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i アイ

西加奈子さんの小説『i アイ』を読んで

アイがずっと抱いていた感情を持ったことのある人は多いのではないでしょうか。
私もアイほどではないけれど、似たような感情を抱いたことは多々あります。自分の恵まれた環境に嫌になったり恥ずかしくなったり。

私は今大学生ですが、学費や家賃は親に出してもらっています。まわりには奨学金で生活していたり、バイト代で家賃や生活費を賄っていたり、私よりも苦労している友人がたくさんいます。その中で親に頼るのがすごく嫌で、仕送りをもらうことが親に甘えていると感じて自分が恥ずかしくて極力親に頼らずに生活しようとしてきました。
とはいえ、現在も家賃などは貰っているのですが、、。並外れて裕福なわけではないけれど、貧困世帯ではありません。両親や兄弟との仲も良く家庭環境が複雑なわけでもなく、自分の環境は恵まれている、とすごく思います。もっともっと苦労している人はたくさんいる。だからこそ自ら厳しい環境に身を置こうとするアイの行動にはすごく共感しました。

ただ、ニュースや学校の勉強で胸を痛めるような話題が取り上げられた時、昔はひとつひとつを真剣に捉えて受け止めて悲しんでいたけれど、最近ではそういう話題から避けるようになっていました。今この瞬間、思いを馳せて胸を痛めたとしても数時間後には忘れて普通に笑ったり楽しんだり日常生活に戻っている。当事者の人たちはずっとその苦しみと共に時間を過ごしているのに、その一瞬だけで理解し寄り添ったかのような感情はエゴだ。そんな自己嫌悪に陥ることから、そういった出来事から目を背けるようになっていきました。

でもその感情は悪いことではないんだと、苦しみを完全に理解できないにも関わらず悲しむ自分を責める必要はないのだと、この物語を通して肯定してもらったような少し心が救われるような感じでした。だから、自分を否定するのではなく、悲しい過去や事件や事故から目を背けず、きちんと向き合おう。そう思いました。私が胸を痛めても怒っても現実は何も変わらないかもしれない。だけど、大事なのは目を背けないこと、その事実を知ること、そこで何か感じたら行動してみること。どんなに小さいことでも現実的になんの役に立たなくても、それはただの自己満足だと否定する必要はないんだと励まされた気がします。
これも自分が傷付かないように良いように解釈しただけかもしれないけれど、、。それでも、小さな思いやりをたくさんの人が持てば世界は何か変わるかもしれないし、小さな寄付が積み重なれば大きな支援になるかもしれない。所詮、自分ひとりの存在なんて当たり前にちっぽけです。だからあまり考え過ぎずにもう少し自分の感情に素直に生きようと思いました。
遠くの出来事にもちゃんとアンテナを張って知ろうとすること、心を寄せること。ちゃんと心を動かし続けていかないと。

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