外出だめなら、オンライン火入れナイトは?
熟成兄弟の理念に、「誰でも美味しくステーキを焼けるし、肉ライフを豊かにする」という文言があります。この場合、焼き方に関して技術的なものは一切なく、「知っているか、知らないか」の違いです。今回は、そんな焼き方について熟成兄弟の考え方を書いてみます。
大事なのは、焼き方の方法ではなく
肉ライフを楽しむこと
これに尽きます。今回紹介する焼き方はお肉を楽しむための一つの方法に過ぎません。が、これを知ってしまうと、巷のステーキで満足する機会がガクッと減ります(笑)そのくらい一気に肉ライフを引き上げてくれます。
きっかけは、Twitterでの出来事
昨日、こんなやり取りをしました。ヤマシタさんのリアルタイム配信のポテンシャルのTweetから始まりました。
というのも、既に頭にはイメージがあって、それはこの大先輩のこの記事です。今回のタイトルは思いっきりそのまんまリスペクトを込めて継承させて頂きました(笑)
これでイメージは出来上がってました。
熟成兄弟の販売方法
熟成兄弟は、食肉の小売業を主軸に攻めて行く予定です。レストラン卸売の営業は今のところ予定に入れていません。出張ホームパーティやイベント&ポップアップで、直接お会いして販売するスタイルです。リアルにこだわりました。直接お会いして熟成兄弟のトークを聞きながら、味わって頂いたほうが、より訴求効果が高く、コアなコミュニティが作れるのでは?と仮説しました。また、ネガティブな面では、EC販売で待っているだけなので注文は来ない&扱い方(焼き方)を間違えて残念な終わり方になるのでは?といった予測からこの至るところに出向く営業戦略にしています。
とはいえ、コロナウイルスの影響もあります。先週からまずは知人友人も含めた各所に連絡を入れていますが、ある程度人が集まった場所で飲食開催にはちょっと抵抗のある声も頂きました。あとはお一人参加の場合は、ハードルが高い。遠方の場合はどうしても会えない。せっかく興味持って頂けているのに、届けることができない。というジレンマもあったのも事実です。
とはいえ、僕等の焼き方理論であれば、条件が揃えばオンラインで一緒に肉を焼けるのではないか?という仮説があります。下記に説明します。
肉は数字で焼ける
まずはじめに、僕等が推奨する焼き方は、あくまで基礎的なものです。ここからアレンジして頂いてもいいですし、「もっとこうした方が美味しいよ」なんて話もアリだと思っています。
◆準備するもの
・指三本分のかたまりステーキ肉
・フライパン(家庭用)
・ストップウォッチ
以上です。これだけで大丈夫です。
◆焼き方の手順
(1)常温に戻し、直前に塩をふる。
(2)弱火で交互に1分30秒ずつ、繰り返し焼く。
(3)肉の芯温が50℃到達したら、仕上げに強火で焼き上げる。
とろ火(超弱火)で、1分30秒ずつ裏表にひっくり返し、交互に焼きます。
火のイメージとして、「チリチリチリ」と音が少し出ている程度です。弱火の定義が難しいので、音でも定義します。肉の芯温が50℃になったら、仕上げに強火で外側に色をつけます。最後に、5分間肉を寝かせます。以上です。これだけ。ただし、交互にきちんと同じ時間焼くことが大事です。レアが好きな人は芯温40℃でオッケーです。※ヴェルダンが好きな人は納得するまで加熱してケチャップかけて食べてください。
熟成兄弟の考え方
芯温確認を感覚で行う方もいますが、毎日焼いてるわけではないので、感覚に頼らず、数字ですべて管理できるような焼き方にしています。というか、結構レストランでも、感覚の焼き方をしていると失敗して届くことはあります。この裏付けとして、熟成肉の勉強でアメリカ滞在していたとき、パッサパサの高級100日熟成ステーキに当たる機会がありました。同席したアメリカのトップレストランのシェフが話していたのは、「肉の芯温を測る。特にドライエイジングビーフは水分が少なく、感覚で焼くのは難しい」と言っていました。ステーキ大国アメリカで試行回数が桁違いに多いシェフが数字を大切にしてるのです。しかしながら、火入れという作業は底が知れず、迷宮のようなものだと思います。個性のある素材、調理環境、趣向等に左右されるため、正解がない世界です。奥が深い故、入り口付近に誰も近寄らない。
「肉焼きはプロじゃないとだめだよ」
これだとステーキを家で食べる人は増えません。もちろん、どんな作業も奥が深いのは当たり前ですし、敬意を持っています。しかし、人間はゴールが見えるから一度やってみようという気持ちになります。冒頭にもあったように我々は、自宅で肉ライフを楽しめる環境作りに貢献できるよう活動を意識しています。
