【大阪】大和証券グループpresents 佐渡裕指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 with 角野隼斗
■2024年5月26日(日) 開演 15:00 / 開場 14:00
大阪:フェニーチェ堺 大ホール
Artist
佐渡裕(指揮)
角野隼斗(ピアノ)
新日本フィルハーモニー交響楽団
Program
チャイコフスキー:
ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
交響曲 第5番 ホ短調 作品64
アンコール
角野隼斗
ショパン:ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」変ホ長調 0p.18
新日本フィルハーモニー交響楽団
チャイコフスキー:「弦楽セレナード」よりワルツ
はじめに
私は今回のツアーで、福岡と大阪の2公演、本当に有難くも行かせて頂いたのですが、ホールの響きや演奏から受けた印象に結構違った部分もあり、忘れるのはもったいないと、思い出に書き残すことにしました。
(福岡公演についてはこちら)
書きながら、演奏を振り返る度、本当に素晴らしい時間を過ごせたことに感謝でいっぱいです。
プレトーク
開演前にマエストロ佐渡さんより、トークタイムがありました。
※覚えている範囲で書きますが、一部記憶が定かでない所もありますので、あらかじめご了承下さいませ。
⚫︎堺とのご縁
堺はこのホールが出来る前、市民ホールでオペラの指揮をしに来たこともあるし、フェニーチェ堺の誕生にも携わっていた。
⚫︎角野さんについて
東大出で頭が良い! 顎が細くて僕とは同じ人間とは思えない格好良さ(笑)。
ツアーもちょうど半ばだが、これだけ一緒に演奏していると、友達にならないタイプだと思っていた彼とも仲良くなった。
すごくお茶目で、演奏は素晴らしくて、楽しさに溢れている。今までこんなピアニストには出逢ったことがない。
⚫︎今回のプログラムについて
・元々ベートーヴェンなどが好きだったが、その次にロシア音楽が好きになった。
・ロシアは寒い地域だが、それ故に温もりを求めるからか、音が温かい。
・交響曲の五番はベートーヴェンの影響もあってか、名曲が多いように思う。
ピアノ協奏曲 第1番
初日の福岡シンフォニーホールと比べると、フェニーチェ堺大ホールの響きは音の輪郭がクリアで、一音一音の細かいニュアンスがはっきりと聴き取れました。
角野さんの解説によると、このコンチェルトは民謡からの引用が多いとのことですが、今日は音が聴こえやすいこともあってか、特にピアノの音色にそれを強く感じました。
軽やかに舞うようなピアノの音は、楽譜をなぞっているのではなく、その場で即興にて生み出されたかのように、とても生き生きしていました。特に第三楽章は印象的。
角野さんの演奏は、ピアノの音に血が通って、生き物のように音の粒が空間を舞い踊ります。
第二楽章は、初日と同様、演奏を聴いていると映像が浮かんで来ましたが、少し見える風景は異なります。
福岡公演では、ヨーロッパの森や湖でしたが、本日の大阪公演では、日本の山中を歩いているイメージ。
山の奥深く、木漏れ日を浴びながら川沿いを進んで行くと、途中、大きな滝を発見。
その近くで一服し、マイナスイオンを浴びたような心地になる清々しい演奏でした。
初日の演奏に比べて、水を感じさせるような清涼感が増しているように思いました。
華麗なる大円舞曲
カーテンコールでマイクを手に持って現れた角野さん。
トークタイムあり! これは嬉しい!
「フェニーチェ堺、今回初めて演奏させてもらったんですけど、堺って、ハニワが有名なんですか? 僕が熊本でくまモンTシャツを着ていたら、それがフリだと思ったのか、楽屋に行ったら、ハニワTシャツがどーんと置かれていまして(笑)
では、今日はもう一曲弾かせてもらおうと思います――ショパンのワルツ1番」
アンコールは、久々のショパン!
音色がクリアに聴こえるホールにすごくマッチしていた選曲だったように思います。
個人的にめちゃくちゃ好きな曲なので嬉しい……!
淡いベールを幾重にも重ねたような柔らかな音の上で、キラキラした音の粒が踊ります。
聴き惚れていると、何だか薔薇のような、すごく良い香りがしている錯覚までする演奏で、ショパンが活躍していた頃のサロンにトリップしたような感覚になりました。
クライマックスは音の粒がより煌めきを増して行き、最後の一粒が光になって溶けて消えた後、ババババーンと決めた瞬間が、もうめちゃくちゃ格好良い!
やっぱり、角野さんのショパンは素敵だなと改めて思いました。
交響曲 第5番
佐渡さんと新日本フィルの皆さんのタッグは、
「厚みのある豊かな音色が絶品だ!」
と改めて思った演奏。
最初は頭の中で予習していた展開を反芻しながら聴いていましたが、あまりにも音が気持ち良くて、私はいつの間にか考えながら聴くのをやめて、ただただ曲の世界に浸っていました。
本当に素晴らしい音浴体験でした……!
温かで柔らかな音の波が、じわじわと心と身体に沁み入ります。
何だかすごく元気がもらえて、体調までよくなった気がしました。
(実際、開演前はクーラーの寒さが気になっていたのに、終演後は全身がポカポカしていました。その状態が何と、帰宅するまで続いていたので、驚き!)
エネルギーに満ち満ちていて、ステージ上に天使の梯子が降りて、黄金色に輝いているように見えました。
クライマックスで高らかに鳴っていた金管楽器の音が、天使の福音の如き美しさで、涙が滲みました。
「弦楽セレナード」よりワルツ
お城の舞踏会に招かれたような感覚になりました。
オケの各パートの音色が繊細に紡がれて、それ等が一本一本、織物のように紡がれて行く演奏は、夢のような美しさ。
どこか高貴さを感じますが、決して近寄りがたいものではなく、温もりのある音色で、とても気持ちの良いひと時を過ごさせて頂きました。
おわりに
ここまで書いている間も、コンサートで受け取った感動とエネルギーで、心も身体もぽっかぽか。
本当に聴きに行けて良かったなと思う、奇跡のような時間でした。