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【モンゴル南部】ドンドゴビライフ8日目

 ここを発つのは今日だと聞いていたが、昨日その事をケシーに話したら「チンギスからは7月5日だと聞いた」と言う。
 いつの間にか予定が変更になっていたらしい。

 昨日の夕方は調子が良かったけど、電波がなさすぎてメッセージの送受信をするだけでも大変なので、あまりヤンジッドルマさんに連絡できていない。
 メッセンジャーで最後のメッセージも「送信できませんでした」という表示が、LINEとは違って再起動を何度しても消えないままだ。


 今日はまた地方の小ナーダム。

数頭ぐらいならこんな感じで、わざわざ馬運車(と言ってもただの大型トラックだけど)は使わないみたい


 モンゴルでは車の定員は考えず、乗れるだけ乗って移動する。
 充分なスペースを空けて座ったのに、チンギスは嫌がって乗りたがらない。

 前回のホストマザーがやっていたのを思い出して、シートの前の方に腰掛けて、シート奥のスペースを空けたら乗ってくれた。
 でも両隣のチンギスとエルカーは遠慮なく快適に座るので、私は両腕でオフロードを走る車の振動に耐えねばならない。


 運転するプーチェさんと私以外みんな寝始めて、つくづく私は日本人だなぁと思った。

 みんな我先に車に乗り込んで自分のスペースを確保するか、人が譲らないと乗車拒否。
 しかも各々が広いスペースで快適に寝ているから、ますます私の背中側は狭くなっていく。

 異国でそんな外国人に囲まれて眠れない車内にいると、1人で他みんなのため我慢している自分ってすごく日本人っぽいなーと実感した。



 でも、日本でも他人への気配りに疲れるが故になるべく厚かましく居ようと思っているから、1人損している状況に気づいて私も遠慮はやめる事にした。


 途中エルカーが起きて周りを見た隙に、シートへ身体を倒した。

 当然「お?」みたいな顔をされたが、ニヤッと笑いかけたら彼女も「やられたー」みたいに笑い返してケシー側へ身体をどけた。

 どうせ個々人がベストの状態を模索して行動するから、遠慮せず私も自分の事を1番に考えて動けば良いんだよね…きっと。



 現地に到着。
 前回の滞在先に私達を送ってくれた、マザーの妹さんがいた!

 チンギスや子ども達は他たくさんの年長者たちにも挨拶している。

 奥へ進むとオボーの前に大勢が特別な料理を囲んで座り、談笑していた。

地方のナーダムは親戚の集まりも兼ねているのかな?


線香なのか、オボーの前には乾燥させた草を細かく砕いたような粉末に火が点けられている
甘くないんだけど、ケーキらしい

 馬の乳があると言うので、飲んでみたいと答えた。

 初めてのアイラグは今まで飲んだどの乳より酸っぱかった。
 断ったケシーにも、結局ミルクが運ばれてきた笑


 私は全部飲み切らねばならないと思って頑張っていたけど、ケシーが一口飲んでチンギス経由で返していたのを見て、私も周りの人達に御礼を言いながらしれっとテーブルに戻した。



 レースまで待機しようと車に戻る途中、チンギスは車に轢かれたトカゲを見つけて私に当てようと追いかけてくる。

 逃げたら転んだから、仕返しに手元の砂を掴み投げたら不機嫌になった。しかもその時にスマホを落としていたみたい…
 数分後ポケットにないと気づき、急いで探しに戻った。

レースの準備
今日は完全武装
邪魔な毛は紐で括る
尻尾も括るが、一筋だけ残すのが伝統らしい




 レースのスタート地点へ移動し始めたら、オボーの前にいた素敵な老夫婦も車に乗り込んで来た。
 2人とも刺繍が入ったデールにブーツ、カンカン帽子とサングラスを付けたオシャレな夫妻はプーチェさんの両親みたい。

 レースが見やすい2列目のシートはぎゅうぎゅう詰め。

 ご夫婦が乗り込む時エルカーが降りるためドアが開いて、ケシーに「あなたは降りなくて良い」と言われてわかってるんだけど、ドアを閉めたくても座るスペースがない!

 プーチェさんの恰幅が良い奥さんも含めた5人が2列目に座って、私は窓に押しつけられながら移動する事になった…


 スタート地点で興奮する馬達を抑えられず、雪崩れるように競馬が始まる。 

 疾走する馬達。



 1レース目は末っ子の乗る馬が4位、2レース目はトクソーの乗る馬が1位に入賞した。

 表彰式では馬を讃える歌?が歌われて、幸運を祈って馬の首とお尻にアイラグがかけられた。

メダルは騎手ではなく、馬に授与される



 レースの後はレスリング大会。

 ロシア系に見える大柄な男の子が優勝した。



 全部終わったら子ども達全員にお菓子が配られた。
 チンギスが少しずつ分けてくれたけど、どれも美味しかった。

どこからか買ってきてくれたフライドチキン

 鶏肉も揚げ物も食べるのが久しぶりで、ご馳走に感じた。




 長時間ずっと密着して車に乗っていたら汗をかいて、帰ると自分が臭い気がして気持ち悪かった。

 ひとまず馬の世話に行ったけど、せめて下着だけでも着替えたくなって家へ取りに行こうと思ったら、次女に「どこへ?なぜ?行くの」と追及された。

 答えたら行かせてくれたけど、プライバシーを含む人権がほしいなぁ…

 この環境で失われた清潔さとか便利さよりも、今はこれまで当たり前だった"人としての扱い"が欲しくなる…
 そんな毎日も明日が最後。



 同じドンドゴビでもここは草が生えていて、少し気候も違った。

 歩くと小さなトカゲが逃げて行くのは同じだったけど、小鳥とかネズミとかもいて、砂漠より生き物の種類が多かった。


 振り返るとチンギスばかり馬に乗っていたなぁ。

 毎日子ども達と馬を取り合って乗り、私も乗りたいと言うと放置されかけたり…いろいろ良い思い出は少なかった。


 明日はとりあえずウランバートルに戻るけど、ナーダムまでの4日間、望めば別のゴビの地域に滞在できる。

 モンゴル語だから人間関係はよくわからないけど、もしかしたらチンギスと奥さんの関係が良くないのかもしれない。

 もし彼女やこの家が彼を不安定にさせている原因なら、その別のゴビにある滞在先で、また彼の様子を見てみるのも良いかもしれない。

 そこでまた楽しい思い出が増えれば、1人で行かない所はチンギスと行きたいなぁ。

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