根拠解説
これらの考え方は、肉王子から教わったり、自分たちで疑問に思ったことを調査&実験した結果に出てきたものです。下記にまとめます。
◆肉を常温にする理由
冷蔵庫から出したばかりの肉を焼くと、中まで火が入るのに時間がかかります。火が入るのに時間がかかるということは、肉の外側に火が入りすぎてしまう恐れがあります。
◆塩をふるタイミング
フランス料理の世界では肉に塩をするのは「焼く直前」がいいとされているそうです。肉の中の水分が出るのを防いで肉汁を保ち、素材になるべく負荷を掛けない(手を加えない)ため。このデメリットは、塩を焼く直前にすれば、浸透圧が働く前に焼き始めることになり、表面には塩の粒が付いたまま、焼き始めるということです。塩はすぐ真っ黒に焦げます。その香りは肉にも移り、やわらかくても、焦げ臭くなる。また、食材の中にまで塩味が入らないということ。表面についた塩は、焼いている途中であらかた剥がれ、中には塩気が浸透しない。ミシュラン星シェフでも、これが嫌で塩を浸透させてから焼くシェフもいるとのことです。
◆弱火で焼く意味
先ずは、肉という素材の性質と向き合うことから始めてみます。
牛の筋肉は、束状になった筋繊維を筋膜が包むように出来ています。筋膜は、60℃以上で加熱されると収縮し、硬くなる性質があります。食肉の大部分は、骨格筋と呼ばれる筋肉です。構造的にみると細くて長い筋肉の細胞である筋線維と、その筋線維を束ねる結合組織の膜から構成されています。この筋線維の束の直径が小さく、密度が高い状態を「きめ」が細かいと呼んでいます。きめの細かさは、運動量によって異なります。運動量が多いと骨格筋が収縮、弛緩を繰り返すため筋線維も太く強靱となり、運動量が少ないと筋線維も細くやわらかになります。ほとんど筋肉の収縮運動をしない「ヒレ」や「ロース」はきめが細かく、常に運動量の多い「かた」や「すね」はきめが粗い部位になります。(c)財団法人日本食肉消費総合センター
肉は60℃以上で加熱されると肉汁が外に出やすくなります。肉汁を閉じ込めるために最初は強火で焼くという情報が出回ってますが、別にそれが正義ではありません。正確には、肉の中の温度が、60℃以上で肉汁が出やすくなること、強火で焼き始めた時の方が肉汁が多く、肉の重量変化が大きいこと。
以上のことから、牛肉ステーキはとろ火(超弱火)で火入れします。
◆交互に焼く意味
次に、表裏を交互に焼く(裏返す)理由です。
60℃以上で加熱すると肉汁が出やすくなるということは、どちらか片面だけ過剰に焼いてしまうと、加熱しすぎてしまいます。また、指3本分の厚みをもたせることで、焼き側とは反対側は肉を休ませる効果もあります。
◆強火で焼き目を入れる
見た目と食感にあります。見た目の話ですが、見た目は馬鹿にできません。食感(ガリっとした外側、ジューシーな内側)を実現するために、三層に焼き上げるイメージで火入れします。
写真にあるTHE BURNの米澤シェフの焼き上がりは凄い好みです。
オンライン火入れナイト開催します。
というわけで、僕等の理論でいけば、オンラインでも条件が揃えば、みんなで一緒に火入れするというのが達成可能です。肉は熟成兄弟が揃えるようにします。温度計もセットでスターターキットのイメージで送ります。
火入れは素材に熱を加える作業を差します。派手に炎を上げながらの火入れ、余熱でゆっくりと行う火入れ、いろんなパターンがあり、いろんな楽しみ方があると思います。でかい塊肉をみんなで焼きあげると、テンションが上ります。言語化できていないですが、これが面白いところです。そのくらい塊肉には得体の知れない力強さがあります。肉でも鶏肉、豚肉と色々な食材がありますが、素材が持っている力強さは一番だと思います。これは種の強さであり、どれだけ言葉で見繕っても逆転できるものではありません。これをもっともっとおうちで楽しめるような仕掛け作りができればと考えております。
というわけで来月開催します。
「みんなで一緒に美味しいステーキ焼いて食べよう」
by オンライン、限定5名!
必要なのは、ネット環境とフライパンとコンロだけです。熟成兄弟が肉を用意して事前に配送します(お代不要)
もちろん熟成兄弟も当日は一緒に焼くので、各々焼き具合などシェアできればいいかなと思っています。4月に肉の納品日が確定しますので、日程確定後、正式に募集開始します。
乞うご期待!
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