アルビノ(眼皮膚白皮症)の成人が利用可能な支援制度レビュー 2023年11月現在
アルビノ(眼皮膚白皮症)の成人が利用できる支援は、実にとっちらかっている。
眼皮膚白皮症は指定難病であり、人によっては身体障害者手帳を取得できる。ただし、症状の差の大きい疾患でもあるため、症状次第では利用できない支援もある。とにかく非常にややこしい。
未成年は未成年で、また別の支援が存在するが、私は指定難病になった頃には成人していたので、そちらの解説は書けても使用感まではレビューできない。そのため、未成年特有の支援についてはさらっとふれるくらいにする。
私の病状、支援の利用状況
レビューする人間がどのような病状で、どのような支援を利用しているのかをここで明確にする。
病状
支援を受ける際のものを記載。
診断名:眼皮膚白皮症、広汎性発達障害、うつ病
外出の頻度を少なくし、自宅で個人事業主として文筆業を営むことで生計を立てている。
支援制度の利用状況
障害者手帳:身体障害者手帳(視覚障害)4級、精神障害者保健福祉手帳2級
障害年金:障害基礎年金2級(広汎性発達障害とうつ病で受給)
上記のものを除き、現在利用している支援制度
居宅介護(ホームヘルプ)
指定難病医療費助成
心身障害者福祉手当
交通費助成
補装具申請
ヘルプマーク
過去に利用した、利用を検討したことがある支援制度
障害者雇用
就労移行支援
就労継続支援
対象疾患 眼皮膚白皮症とは?
今まで、私はアルビノ(眼皮膚白皮症)と記載してきたが、アルビノと呼ばれる疾患は眼皮膚白皮症のみではない。眼白皮症など、他の疾患も存在する。そして、アルビノという呼称は当事者が自らを定義してきた当事者の言葉である。
しかし、ここで話題にするのは、指定難病の眼皮膚白皮症であること、またそれに付随する障害を理由に受けられる支援なので、混乱を避けるために、眼皮膚白皮症と表記する。
眼皮膚白皮症の症状の程度は人によるが、大まかに挙げると、日焼けへの弱さ、眼の症状(ロービジョンや羞明など)、色素の薄い容姿が主な症状となる。
医学的に詳しいことを知りたい場合は、難病情報センターを参照してほしい。
支援制度とレビュー
身体障害者手帳(視覚障害)
まず最初にやってみてほしいのは身体障害者手帳の申請だ。理由は、後に記載する支援の利用条件に障害者手帳の所持があるものが多いため、そして何より、金銭的に楽になるから。
身体障害者手帳の申請はこの手の手続きのなかでは割と簡単だ。住んでいる自治体の窓口で診断書の様式をもらい、医師に書いてもらって、自分でも窓口でいくつか書類を書いて提出。
医師に「あなたの症状では取得できないかもしれない」と言われてもとりあえず申請してみることをおすすめする。なぜなら、医師の診断をもとに判断するのであって、医師の見立て通りではないこともあるからだ。
実際、私も医師に診断書をお願いした際に、「6級が取れるかどうかってところだけれど、やってみよう」と言われたが、蓋を開けてみると、4級になっていた。
低い等級ならわざわざ手帳を取得しなくてもいいと考える人もいるが、私はそうは思わない。手帳が「ある」だけで、受けられる支援は相当に増える。
メリットは、本人や本人を扶養している人の所得税、住民税が減税されたり、本人の相続税が減税されたり、公共交通機関の運賃や文化施設などの入場料割引がされたりすることだ。
等級によっては受けられないものもあるが、等級を問わないものもある。確定申告の際に必要なのは手帳を持っていることだ。低い等級でも、手帳があれば、減税されるシーンはある。
本人が一般障害者の場合には、所得税が27万円控除される。私はこの控除額は無視できないと考えている。かなり助かっている。
相続税の障害者控除の試算をしている書籍もあるので、そちらも見ておいて損はしない。私はそれらを見て、障害者と認定されることへの忌避感が吹っ飛んだ。霞を食べて生きていけるわけがない。一銭にもならないプライドは、捨てる。
障害年金
眼皮膚白皮症の症状で該当になる人はあまりいない気がするが、参考に書いておく。
