2022年4月18日
久しぶりに映画館で映画を観た。自分は特に映画が詳しいわけではなく、映画館で観る映画はIMAXで視聴できるという理由からアメコミ映画くらいだ。
ただ最近観た『THE BATMAN』は、自分にとって映画偏差値が高すぎたのか、はたまた上映時間が長すぎる上に、物理的にも脚本的にも暗い映像がずーっと続いたためか、ちょくちょく眠ってしまい、あまり内容を覚えていない。(著名人たちからの評価が高いようなのでもう一度観てみようとは思うが、なにせ3時間もあるので少し腰がひける)
そんな感じで映画に対して、あまり熱量のない自分だが、今日鑑賞した『コーダ あいのうた』は何度もサブイボがたった(琴線に触れた)。
まず冒頭、漁船の上で歌う主人公の姿がカッコよく、その時点でこの映画の世界に引き込まれた。やはり歌をテーマにした映画だけあって、終始主人公が歌っているシーンは最高だった。主人公が歌うことを通して、自分と向き合い、苦難を乗り越え、家族とより深い絆で繋がっていくのだが、彼女の歌声はそれら全てを観客に納得させるだけの説得感があったように思う。主人公の素晴らしい歌声を観れた(聴けた)だけでも、この映画を映画館で観た甲斐があった。自宅のテレビではこの映画の魅力は半減以下になっていただろう。
あと聴覚障害者ゆえに起こってしまうギャグシーンも良かった。たしかに〝耳が聞こえない〟ということで「こんなことが日常的に起こってしまうよな」と、健常者の自分には想像もつかなった事態に笑ってしまうのだが、笑える反面、絶望とも隣り合わせになっていると思うと色々と考えさせられるシーンが多い。
もう自分はいい歳をした中年なので障害者に対し、多少の理解ができるようになったけれど、もし主人公と同じ高校生だったらと思うと、嫌な感じで描かれている同級生のような態度をとっていたかもしれない。笑えるんだけど、笑えない。ただ別に笑ってはいけないことでもない。そのバランスが絶妙でコメディドラマとしてのギャグセンスの高さを感じた。
また主人公の境遇を想うと、自分がどれだけ恵まれた環境で育ったのかと改めて考えさせられたし、心がえぐられた。ただこの映画はそんな安い同情を誘うために作られたのではないだろう。
この映画のテーマは〝リアル〟や〝生々しさ〟なんじゃないかと思っている。そう思うのは何度か描かれる主人公家族のラブシーンだ。障害者だって、自分達と同じ人間なんだし、当然発情するし、もちろんセックスをする。しかも〝映画的な美しくて綺麗なセックス〟ではなく、本能と本能がぶつかり合うような野性味溢れるセックスをする。なぜなら人間だから。その結果、アソコがアレになるかもしれないが、わざわざそのようなシーンが描かれていることからも「障害者を良くも悪くも特別扱いしないで!」という、作り手側からもメッセージを感じた。
他にも耳が聞こえないがゆえに、本人たちに自覚が無くとも、結果的に周りへ迷惑や不快感を与えてしまう。そんな障害者にとって不都合な現実もぶっ込んできている。
障害者だからと言って特別扱いしない。ただ色々と健常者とは違う部分もあるので理解は必要。この映画からそんな学びを得た。久々に映画館でもう一度観たいと思えるような映画に出会った。もうすっかり性欲が衰退し始めている自分にとって、情熱的なセックスを繰り返す登場人物のことを羨ましく思うし、ティーンエイジャーである主人公が家族を支えながらも、しっかりと〝青春〟をしているシーンに嫉妬した。