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そのへんのOLのカジュアルお遍路のすすめ 2 出発編(香川県①)


逆打ちは香川県の山奥から

何故オリンピックイヤーは逆打ちがいいのかとか、逆打ちだとどうしていいのかとか、細かいことは気にせず、逆回りなので香川県から始めるらしいということだけを頭に、香川の宿を予約。
お寺に行きやすい場所ということで、屋島のホテルを予約した。
どうしても3日くらいしか滞在できず、時刻表や歩く時間を検索してみると、それで回れるのは高松市から近いところばかりのようだ。
逆打ちすることは決めていたので一番初めに行くのは第八十八番大窪寺となる。
後で見返せば大窪寺は徳島との県境に近く、第一番の霊山寺との距離も、県境の札所と考えると標準的な距離で、第一番も第八十八番も循環の中のお寺のひとつに見える。

マイマップをユーザーさんが公開してくれている。全体図はこんな感じになったいる。

このお遍路の道を弘法大師は循環し続けているという。
同行二人とは、回り続けている弘法大師と二人で巡礼するという意味らしい。

逆打ちがいいのは、逆回りすれば、弘法大師と出会いやすいからだとか。確かに同じ向きで回っていると、追いつかない限り出会えないが、逆回りすれば確実に一回は出会える。なるほど。

ちなみに巡礼を打つ、というのは、昔は納め札は木札で、釘で打ち付けていたからだ。
お寺を札所というのもそれが由来となる。

1日目 高松

いよいよお遍路開始である。
何しろカジュアルなので、お遍路以外も観光する気満々で、高松にはおいしいかき氷屋さんがあることもチェック済。

ちなみに無茶苦茶おいしかった。風情も素敵な店だった。

その他香川と言ったらうどんだよね!
香川の三豊市に友人がおり、どの店がおいしいか訊いたところ、香川にまずいうどん屋はないので、どこに入っても大丈夫と保証された。
なんでも、まずいうどん屋は経営が成り立たないのですぐにつぶれる。
香川には信号の数よりもうどん屋の方が多いので、競争原理が働いてどの店も美味しくなるのだそう。

と、心はすっかり観光気分だが、最初に行く場所が大窪寺と決まっているので、初日は行くことができずに観光するしかなかったという理由がある。

大窪寺まではさぬき市のコミュニティバスで行く

2024年10月現在の最新の時刻表だが、当時も大して変わらない。
屋島駅に着いたのはお昼頃だった。間に合うのは15時過ぎのJR造田発のバスのみで、それに乗ると帰りのバスが終バスに間に合わない。

さぬき市コミュニティバス時刻表

東京発なら午前9時頃に到着する飛行機もあるので、それに乗ってくれば一日目もロスすることなく動けるだろう。午前5時台に羽田空港に行ける距離にあるならば。ないならば前泊が必要だし、前泊するならば前の日の遅い時間に香川入りして香川のホテルで一日過ごした方が費用は安くなるし、前の日から入るならもう少し早く来て観光したくなるし、観光するなら、結局私と同じようになると思う。

第88番大窪寺、第87番長尾寺、第86番志度寺は非常にアクセスが良く、一気に行くことができるので、朝一からお遍路スタートで区切りがいいのではないだろうか。

琴電の乗り方は意外にわかりづらい

宿泊したホテルルートイン高松屋島は、琴電の潟元駅と春日川駅の間にあり、どちらを使ってもよさそうだったので、春日川で降りた日もあった。春日川は無人駅だった。駅を出ると建物はあるものの、裏は草地、町の灯はどこだ、というような駅だった。降りるんじゃなかった……。

それなりに旅をしているので各地方の交通機関の乗り方はマスターしているが、琴電はよくわからなかった。

無人駅の出入り口に交通系ICをタッチするところがない。
車内にもない。
どうしようか途方にくれ、まさか無料??? とうろうろしていると、車掌さんが、料金を払ってください、と。
だからどこに??

