空即是色 色即是空 〜言語超越とヒトのWell〜
とある教員仲間からこの記事がシェアされた.
最近よく見る, 生成AI系の教育現場への適応についての一側面を切り取った情報だ.
筆者は公教育の現場の先生方と会話を共にする機会に恵まれている.
GIGAスクール構想のような大きな変化が訪れた際に, 大なり小なりの教育委員会との摩擦について話を聞いた経験がある.
といったようなお声だ.
これは筆者がたまたま偏った意見を聞いたのかもしれないが, 全国で講演活動をする中で, 一様に観測しているように思う.
おそらく読者の皆様も, こういった記事に対する教育者の反応は, 予想に難くないのではないか.
筆者は, こういった議論に疲れ果てたので, 腰を据えて大言語モデルとの向き合い方をこのnoteで考えたい.
言語超越時代の学び
さて, 2023年の3月中旬に世界に衝撃が走ったChatGPT-4の登場は, この記事を書き上げる同年9月16日までに, マルチモーダルな言語表現がどんな影響を生むかを十分世界に知らしめている.
あるときはテキスト, あるときはmp3, そしてまたあるときは画像データと, 必要に応じて表現の形式を自由に変化させ, さらに可換である特徴を持つ.
あらゆる概念がエンべディングされたベクトルとして計算され, 緩やかにその表現を調節可能となっているのだ.
するとどんな良いことがあるかといえば, 映画マトリクスシリーズで表現されているように, 現実世界で起こり得ない事象が考察できることにある.
例えば, 「ヤドカリが成長して月になる.」という事象は現実世界では起こり得ないことは自明だが, 言語世界では表記した瞬間に表現可能と認識できる.
ヤドカリが成長して月になるまでのプロセスをChatGPTでテキストでモニタリングすることもできれば, その気になれば, 動画生成サービスでレンダリングすることも今や容易だ.
何をしたいか掴めない方は次のChatの表現を参考にしていただけると, 言語空間での事象の開放を理解できるだろう.
重要なことは, これらの表現が「言語」の種類に関わらず, 概念を表現できることだ.
これを筆者は「言語超越」と表現している.
さて, ここまでくると, 言語超越のメリットに着目できる準備が整った.
架空の設定が可能となった今, これまで現実世界ではさまざまなバイアスから思考難度が高かった, 「知識のキャズム」をも滑らかな言語表現で探索可能である.
ここが現代の教育, とりわけ探究的な学びに本質的に作用すると考えている.
私は「プロセス」を見て探究と捉えたくはない.
さまざまな解釈があることも理解しているが, あくまでここでの探究的な学びは, 誠に勝手ながら目的地が未踏であることを意味したい.
文脈が若干曖昧なまま紹介するが, 事実, 探索的な新薬開発でChatGPTはすでに大活躍をしている.
これが医療分野だけであるはずがない.
般若心境における空即是色、色即是空
さて, ここで話を変える.
あなたは「空即是色、色即是空」という言葉を聞いたことがあるだろうか.
まるでこの解釈は, 微分可能な表現調節と重なるように見える.
この言葉超越を「学び」の世界に当てはめると、どう映るかを考えてみることで, 短期的で近視眼的な教育改善から脱却した, 夢のある自由な発想が可能になるように筆者は考える.
学びの時間対効果の進化
さて, noteの投稿を復活させたわけだが, GIGAスクール構想直前の2020年のコロナ禍で筆者は次のnoteを書いている.
ここでのべた学びの時間対効果は, すでに多くの学校で実感レベルで実現している.
だが, 大言語モデルの登場でそれはこのようなイメージとなるだろう.
我々教員は一年で行える授業数に限りがある.
誤差があってもせいぜい3,4コマがいいところなので, 授業内容や生徒の到達点も, 段を飛ばした変化は起きづらいと言えるだろう.
ところが大言語モデルを用いると, 医師国家資格と弁護士資格試験を同時に合格するような知能を味方につけるわけなので, 子どもたちの探究テーマをスムースにアシストするエージェントとなる. (詳しくはOpen AI GPT-4 paper参照)
https://arxiv.org/pdf/2303.08774.pdf
基礎基本から学び, 応用へという従来のパラダイムが, ガタガタと音を出して崩れ, 本場の風を浴びる中で, 知識の穴を瞬く間に埋めていく学習法が可能となる.
その際に役立つプロンプトは, このような形.