障害年金の認定基準は相当に厳しい。眼の障害の認定基準が数年前に改正されて、受給できる人も増えたには増えたが、不十分さは残る。改正のこともあるので、自分が基準に該当するか一度調べてみるのは大事だ。
眼皮膚白皮症は先天性なので、初診日の制度のせいで、障害基礎年金を申請することになる。障害厚生年金には3級があるが、障害基礎年金には3級がないので、受給の可能性はさらに低くなってしまう。
しかも、先天性の障害なので、所得制限がある。頑張ってお金を稼いだからこそ損をするゾーンが存在してしまっている。
手続きも煩雑で難解なため、一人でやらずに社会保険労務士に病歴申立書などの添削を依頼するルートを推奨する。
居宅介護(ホームヘルプ)
障害福祉サービスの一つ。私の場合、精神症状と眼の症状の複合で発生している困難があり、精神新症状を主に支援されている。そのため、眼の症状だけで利用した場合とは状況が違う可能性もある。
障害福祉サービスの受給者証を確認してみたところ、精神の症状メインで支援されているようだった。
肝心の支援の内容だが、一人暮らしなら最高、誰かと同居しているなら今ひとつ、というのが正直なところだ。
ヘルパーさんが自宅に来て掃除、調理などの家事を手伝ってくれるサービスなのだが、誰かと同居している場合には、共用スペースの家事は法律でしてはいけないことになっている。
誰かと暮らしているのであれば、私も共用スペースの家事をしなくてはならないのだが、そこについては、私の代わりはしてもらえない。障害者は家族に世話されるものだから、家族との間に家事分担なんて発生しない、と思われているのではないかと疑ってしまう制度設計だ。
とはいえ、一人暮らしで、ヘルパーさんやヘルパーさんを派遣してくれる事業所との相性がよければ、本当に助かる支援ではある。自治体によって細かいところに違いがあるので、自分の住んでいる自治体に確認するといい。相談先やシステムも、自治体によって異なるので、注意。
指定難病医療費助成、心身障害者福祉手当
成人すると、眼鏡を新調する際にしか眼科にお世話にならない気もするが、申請して更新し続けることにしている。
指定難病医療費助成はその名の通り、指定難病の患者の医療費を助成してくれる。厳密には窓口負担1割、収入に応じて月の自己負担額に上限が設けられている。上限に達したら、その月はもう支払わなくていい。
私自身は上限に達するほど病院に通うことはない。眼皮膚白皮症に関しての通院は定期的に検査してもらうのと、眼鏡の新調の相談くらいだ。
それでも、指定難病医療費助成を申請し、更新し続けるのは、難病患者として公的に捕捉されたいから、そして後述の心身障害者福祉手当のためだ。
難病患者への支援は、割と手薄で、支援職ですら制度を知らないことも少なくない。その一因は公的に難病患者をしっかり把握していないことにあると私は考えている。なので、難病患者を公的に把握しやすくしておく意味もこめて、申請し、更新し続けている。データがないとなかったことにされてしまう。それは困る。
心身障害者福祉手当の難病要件について調べてみたが、東京都のみの制度のようだ。指定難病医療費助成を申請している人に対し、一月15,500円を支給する。
ないよりある方がいいに決まってはいるが、難病があるからこそ発生するコストが15,500円で補填できるわけもない。しかも全国的な制度ではない。申請できる人はぜひ申請してみるといい。制度としては不満が大いにあるけれど、あるものは使う。
交通費助成
これは障害者手帳の等級を元に助成の程度が決まる仕組みになっていて、自治体ごとで基準や内容が違う。
東京都は身体障害者手帳を持っていれば、都営交通の無料乗車券を発行してもらえるようだ。PASMOにしておくと、都営交通から他の鉄道会社に接続したときもスムーズだ。
バスも会社によっては、障害者手帳の提示で半額になる場合がある。
補装具申請
障害者手帳や指定難病の診断を理由に、補装具として指定されている支援機器の購入補助が受けられる。私は遮光眼鏡の購入補助を受けた。
私の場合は、ほぼ自己負担が発生せず、かなり助かった。本当にありがとう。ただ、この制度は耐用年数が決められているので、次回必要になったとき、その耐用年数で困らないのかは不明。
