独身おじさんが今更『花束みたいな恋をした』を観た結果
今更ながら2021年1月に公開されていた『花束みたいな恋をした』をアマプラで鑑賞した。
さすが各所で話題になっていただけあって、この映画のメインターゲットでは無いであろうアラフォー独身おじさんの自分でも割と楽しめた。
もうすでに性欲も枯れ、恋愛からもすっかり遠ざかっている自分が、最も琴線に触れたところはメインテーマである主役2人の恋愛描写ではなく、菅田将暉演じる麦の変化だった。
麦はイラストレーターの夢を諦め、現実的に生きようと就職するのだが、過酷なブラック労働によって、どんどん表情や発言が変わっていく。そんな麦はとにかく周りに流されやすく、良く言えば純粋なのだが、何かと受動的なので、夢を掴むことは出来ない。
また死んでしまった先輩も「社会性や協調性は才能の敵だ」とか、カッコいいセリフを麦に対して吐いているが、結局のところ「誰々さんに認められている」ということを自分の評価軸にしてしまっていた。
やはり大きな夢を叶えるには、強い気持ちで自分を持っていなきゃいけないのだろう。そんなことをこの映画を観て再認識させられたし、自分も受動的で周りに流されやすい傾向にあるので、そこは本当に改めたい。
肝心の恋愛描写に関してだが、女性は別れを決めたら、きっぱりと次に向かうのに対して、男はうじうじして決断できないというシーンが身に覚えがあり過ぎて、かなり喰らったし、追い討ちをかけるように交際中に浮気をしていたことを匂わすシーンは脳裏に鋭利な刃がかすめ、古傷が傷んだ。
ただ、誰もが一度は憧れるであろう〝偶然な出会いから恋愛に発展〟とか〝セックス三昧なラブラブ同棲生活〟とかは、自分がまだ二十代の頃なら、いろいろとホルモンが活性化されたかもしれないが、アラフォーになった今だと驚くほど何も感じなかったのが、自分でも意外だった。
これは成長なのか、退化なのかは分からないが、もうこんな感じで誰かにときめいたり、異性の言動一つ一つにドキドキしたりすることはないのかもしれないと思うと少し寂しさのようなものはある。
でも、そういえば自分は恋愛弱者だった。これまで大した恋愛をしたことはないし、ずっと仲間内の男女のあれこれに対して、指を咥えて傍観していた側だ。
もし若かりし頃にこの映画のようなキラキラした恋愛シーンを見せられていたら、嫉妬に狂ってまともに観ていられなかったかもしれない、そんなことを思うと「歳を取るということも決して悪いことばかりではないなぁ」なんて思ったりもした。
軽い気持ちでアラフォーのおじさんが話題になった若い男女の恋愛映画を観た結果、過去のトラウマを思い出して軽い頭痛がしたり、夢を追うことの大変さを再認識させられたり、自身の成長(退化)を感じたりと思ってもみなかった方向の感想が思い浮かんだ。
恋愛映画を観て、ただただエモーショナルな気分になるという体験にはどうやら賞味期限のようなものがあるみたいだ。