働くことと私。3

もはやマガジン作った方がいいんじゃないの、というくらい続いてしまったこのシリーズ。本当にそろそろマガジン化を検討し始めている。

働くことについてこれだけ考えなければならないほど、弱視でアルビノでASD(自閉症スペクトラム/アスペルガー症候群)の女性が自分にあった職を得て、経済的に自立するって難しいんだなと痛感している。弱視とアルビノを別に書いたのは弱視(で、運転免許が取れないし見て確認するような仕事もできない)のことと、アルビノ(の見た目で就職を断られる)のことは別だと思っているからだ。

何でこれ誰も教えてくれなかったんだ、と思うけど、当たり前だけど私の周りには"就職できた"大人しかいないからだね。"就職できた"から教師だし"就職できた"から私を養える親だし、なるべくしてそうなったという感じはある。

唐突だけれど、私にはやりたいことがある。

今は座るのも立つのもつらくて、起き上がることなくベッドでこれを打っている。そんな私だけどやりたいことがある。

それが何かというのは固まりきっていないので置いておくが、それには人を巻きこむ、つまりは雇う必要があったりする。そこで初めて人を雇う側の視点を得た。

雇う側の視点になって考えてみると、"うちのやりたいことに共感してきてくれる人がいいなあ"と思うのだ。お店ならこういう雰囲気でこんなものを食べる店とか、こんな商品を売ることで社会を変えたいとか、そんな"やりたいこと"があって、皆社会に働きかけるための手段として会社を起こしたりしているのだから、スタッフもその理念に共感してくれている方が嬉しいしやりやすい。

ところが、求職者の私は正直なところ、"やりたいこと"をやるための資金稼ぎとして職を探している。給料がよくて、アルビノや弱視やASDでも働けるところ、とハローワークで求人を見たり、在宅でも何かできないかとクラウドソーシングのサイトを見たりしている。雁屋優の名前で受けている仕事は全部、やりたいことに共感している、通じるものだから受けているものだけど。

そこに、企業理念への共感とか、そういったものはとても薄い。法を犯してない企業であるとかそういうことは前提としてあるけれど、ただお金を稼ぐ手段として就職したいという思いが大きい。

生活するためにはそれも致し方ないのかもしれない。生活ってそういうことなのかもしれない。

でもやっぱり、創業者の熱がスタッフ一人一人に行き届いている企業は強いと思う。こういうミッションをもっていてそのためにこうする! という会社の行き先をスタッフがただ上意下達で承諾するのではなく、そのミッションのことを考えた上でそうしよう! それがいい! そのために私はこれをする! と考えている、そんな企業。

とあるベンチャー企業の説明会にお邪魔させていただいたとき、こんな熱量があるのか! と思った。会社というものを私はアルバイト含めると数社経験しているけれど、給料分のパフォーマンスをして、最低点でもいいから合格ラインであればいいという人も多かったし私もそういう感じだった時期があることは否定しない。

会社って、働くって、そんなもんでしょ、と思っていた私はそのベンチャー企業の説明会で働くことへの意識を変えたいと思った。

結局そのベンチャー企業の採用面接を受けなかったが、行ってよかったなと思っている。

とはいえ経済的自立を目指すのに理念に共感もやりたいことに共感もないのでは? とにかく毎月決まったお給料が手に入り、合理的配慮を受けた上で仕事ができればそれでいいのではないか? という自分もいる。

でも、私はもうあの熱量を知ってしまった。これは給料のためだけに好きでもなければ共感もしていない仕事を黙々とこなしている人々には太刀打ちできない熱量だと思ってしまった。気持ちが伴わなくても結果がすべてだと普段から言っているくせにこの変わり様。

気持ちが伴わなくても結果がすべてなんだけど、基本的に気持ちがあった方がよいパフォーマンスをできるのも、また事実なんだろうな。好きのパワーは強い。

雇う側としては"待遇がよいから"応募してきた人より"理念やミッションに共感したから"応募してきた人が欲しいのだろう。それは何となくわかる。何より私が私のやりたいことに関して、共感した上でともに尽力してくれる人が欲しい。

だけど私は生活するために、"やりたいこと"の資金集めのために、気持ちの伴わない仕事をしようとしている。矛盾している。

ハローワークの求人票から伝わってくるのは待遇と業務内容だけで、ミッションも理念も見えてこない。企業のHPを見てもちょっとよくわからないことが多い。もうちょっと発信頑張って欲しいな、と思うこともある。

雇う側としてはお金が欲しいだけの求職者、嬉しくないだろうなと思いながらお金が欲しいので年明けから就活する。そして"やりたいこと"を固めていくつもりだ。そのなかでミッションに共感できる企業に出会えたらいいなあ。


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雁屋優
執筆のための資料代にさせていただきます。