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『荒野のおおかみ』を思い出して

社会人2年目、本を読まなくなって久しい。
暇だし昔読んだ本でも振り返ってみようかなと。
いつ忘れるかもわからないし。
てか社会人って時間経つの早すぎるよね、、、

『荒野のおおかみ』1927年 ヘルマン・ヘッセ

「物質の過剰に陶酔している現代社会で、それと同調して市民的に生きることのできない放浪者ハリー・ハラーを“荒野のおおかみ"に擬し、自己の内部と、自己と世界との間の二重の分裂に苦悩するアウトサイダーの魂の苦しみを描く。本書は、同時に機械文明の発達に幻惑されて無反省に惰性的に生きている同時代に対する痛烈な文明批判を試みた、詩人五十歳の記念的作品である。」
上記、ブックカバー裏に記載。

 もし仮に、あなたが建築学生だとして、ル・コルビジェを崇拝する大学生活を送るとしたら何かと周囲とのバランスをとるのは難しいんじゃないかと想像できる。また個性的なファッションを身に纏う人々が原宿のストリートに溢れかえっていたんだろうという妄想をしている若者にとっても同様に。

 この本に登場する主人公ハリー・ハラーも同じような状況を抱えていて、いわばモーツァルト大好き人間なせいで、流行のクラブ音楽に合わせてダンスホールで踊り狂ってウェイウェイしてる周りの奴らがウザくて仕方がないと思っている残念な人。音楽はクラシックが最も完成されていてモーツァルトが神なんだからお前ら黙ってモーツァルト聴いてろと、常に文句を言っている主人公が極端な考え方をベースに精神二元論であれこれ頭の中でややこしく考えて話が進んでいくのがこの作品。

 主人公は尊敬に値する二人の人物と出会う。一人はダンスホールで周囲のミーハー達と踊る娼婦のヘルミーネ、もう一人は別世界で出会うモーツァルト。後日談は本の中には書かれていないけども二人に出会って主人公は人生観が変わったんじゃないかと、そこら辺は読者の想像に任せるような形で書かれている。

 約100年前に出版されて、ヒッピー文化に影響を与えたらしいこの本が今っぽくも感じられるのがこの本の凄いところ。アナクロニズム(時代錯誤)に対して出したやり方とその答えとして、個人的に一番しっくりくる。

文化が大好きな真面目人間には勧められる一冊。あと、同じようなテーマの映画『ミッドナイト・イン・パリ』よりは幾分ややこしいかもしれません。

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優雨
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