「ちわーっす。《月矢》☆来たんだって!あいつさぁ---」🌹No.1ホストの【冬矢】君❅凛々しくなったね❅逢いたかったゎよ❅冬矢君👑〈カフェ59冬矢8〉
カランカラーン。
冬矢君と同じホストのお店に居て、冬矢君に憧れて入店した月矢君が来た次の日の夕方、店のドアが開いた。
「いらっしゃ---」
「ちわーっす、ママ」
かなり久しぶりに、冬矢君が入って来た。
「うわっ、ビックリするじゃない」
私は本当にビックリした。
「アハハ。何、昨日〈月矢〉来たんだって?」
なんだか久しぶりに見る冬矢君は、更に貫禄が出て凛々しく見えた。髪は相変わらず真っ白で、服装も相変わらず真っ白で、白の薄手のトレーナーにジーンズ。
--- はぁ。格好良すぎだよね。
冬矢君は、さっさとカウンターの右の席に座った。
私は、いつものようにおしぼりと水の入ったグラスを置いて言った。
「来たわよ。昨日。冬矢君に行って来いって言われたみたいで」
私がそう言うと。
「あいつさぁ。何か俺に憧れてホストになったみたいなんだよ。だから、名前も俺が考えたんだぁ。何かさ、ちょっと鈍臭いんだよ。うーん、優し過ぎるって言うか。俺も、始めはあぁだったんだけど、あいつさぁ、なかなか指名入らないって焦っててさ、だからママの店に行って来いって言ったんだよ」
私は、冬矢君の真っ白いマイカップにコーヒーを入れて、淡い黄色いコースターの上に置いた。
「言ってたわ。冬矢君に憧れて、あの店に入ったって。冬矢君の事を褒めていたわよ。凄く。でも、可愛い子ね。なんだか素直で」
「そうなんだよ。可愛いんだよ、あいつ。指名入らないって焦っててさ。確かに、指名は大事だけど、自然に指名も取れるようになるんだけどな」
そう言って、冬矢君はコーヒーを口にした。
「ねぇ、冬矢君のあのお店。ハウスボトルって置いて無いの?」
ちょっと、昨日の月矢君が話した〈飲み物を飲ませてあげてね〉という言葉が気になった。
「えっ。あいつ何か言った?。ママの店から真っ直ぐ来たみたいなんだけど、俺にべったりでさぁ」
「えっ、あ、あぁ、確かに。冬矢君を見ていればわかるとか言ったからかなぁ」
「アチャー、また余計な事を。ま、いっか、あ、ハウスボトルね。うちの店は無いんだよ。ハウスボトル」
「えっ。無いんだ。普通、あるよね」
なるほど。だから〈飲み物〉なんだ。
だいたいはハウスボトル ( 無料で飲める、セット料金に含まれたリしているお酒 )があるから、〈いただきます〉とか言いながら勝手に飲むホストも多いけど。
「あれも、ある店もあるし、無い店もあるし、新規のみの場合もあるしいろいろなんだよ。だけど、うちは今は無いよ。俺が無くした」
「えっ。冬矢君が?」
「あぁ。何だか格好悪いじゃん。ハウスボトルって。味気ないし。だから辞めようって店長に言ったんだよ」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。自分の飲み物はホスト持ちにしたんだよ。だけど、お客さんには言ってないよ。お客さんが〈飲み物を飲ませてくれたら〉初めてお客さんが払うからね。そうさせるのがプロだから。でもさ、新人とか、ホスト慣れしてないお客さんにはわからないから、遠回しに教えるけどね」
--- あぁ。なるほど。何となく理解できたかも。月矢君の話は、秘密みたいだから聞けないし。冬矢君の若い指名のお客さんが、ヘルプに着いた月矢君に飲ませてくれた時の話。3回目に飲ませてくれた飲み物が本当に若いお客さんからで、始めの2回は冬矢君が出した事。そして、本当に自分で飲み物を飲ませてあげる事が、嬉しいと言った若いお客さんの事。
「ねぇ、じゃ、新人ホストってキツくない。飲み物自分なら」
私はちょっと、聞いてみた。
「そうでも無いよ。自分の分は原価だから」
「ぷっ、なるほどね。だよね。売り物じゃないんだもんね」
さり気なく納得していた。
「お金ってさぁ。生きているんだよなぁ。お金で何を買うか。幸せや楽しみや喜び。時に生きる為のもの。だから、生きていないお金に価値は無いんだよね。生きるお金で楽しんで貰いたいから、ホストにもお客さんにも無理はさせたく無いんだよ。楽しむ生きたお金なら、使って貰いたいし。俺達は、使いたいって思わせるのが1番だからさ」
--- はぁ。
何だか、あまりにもズバリ過ぎて何も言えなくなった。
「あいつさぁ、また来たら飲ませてやってよ。ママの美味しいコーヒー。あいつ。めちゃくちゃ喜んでたからさぁ」
「もちろん、いいわよ」
「これで」
そう言って、冬矢君は一万円札をカウンターに置いた。
「そんなにいいわよ」
私がそう言うと。
「一万円は、ママのコーヒーの価値。そして、あいつへの頑張りへの投資。俺が決めた価値だよ。受け取って」
--- はぁ。
また、ため息しか出なかった。
「ごちそうさま。ママ。美味しかったよ。俺さぁ、この店に来なかったらNo.1にも、ホストも続いて居たかわからないよ。本当に感謝してるんだよ。ぁ、でも1番は咲希ちゃんって言ったっけ?。あの女の子が居たからだけどな。元気かなぁ」
冬矢君は、ちょっと思い浮かべるように言った。
「たぶん。咲希ちゃんも最近は来てないけど」
「そっかぁ。また来るよ。やっぱり癒されるから、ここは」
すると、冬矢君は立ち上がってドアの方に歩いて行った。
「もう、行くの?。ありがとうね。また来て。待ってるから」
「あぁ、もちろん。またな、ママ」
冬矢君は、さらりとお店を出て行った。
私は、ただカウンターの中で見送っている。
何だか、ポカーンとしている。
若さなのだろうか。成長が早すぎる。
本当に凛々しくなった。
お客さんはもちろん、ホストの後輩からも慕われているのだろう。
益々、冬矢君のお店【俺も1番!🌹君も1番!】に行ってみたくなった。
だけど、あまりにも違う姿を見るのも、ちょっと怖い感じもする。
--- いいか。ここに来る冬矢君だけで。
でも、本当に格好良くなった。
確かに、惚れるよね。お客さん。
フーッ。
また、ため息をついた。
そして、嬉しかった。
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