これを実行するとこんな感じで, ゴールに応じて適宜必要な知識や思考ステップが初期状態で整理された後に、自己調整されて出力される.
(内容はあくまで例示で, プロンプトの働きを伝えるのが目的)
これはあくまで例であるが, このような対話的なエージェントと, 今だかつてない表現を見つけては探索し, 必要に応じて実験をしていくことは, これまでのイノベーションのプロセスを促進するものであろう.
ここまで書いたが, 私は, 教育現場で扱える学びにおいて, 「必ずしも量が増える」「難易度が上がる」ということを伝えたいわけではない.
ヒトの適応速度と知的生産の矛盾
ここまで, 夢いっぱいの話を展開した.
しかし, こんな素晴らしい技術革新の中, 私たち教育界はまだまだ子供のようにゆっくりと歩いているのが現実のところ.
そう, 人間の適応のスピード, 特に教育業界というレガシーな中央集権的かつ, 大学入試における集約的な計測で閉じている業界では, ロボットやAIとは違い, 発展速度が遅いように見える.
私の母は, 今年76歳になる.
元気に幸せに暮らしているが, 残念なことに登場してもらう.
私たちが難なく新しいアプリを使いこなす一方で, 母は, スマホで電話をかけることすら億劫である.
本質的には, テクノロジー界と教育界の技術レベルの差は, この例に似ている.
子どもと国の未来への投資としての教育のはずが, テクノロジーへの順応においては, そのステークホルダー個々の機能から, 全体最適なメリット創出が出しにくい構造が横たわっているように見える.
今後も, テクノロジーの教育への新しい順応プランを描き終えた頃には, すでにその何周も先を行くイノベーションのニュースに肩を落とすことだろう.
もう追いつくことは諦めて, その前提に立って, 教育の発展を考えねばならないように思う.
「時間」と「Well」
では, 子どもたちや先生たちの学びの創出についての「Well」, つまり「よさ」をどう捉えるかが, 非常に大きなミッションに見える.
早く走れる砂浜用のシューズをゲットしたが, 海辺で走り続けることが, 良いとも限らない.
砂を触りながら, 波の音を楽しむような, ゆっくりとした時間をただ過ごすことも良さになりうる.
つまり, ここには中途半端に介在する「時間」というものが学びにおける「Well」を探るキーになりそうだ.
子どもが一定水準まで学力を向上させる「時間」をカリキュラムに落とし込んだ指導要領や、時間割がもしもなくなれば・・・.
認知レベルの差を無視して, 無理やり授業コマ数を「先に進める」ことや「浪費」することが現在はどうしても起こるのは, 1クラスに40人近くもいることに加え, 時間割が存在しているからだ.
これは習熟度別クラスにしても, 大言語モデルの個別最適性に比べれば, 気休め程度.
教員サイドが努力しても, 生徒の計測学力値の正規分布における標準偏差距離がやや変わる程度だろう.
コマとしての学びから, ヒトとしての自由な生へ
「空即是色、色即是空」という言葉を通して, 私たちは新しい「学び」のあり方が, 個々人の意思に応じて実態のある具体的な情報にもなりうれば, 形をかえ, 未だ発見されてないような表現方法に形を変える.
しかも, 講義主体で一方通行になりがちだった昭和の教育からは全く逆で,「プロンプト」をトリガーにユーザーに提供される.ユーザーが望んだ時間に, 望んだ形で, 望んだ質量で.
早く学びたい子はスピーディに.
じっくりと学びたい子はのんびりと.
これは大量生産のコマとしての学びから, ヒト本来の自由を取り戻す学びだと考える.
一般的な読み書きレベル, 一般教養の基礎レベルをこなした後は, 探索的に学時間を過ごすことで, 一見ゆっくりに見えるこの学習が, 実は回り回って一番知識技能がつくように, 授業をしていて筆者は思う.
だが決して, これまでのレガシーを愚弄してるわけではない.
教育界における大言語モデルAIエージェントの登場は, 決して基礎基本となる知識技能をおろそかにするものではない.
むしろ, 誤解を恐れずに言えば, これまで程度の内容など, もっと早くに習得できる可能性があることを主張したい.
長文になったのでここで筆を置く.
空即是色 色即是空 〜言語超越とヒトのWell〜 を考えることは, この時代の変わり目を生きる教師の喜びだと考えている.
ぜひとも多くの教育者の方と, その喜びを共有していきたい.
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