年賀状

今年は出さないでおこう。

そう思っていた。

でも、娘が生まれその報告もしたい。

親戚や親しい友人は知っている。

それでも送りたいと思うか迷ったのは今年父が亡くなったからだ。

私が大学生の頃に両親は離婚。

特に何も告げられぬまま母と家を出た。

日に日に増えていく段ボール。

父はどう思っていたのだろう。

私はパパっ子だった。

小さい頃からずっと。

母に隠れて何度も会っていた。

家を出たと言っても近かったから。

いつだって味方でいてくれた。

いつだって背中を押してくれた。

一番の理解者だった。

そんな父が亡くなって半年が経った。

今でもまだどこかにいるんじゃないかと思うことがある。

受け入れないといけない現実から目を背けている。

子育てをしていると寂しさから悲しさから抜け出せる。

目の前にある命を守らなきゃと思うから。

娘がいなかったら私はどうなっていただろうといつも思う。

気付けば泣いている日もある。

そのたびに娘はニコッと笑ってくれる。

いつもと違う私を励ましてくれているのだろうか。

おなかの中にいるときからそういうところがあった。

娘の前では泣かないようにしよう。

そう思ってもコントロールできないこともある。

まさに今がそうなのかもしれない。

年賀状作成にあたり住所録をみていた。

昨年の分だ。

そこにはもちろん父の名前もある。

ボタンを『送らない』にする。

涙が出た。

止まらなくなった。

「あっ、もう届かないんだ・・・」

父が住んでいた家。

私たちが住んでいた家。

そこはもう私たちの場所ではない。

たくさんの思い出がつまった場所。

そこにはもういない。

この世界のどこにもいない。

目を背けていた現実を突きつけられた気がした。

わかっている。

受け入れないといけないことくらい。

ただただ悲しくて

ただただ切なくて

どうすることもできない現実を前に立ちすくんでいる。

止めどなくあふれる涙が教えてくれている。

本当はずっと我慢しているんだと。

いなくなってもこんなにも大好きなのだと。

いなくなってもずっと心にはいるんだと。

まだまだ泣かなくなる日がなくなるには時間がかかるだろう。

それでもいい。

忘れたくない。

忘れるはずがない。

泣くたびに思い出す。

そして、あなたのように娘の背中を押せる親になりたい。

困ったときに手を差し伸べられる人になりたい。

いつだって会える。

そんな当たり前が当たり前じゃなくなった。

だから

だからこそ会いたい人がいるならば

感謝を伝えたい人がいるならば

また今度ではなくてすぐに会おう。

すぐに伝えよう。

もう後悔はしたくない。

だから、年賀状も出そう。

それがいい。

それでいい。

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