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「納得のいく仕事生活」を阻害する構造的な要因を考える
仕事は生活のために必要ですが、それだけでいいのか?とずっと考えています。
せっかく時間を割くなら納得のいく仕事生活にしたい。
「納得のいく仕事生活」とは何でしょうか?
「ワーク・ライフ・バランス」や「安定した雇用」は望ましいですが、それだけでは言い尽くせない気がします。
私は新卒1年目の頃、残業なしで休みも取りやすい職場にいました。
しかし、将来の展望を見出すことができず転職しました。
「ゆるブラック企業」という言葉も聞いたことがありますし、楽な環境が必ずしも個人にとってよいとは限りません。
楽さや快適さを超えた要素として「充実感」を求めているのかもしれません。
仕事自体に感じる意義、つまり「自分が価値を生み出している実感」が欲しいと感じます。
そのうえで、その仕事の先に成長や新しい気づきがあればなおよいと思います。
(これは私個人の考える「納得のいく仕事生活」観の一部ですが、今回はこれを前提にします。)
では、そんな「納得のいく仕事生活」を阻害する要因にはどのようなものがあるのでしょうか?
構造的な側面から考えてみます。
「納得のいく仕事生活」を阻害する要因
① 組織・職場と個人のミスマッチ
すべての人が、自分にぴったりの仕事に就けるわけではありません。
職務適性、価値観、興味関心、生活スタイル、パーソナリティなど、すべてにあう職に出会えることは稀です。
希望しない職種に配属されることもままあります。
私自身、一時的に営業事務をしていたとき、「毎日一人で法令遵守のためのルーティンワーク」を続けることにモヤモヤしていました。
法令遵守はもちろん大切ですが、それ以外の意義がなかなか見えず、さらに専用ツールの業務だったため「このスキルは他で活かせるのか?」と不安になったことを覚えています。
② 分業による業務範囲の部分化
多くの仕事は分業化されています。
特に経験の浅い労働者は、業務全体のほんの一部を担当することが多いため、「自分の仕事が価値を生んでいる実感」を得にくい側面があります。
経理に配属されたばかりの頃、私はひたすら決められた事務処理をこなしていました。
終わりのない単純作業のように感じていましたが、「この数字が最終的に財務諸表になり、経営判断や業務判断に使われている」と理解したときようやく納得感が得られました。
分業の中でも、「自分の仕事の意味」を見出せるかどうかが重要だと考えています。
③ 評価の恣意性
ちゃんと意味のある仕事をしていても、それが評価されなければ「やっている意味はあるのか?」と疑問を抱くようになります。
たとえば成果として直接目に見えにくい小さな業務改善や、レクチャー・後輩育成など。
また、暗黙の評価基準のようなものに振り回されることもあります。
残業や(業務時間外の)自己啓発をしなくてはならないとプレッシャーを感じたり。
さらに、怠惰さやコミュニケーションの苦手さなど、望まれる「働き手」像にそぐわないパーソナリティを隠そうとする場面も出てくるのではないでしょうか。
④ 「外の世界」に越境する機会の不足
仕事では「まず目の前の業務をこなすこと」が求められがちです。
新しい経験を積むことや、異なる視点を得る機会は意外と少ないものです。
一方で、インターネットによって他の仕事の情報も簡単に手に入ります。
「市場価値」という言葉も目に入り、仕事を変えるなら労働市場での競争を少なからず考えます。
その結果、「この仕事しか知らない」という閉塞感や、「この道であっているのか?」「他の場所でもやっていけるのか?」といった漠然とした不安が生まれます。
(それを感じずに済むなら問題にならないのですが。)
⑤ 個人と組織の成長曲線のギャップ
「成果を出しても昇給がない」「数年前なら昇進できただろう人がポストがなくて停滞している」みたいな話は珍しくありません。
(私自身はまだこのような経験はないのですが、「キャリア・プラトー(キャリアの停滞)」などの用語はよく目にします。)
組織の成長スピード、役職の数、人材配置など、個人の努力だけではどうにもならない要因もあります。
しかしそれが個人の成長を止めてしまうのだとしたらもったいないことです。
これらの要因に対してできること
こうした阻害要因に対して、組織としてできること、個人としてできることをそれぞれ考えてみます。
組織としてできること
人材配置のマッチング精度を高める、配属の自己申告制の導入
仕事の意味づけを対話によって明確化する、段階的に職務領域を拡大する
評価制度の透明化と多様化、暗黙の評価基準を放置せずコントロールする
多職種や組織外との接点を用意する(協働や研修など)
専門性を評価するポストを用意する(昇進以外のキャリアパスの充実)
すでにこのようなことがなされている組織もあるでしょうし、今はなくても提案や交渉の結果叶うこともあるかもしれません。
個人としてできること
自分の仕事をふりかえって、成果や価値を認める
所属組織にいながらできる行動変容やアピールや提案・交渉を試みる
一方で、組織外のフィールドで実現できそうなことも探す
価値のある仕事をしても、そこに意識が向いていないと気づくことすら難しいので、ふりかえって自分で自分の仕事を認めることも大事だろうと感じました。
また、ふりかえった結果、構造的に「仕方ないこと」を見極められれば、無駄に自分を責めなくて済むかもしれません。
すべて解決できなくても一部は解決できるかもしれませんし、その手段やフィールドは所属組織の外にもありえます。
無理なく働いて生活ができればひとまずOKだとは思います(それ自体が難しいですが)。
でも、人生の有限な時間を割いているのだから、できれば仕事に意義を感じたいし、自信をもちたいし、もっと充実感がほしいと感じるのは無理もないことです。
私にとって、こうやって考えたことを書き出すことも、組織外でできる小さいけれど確かな実践のひとつです。
納得感のある仕事生活を目指して、少しずつ模索していければいいなと思います。