ホームにあった。
わかるかい。

四国では交通系ICが使えるのは、JRでは高松周辺だけ。私鉄ではこの琴電だけになる。(2024年10月現在)

ICカードでタッチできるようになっているバスはいくつかあるが、SuicaやPasmo、ICOCAなどの交通系ICは使えないので注意が必要だ。

無人駅さえクリアすれば、琴電自体は使いやすい鉄道だった。
高松の繁華街は瓦町というところだが、これが琴電のターミナル駅になっている。
どうせ琴電で移動する生活になるので、ホテルは瓦町に取ることをおすすめする。

2日目 高松

第88番 大窪寺

大窪寺山門

第88番大窪寺。
早起きして始発のバスで向かった。
バスに乗る琴電志度駅は、自治体としては高松市にはないが、屋島からは琴電で一本、そう遠くはない。街も地続きなので、同じ市内のように錯覚する。

バスに乗り合わせた人の数人はお遍路さんのようで、それらしい白衣を着ている。
車窓から見ていると、道の脇を歩き遍路の人が大窪寺まで向かっていた。
まだ気軽に参加している気分なのでこの時は大変そうだなあとしか思わなかったが、今になると、一度は歩き遍路をしてみたいような気もする。
公共交通機関を使ってもなかなかの難易度ではあった。難易度に比例してありがたみも湧いていた。全行程を歩いたら、自分の気分的に、とても上がるように思うのだ。

大窪寺は山の中にあった。
バス停を降りるとすぐ目の前に階段があり、そこを上がると大窪寺だった。


団体さんがすでにいて、本堂や大師堂で読経していた。白装束の集団が般若心経を唱和している光景はなかなかの迫力で、気軽に始め、まだふわふわした気分だった私を引き締まった気持ちにさせた。

まだ何をしたら良いかもわからないので、とりあえず門前で買った般若心経を黙読し手を合わせて納経所に行った。

四国八十八カ所は日付が入らない

境内には涙ぐんでいる人もいた。

普通に回るとここがゴールになるので、完遂に感極まっているのだろう。

異様な雰囲気を飲み込み切れず、バス停に戻る。帰りのバスまでは時間がある。お土産を物色する気分で周辺の売店を見て回った。

お寺の周辺にこんな風にお遍路グッズが置いているのは、第88番の大窪寺と第1番の霊山寺だけである。

なので、現地で必要なものをそろえようと思ったら後回しにせず、最初に行くどちらかで揃えることをおすすめする。

当時は私は何も知らなかったので経本くらいしか購入しなかった。
納め札は購入しておくべきだったなと後悔したものだ。

なお、御影帳に関しては途中のいくつのかのお寺の納経所で売っていたので急ぐ必要はないかもしれないが、それまでの間にそれまでにいただいた御影をなくす確率は高いと思う。

第87番 長尾寺

長尾寺は、帰りのバスを途中の大川バス本社前で降りれば、歩いてすぐだ。

長尾寺全景

長尾寺は街の中にある。駐車場が広く取られているためか緑が少ない。
八十八カ所の中でも非常にアクセスしやすいお寺の1つだと思う。順打ちの歩き遍路の時はここを出発し、15キロ山道を行って大窪寺に向かうことになる。

納経所で何か売っている

お詣りをすませ納経所に行くと何か売っている。
甘納豆のおはぎ。
書き手さんがお勧めしてくれる。何でもとても人気で、中々手に入らないものらしい。おはぎはあまり好きではないのだけど、旅先では少し冒険もしたい。
二個入りを買わせていただいた。

やはり日付がない。大窪寺では書き忘れたのかな? と思ったが、口にしないで良かった。

第86番 志度寺

長尾寺からは琴電がある。とは言え一度瓦町に戻るので、直線距離では志度寺は遠くないが、琴電だととても時間がかかる。
志度寺は琴電の志度駅から徒歩で十分ほどの住宅街の中にある。
長尾寺の周辺は開けた新しい町の雰囲気があるが、志度寺周辺は古い街並みで雰囲気がいい。
住宅街の中に埋もれるように志度寺はあった。
中に入ると、木々の緑でむせかえるようだった。

志度寺山門

外と中はまるで別の世界だ。

志度寺境内

これが山の中なら驚かないのだが、住宅街の一区画の中なのだ。
八十八カ所の中でも、周囲との差の激しさと雰囲気の良さは心に残っている。

御朱印

第85番 八栗寺

時刻はまだ昼過ぎで、あと幾つかのお寺をまわれそうだった。
琴電の一日フリー切符を、元が取れるか微妙だなと思いながら購入したが、どうやら何とか元が取れそうだ。

琴電志度に着いて、お昼を食べていないので何か食べたいと思ったが、コンビニは見当たらない。
電車を待つ間に長尾寺で買ったおはぎを食べる。甘いものを食事にするのは抵抗あるなと思いながら。まして、ご飯が甘いなんて。甘いご飯に抵抗があるからおはぎが苦手なのだ。と口にすると。

なんだこれうめえ!!

