ヤンゴンから日本、一息ついてまた
ヤンゴンには仕事でいったので、ほとんど観光らしいことはできなかった。
最後の日はフライトまで時間があったので、シュエダゴン・パゴダに行ってみたかったのだが、
「ダウンタウンまでドライブいきませんか?」
湿気をたっぷり含んだ外の気温。
僕がこの日帰ると聞いた仕事でお世話になった現地の人、Aさんが大量の汗をかきながらホテルまで迎えにきてくれた。
予定を変更し、急いでかけつけてくれたという気持ちが嬉しかった。
「さぁいきましょう」
彼のクラウンに乗り、心地の良い良い音でドアが閉まる。
いつもとは逆の、街の中心へ向けて車が方向転換すると、ワクワクした胸の高鳴りが聞こえてくるようだ。
ずっと中心から離れた場所にいたので、ダウンタウンにはどれくらいの賑やかさがあるのだろう、
あまり見なかった観光客は街を歩いているのだろうか、どんな店があって、地元の人もおしゃれして歩いているのだろうか。
数日前にヤンゴンで爆発騒ぎがあった。
政府関係の施設や警察署に爆弾が落ちたそうだ。
夜だったこともあり、さほど現場から遠くないところにいたのだが、まったくそんなことがあるなんて気がつかなかった。
車はしばらく快調に進んでいたものの、
「これは、渋滞です」
Aさんがハンドルに両腕を乗せ、目の前の車の大海に向かって嘆いた。
遠くの交差点を見てみると、信号がついていない。
僕の常識であれば、こういった場合、警察官が出て交通整理をする、というのを考えつくのだが、ここはヤンゴン。昨日の爆発もわかりやすい一件だが、彼らも狙われている。命の危険があるのだ。
車でごちゃごちゃになってしまったカオスな交差点には、ボランティアで交通整理をしている青年がいた。
なんていう光景だ。
Aさんの機転で細路地に入り、ニワトリが木陰で休む通りを進んでいく。
迷路を進んでいくように右へ曲がり、S字をくねりした後、大通りへ戻ってくる。
「これは、渋滞です」
Aさんがニヤリとほほえみ、さっきと同じトーンで言った。
遠くまで車が詰まっているを見て、日本と同じ感覚で人の到着を待ってはいけないと思った。
こんなんじゃ絶対遅れるはずだ。
到着したダウンタウンは、灰色の年季の入ったビルが立ち並び、想像していた通り騒々しかった。
韓国の企業が建設しているというリッパなビルや、いい感じに高そうな車も見かけた。
車に煽られても気にせず、屋台を手押しして運んでいるおじさん、伝統衣装が素敵なヤンゴンの女性陣。
人や車でごったがえて忙しいところだったけど、楽しいエリアだった。
Aさんとはその後一緒にご飯も食べ、お茶もし、空港まで送ってもらった。
「ミャンマーはよかったですか?また会いましょう」
固く握手をし、Aさんと別れ、ものものしい装備をした警備員と気さくに話をしてセキュリティをぬけ中へ。
空港の外は見送りの人でごった返していたが、中に入るとびっくりするくらいガラガラだった。
掲示板のスケジュールをみてみると、発着の便数はかなり少なく納得。
夕焼けに沈む太陽を搭乗口越しから眺め、
さらばヤンゴン、また会う日までと心に誓った僕のうしろで、初めて国を出るのか、スーツを着た若い女の子が電話をしながら泣いていた。
異国へ旅立つ、家族とも離れる。知らないところに明日はいる。
こんなに不安なことなどないだろう。
ずっと泣いていたのが気になって、たまらず持っていたウエットティッシュを振り返って差し出した。
すると笑顔で、「ありがとうございます」と日本語でお礼を言われる。
そうか、これから日本にいくんだな。
ヤンゴンでの滞在中、僕が出会った人はみんな親切だった。もちろんそうではない人もいるはずなので、思ったよりいい思い出しかない。
ホテルできびきびと仕事をし、会えば必ずしっかりとあいさつしてくれた従業員の方々。
スーパーで買い物をしていると、
「何かご入用ですか」
とほしいものがある場所まで案内してくれた店員さん。
言葉が通じなくても嫌な顔せず、丁寧に身振り手振りでおいしさを伝えてくれたお店の人や、
「なんだまだ残ってるじゃねえか、もっとくえ。どうだ?美味いか?そうかよかった」
と、多分そんなことをいって気遣ってくれた、街中のごはん屋さんのおじさん。
外の景色を眺めていたら、遠くで目があって微笑んでくれた女学生。
空港で道を案内してくれた男性。言葉が通じない分、人の心をとても感じたような気がする。気恥ずかしい言葉かもしれないが、人間まだまだ捨てたものじゃないなって考えさせられたのだ。
帰りのフライトはバタバタで、ヤンゴンからスワンナプームへ。乗り換えの時間が思っていたよりあまりなく、のんびりお土産を見ていた僕ははっとして、広大なスワンナプームの中をダッシュでゲートまで向かった。
バンコクからのフライトたくさんの人が乗っていて、みんなタイで観光していたのだと思う。
現地の楽しかった話をみみにはさみつつ、気がついたら眠っていた。
帰国。
日本の空気を体いっぱい味わいつつ、僕は家路へ急ぐ。
気を休めることなく一日休んだあと、また家を出て成田へ。
また出張だー!
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