ヘルプマーク
障害種別、困難の状態を問わずつけられるマーク。手帳の申請などは条件ではない。
札幌に住んでいた頃はさほど使わなかったが、東京に来てすれ違う人と移動時間が多くなり、見えにくさや発達障害由来の疲れやすさ、体調不良で、「まずいかも」と感じる瞬間が増えた。
そのため、周囲に「何かあるんだな」と思ってもらえるよう、つけ始めた。実際、表示はとんでもなく近くで見るし、人に気づかずぶつかってしまうし、ふとしたことで具合が悪くなる。
効果のほどはよくわからない。ヘルプマークをつけていると悪意ある行為の的になる場合もあると聞くが、幸いにも私はそれを経験していない。
電車やバスで席を譲られることが多いのは、ヘルプマークのおかげか、私が具合悪そうだからなのか、よくわからない。乗り物に酔いやすいので、いつもひどい表情をしている自覚はある。
障害者雇用/就労移行支援/就労継続支援
利用を検討したり、利用してみたけど合わなかったりした、就労系の支援制度。
厳密には、一般枠で入職し、障害への配慮をしてもらっていたので、障害者雇用は経験していないことになる。しかし、障害者雇用の求人を眺め、求職活動をした感想は有益なものだろう。
就労移行支援も、就労継続支援も、障害者雇用も、一日8時間、週5日の労働を基準に制度が設計されている。
最近ではコロナの影響もありフルリモートの求人も出てきたようだが、それでも勤務時間は9時5時と厳格に決まっているものばかり。
発達障害の影響もあり、体調が不安定な私はコアタイムがあり、定期出社が当然とされる求人のなかでつとめることはできなかった。
外出するのも、夜であれば日焼け対策がいらないからやりやすいとか、朝調子が悪くても夕方には元気になって仕事を進められるとか、そういった私の状況の存在する余地はほぼなかった。
そして、これらの就労系の支援制度はフルタイムで働き、雇用されることを目指すべき理想としている。どんな奇跡が起こっても私には実現不可能な理想を掲げられて、ここに私の道はないと悟った。
最近は直接顔を見せずにアバターで接客をする取り組みをしている民間企業もあるそうだ。国があれこれやってみても、結局、新しい働き方を創っていくのは現場にいる人だ。
新しい働き方をちゃんと支援し、保障するくらいはしてほしいものだが。
雑感
難病患者であり、身体障害者であり、精神障害者である私から見ると、難病患者への支援はかなり薄い。
難病だと診断されるまでに、あれこれ検査をして、診察されて、医療費がたくさんかかっている人もいる。
謎の不調に振り回されて、収入が減ったり、働き方を変えたりしなければならなかった人がいる。
だというのに、この手薄さは何なのか。
よくわからない、めずらしい病気にかかったわずかな人間なんて、放っておいても構わない。死ぬに任せよう。絶望しろ。
そう言われているかのような現状。制度設計や構造に隠された意図は、割と簡単に感じ取れる。
結局多数決になるから、力も持たず少ない人間なんて無視していいとみなされていることを私は確信している。
難病はそれぞれに症状の現れ方も違う。そして支援のニーズも違う。さらに個々の疾患は患者数が少ない。(患者数の少なさは難病の条件でもある。)
でも、難病患者という集団として分析してみたら、案外いろいろなことで連携できる可能性があるのではないか。細かいところは違っても、大枠は同じ、あるいは近い困難かもしれない。
だから、この支援制度レビューも、眼皮膚白皮症の人だけでなく、何か支援があれば……と思っている難病患者に向けて書いている。眼皮膚白皮症だとこういう感じと私がサンプルを示した。
それにより他の疾患だとどうだろう、何が使えるだろうと試行錯誤するきっかけになるよう、願っている。
難病患者の困難については、量的調査をもって明らかにする必要があるし、それを根拠に必要な支援を政策提言していきたい。
でもそれには時間がかかるので、今の制度で生き延びるための情報提供のnoteとした。
執筆のための資料代にさせていただきます。