また食べたいなあ。満願したら大窪寺に行くことになるからその時に食べられるかな。

お腹が空いていたからなのかよくわからないが、おはぎをおいしいと思ったのは初めてだった。

さて八栗寺は小高い山の上にあり、琴電の八栗駅からかなり歩いたところにケーブルカーの駅がある。山の上まではケーブルカーが運んでくれるようだ。

そこで八栗駅まで行き、てくてく歩いていると……。

八栗寺までの道が車の大渋滞

八栗寺に向かう道が、車で埋まっていた。
さすが四国。敬虔な人が多いらしい。参拝に行列か!

正直感心した。
志度寺まではさぬき市だったのだが、八栗寺は高松市だ。
さすが県庁所在地。心構えが違う。

お、どうやら駐車場だ。車の列の先頭が吸い込まれていく。
どれどれ。

車の行き先

……。

さすが香川。さすがうどん県。
こっちの方が納得感が強かった。

八栗寺

駅からケーブルカーの駅まではそこそこ距離があるので歩くの面倒だったが、八十八カ所巡りではここは楽な方だった。後から考えれば。上までケーブルカーで運んでくれるなんて親切すぎでしょ!

第84番 屋島寺

まだ午後3時くらいなのでもう一つ行ける。
次は屋島寺だ。
すっかり記憶の彼方に飛んで行ってしまっていたが、平家物語で那須与一が的を射たのがここ屋島。屋島の戦いでだった。
その屋島だとは、寺の周辺の展示を見るまで気付かなかった。

屋島寺

屋島寺は小高い山の山上にあるが、屋島駅からはバスが出ており、こちらも苦労せずにたどり着く。

山上は公園のようになっており、行政の手が入っているらしく整然としている。屋島寺も非常に綺麗なお寺だった。

時間的に今日最後のお寺になるのでのんびりと散策した。
瀬戸内海が臨めた。

瀬戸内海

この海が屋島の戦いの舞台だ。

ころは二月十八日の酉の刻ばかりの事なるに、折節北風激しくて、磯打つ波も高かりけり。
舟は、揺り上げ揺り据ゑ漂へば、扇も串に定まらずひらめいたり。
沖には平家、舟を一面に並べて見物す。
陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。
いづれもいづれも晴れならずといふ事ぞなき。

習ったのは中学の時だったか。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。おごれる者も久しからず……。
とともに、

与一、かぶらを取つてつがひ、よつぴいてひやうど放つ。

これは確かに覚えている!
ここが舞台か。段々感慨深くなってくる。

山上にはどこか懐かしくなるような風景も残っている。

何が懐かしいのがわからない。こんな景色は見たことがないはずなのにいつかの遠い夏の日の景色が思い浮かぶようで何だか切なくなってしまった。

ホテルの名が高松屋島と言うくらいだから下まで降りればホテルまでの距離は大したことがない。

日が暮れかけていた。

そう言えば三豊の友達が屋島の夜景が有名なのだと言っていた。
どこら辺だろう。山上だともう降りてしまったので厳しい。
SNSで聞くと、河口、街の夜景とのとこ。地図を開くと丁度ホテルの辺りだ。それからあの無人駅。

夜景が綺麗????

ホテル周辺

夜景はどうか知らないが、夕焼け空がとても綺麗だった。

年の初めから感染症の不安、差別、息の詰まるマスク生活。嫌なことばかりだった。封じ込めたかと思っても封じ込められず、出口が見えない。

そういったものを忘れるためにここに来たのだった。
この綺麗な夕焼けだけでもその価値はあったな……。

3日目、香川編②に続く


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