぅ。
と、
しみじみ
感じ入っていると、


「あんたも踊んなしゃい。」
と、
無茶ぶりされる



無理無理無理無理

いくらなんでも
いまは無理




しかし、

この場に居合わせていて
踊らないなんて、
絶対ありえないっしょ。と、
言わんばかりの
目には見えない
アンダルシア圧が
ヒシヒシしてくるぅ



こーなったら、
見よう見まねでも
超ド級に下手くそでもいいや

いや、

下手とか、
上手くないとか、
そんな野暮なことを考えてるのが
逆に違うんだと
腹をくくり
前へ出て



で、

でも、

やっぱり、

記憶がぶっ飛ぶほど
恥ずかしかった





けれど、


ほろ苦い思い出ながら、




あの時
分け隔てなく
踊りを促してくれた
アンダルシアの方々の

飾らない雰囲気や

〈大切〉を共有する気持ちや、


踊った後、
相当の気恥ずかしさで
呆然気味のわたしに
ひとりの子が
何か書いてー。と
帳面を差し出したので
「露四男」(ロシオ)と書いたら
なぜか爆受けしてからの、
あたしの名前も書いてー。と
うれしそうに集まってきた
子供たちの顔を、


たまに
たまーに だけど

ふと
想い出して
ほんと 嬉しい気持ちになる




人間いいな。って、
思う





↓ご参考までに



(すべて実話であーる)






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