Web広告における「露出の拡大」が本質的ではない理由
「露出=認知」は短絡的な考え方
先日「SNSやアプリによってGoogle検索の利用頻度は一時期よりも減少傾向にある。リスティング広告よりも単価が低く、様々な媒体に配信できるディスプレイ広告を利用すれば露出量を拡大することができるため""認知増加""に繋がる」という言葉を耳にしました。
確かに「検索」の範囲は10年前と比べれば拡大しているため、利用頻度の減少や利用するタイミングの変化は起きました。
また、新たなチャネルであるSNSの登場で「SNSから直接サイトに訪問する」という動きが起こっていることからも「ディスプレイ広告」は消費者との接点として有効的であると言えます。
この場合「有効的」とは『自社サービスにニーズがある潜在層への訴求』や『特定のターゲットの関心を惹くことに特化したクリエイティブでの訴求』によって潜在層の中にあるニーズを掘り起こし、サービスへの興味を生み出すことを指します。
ここで重要なのは「ユーザーにとって有益な情報を適切なタイミングで配信・表示すること」です。
前述した「露出を拡大し認知を増やす」というのは本質的ではありません。ユーザー視点を完全に無視し、ディスプレイ広告をとにかく大量に配信することはマイナス印象を与えてしまい、ネガティブなイメージで認知されてしまう可能性を生みます。
ディスプレイ広告の本質を理解した上で配信設定を行わなければ「お金を使って企業の印象を悪くする」ことになってしまいます。
頭の中に存在のかけらを残す
Web広告の最大の特徴は「配信するターゲットを調整できること」
というのは少しでも広告に携わったことがある人であれば理解していることだと思います。しかし、ターゲットを狭めた配信をすると露出量は一気に減り、効果が見込めない点は事実としてあります。
また、「幅広く配信した方が良いだろう」と大は小を兼ねる形で範囲を広げてしまいがちです。
ターゲット設計で重要なのは「ユーザー視点」に立つことです。
・テレビCMに対して「ウザいなぁ」と思ったことありませんか?
・街中を歩いてる時に目に入った街頭広告の内容を覚えていますか?
または、その逆で「お!」とテレビCMで興味を惹かれた経験や、街頭広告を見て関心を持った経験はあるかどうかも思い出してください。
環境がデジタルになっても見る人間は変わりません。
大切なのは「適切なタイミング」で「ニーズを満たす情報」を「クリエイティブに伝える」ことなのです。
ターゲットの設定をする時や配信する媒体を選ぶ時は「場所」「属性」「クリエイティブの内容」「関心の度合い」を基にリアクションを推測し、仮説をもとに設計します。
このようなターゲット設計をすると「露出を増やして認知を得る」という考え方とは異なる思想で広告を配信することになります。
重要なのは「露出量」でもなく、「広告を見て即座にアクションをしてもらうこと」でもありません。
興味関心を惹き、次のアクションを起こそうというトリガーに対して訴求することです。
頭の中に存在のかけらを残すことができれば、ディスプレイ広告の役割は達成されたといえます。
媒体側にも問題がある
現在Web広告は低品質な広告で溢れており、不快なものとしてイメージが付くようになりました。
理由は明白で「ユーザーに見せること」に特化した結果、ユーザーにとって「ウザい」「邪魔」「ムカつく」「いらない」「不愉快」「怪しい」「詐欺っぽい」と思わせるようになってしまったのです。
・集中がしている時に広告が挟まれる
・目が疲れるような動的アクションがうるさい
・同じ内容の広告がずーっと表示される
・意図していないタイミングで表示される
・ページの遷移をすると間にCMのように挟まる
・動的な広告でコンテンツに集中できない
・興味関心が全くない内容が大きく表示される
・突然音声が流れるのでビックリする
・セクシャルな内容で不快に感じさせる
・身体的特徴に対してネガティブイメージを与える
など、広告配信によって不愉快な気持ちになる要素は多くあるのですが、これらは広告主だけの問題ではなく、「配信する媒体側(プラットフォーマー、メディアなど)」も関与していることになります。
ポップアップや遷移の途中に挟まれる広告などは媒体側で設定していることも多く、ユーザー行動を妨げ、大変不快な状態を自ら作っている状態です。
「収益が上がれば良い」と考えて「広告ファースト」なサイト設計にしているメディアも未だ多くみられます。
このままでは「広告そのものの価値」が低下し、不快なものとして周知されてしまいます。そして、広告業界の倫理が崩壊し、闇深い業界になってしまうのも時間の問題でしょう。
媒体側も「ユーザーファースト」を第一に考えなければいけません。
広告は「ユーザーファースト」で考えるべき
綺麗事ではありますが、広告業界は「ユーザーのことを最優先で考える」ことを徹底するべきだと私は考えています。
メディアサイトもブログも収益化のために大量に広告を設置し、「広告をクリックしてもらうためにコンテンツを作る」という広告ファーストが主流となってしまいました。
プラットフォーム側も最初は「ユーザーファースト」で考えていたのに次第に収益に目が眩むようになります。
YouTubeも「有料課金しない人を苦しめるだけの大量の広告設置」がデフォルトになってしまいましたし、TwitterやInstagramのようなSNSも広告がタイムラインに挟まれるようになりました。それもかなりの量です。
また、インフルエンサーマーケティングによって著名人の投稿には広告が絡むようになり、明らかに以前と比べて広告絡みの投稿が爆発的に増加しました。これも「広告ファースト」が蔓延した結果と言えます。
収益化することは大切ですが、収益に目が向き過ぎれば、やがて全てを失うことでしょう。
広告もユーザーファーストで設計することができれば「ユーザー体験の提供」へと繋がります。すると広告主も媒体側も双方がメリットを得られるだけでなく、ユーザーにも優れた体験と成功をもたらすことでしょう。
今一度自身が配信している広告に目を向けて「独りよがり」になっていないか確認してみてください。
【パーソナル】
名前:Uto
職業:Webマーケティングコンサルタント/ライター
趣味:サウナ、アート鑑賞、一人旅、音楽、ラジオ
特技:和太鼓、フットワークが軽い
【連絡先】
メールアドレス:yy.edih.xx@gmail.com
Twitter:@hd2OimM
Web制作会社のマーケティング支援部門でWebマーケティングコンサルタントとしてSEO、広告、コンテンツ制作、LPO、EFOなどの手法を元にお客様のWeb戦略のサポートを担当。提案・分析・企画・施策の実施・効果測定まで全て一気通貫で対応できることが強み。その後、Web接客ツールのベンダー企業にカスタマーサクセスチームとして参画を経て、フリーランスとして独立して活動中。