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経費削減が経理のミッションか?

経費に目を光らせるのが「デキる」経理?

他部署からの経理に対する、よくあるイメージ。

  • 経費の使い方にケチをつけてくる

  • 精算書に細かくツッコミが入る

  • ムダな経費じゃないかと文句を言う

私自身、過去経理として伝票処理をしている際に「この経費ムダじゃないか」と思うことは多々あった。広告宣伝費、旅費、消耗品費、会費…など自分が直接消費しない経費を「ムダではないか」と思う傾向が経理にはあると思う。
だが、稼いだお金を増やすために必要な経費(または投資)というのは、もちろんある。このあたりは経営サイドにいないと認識し辛いかもしれない。

(ただし、特定顧客や子飼いの部下ばかりとの交際費は今でも否定派。飲みニケーションでしか繋ぎ止められない顧客や部下なら、懐が寂しくなったらいなくなるものだ。そんな付き合いにどれだけお金を費やす必要があるのか。)

売上、利益よりも経費にフォーカスする癖がついた経理は、どうしても減点法(経費を使うだけ減点)でしか財務諸表を見ることはできない気がする。
「この経費がなかったら、利益はもっとあがったのに…」

経費削減は本当に有効か

会社が赤字である場合の取り組みの基本順序は通常以下の通りである。

  1. 固定費削減 (人件費、家賃、通信費…)

  2. 変動費削減 (仕入価格、製造原価…)

  3. 売上拡大

基本は上記のとおりであるが、では実際に削減できる経費はどれくらいあるものだろうか。もともと経費にムダがないようにしているところに「経費削減」を声高に叫ばれたら、「じゅうぶんやってるよ!」という声が返ってきそうである。
そして、過度な経費削減は営業活動の停滞や停止につながってしまう。

もちろん、中にはムダな経費や削減できる経費もある。
過去の経験で言えば、法人契約携帯電話のプラン変更や複合機の会社変更、航空券の一括購入サービスなどで年間数百万円の削減ができた。
けれど、それは前任者がそういった点に目を配っていなかったからこそできたこと。そんな「宝の山」は企業にそれほど多くは眠っていない。すでに経費コントロールを心がけている企業が削減・抑制を常に続けることは難しい。

そして削減によって失われる機会利益も踏まえて考えることが必要である。経理に経費削減を過度に求めるのは間違っているし、経理が経費「全般」に対して削減を言うのも違う。
本当に必要な経費か、本当に不要な経費かは判断が難しい部分もある。

損益計算書の最初の項目は売上高

経費を絞るよりも利益の取れる売上を拡大するほうがトータルで見ると確実である。
経費削減は一過性のもの。経費意識をもった企業ならそれだけで凌ぐには限界がある。しかし売上による粗利益の獲得は、経費削減による効果よりインパクトが違う。

厳密に言えば「売上の拡大」ではなく「売上粗利益の拡大」が必要。粗利益が増えるような売上が拡大すれば、当然経費も増加するがトータルで見れば増益となる。
営業上がりの経営者が(創業3年以内でもないのに)売上額ばかり気にして、粗利益率に見向きもしないことがあるが、本末転倒。企業は利益を追求し続けるから存在価値がある。
売上100億 利益1,000万よりは売上10億 利益2,000万円の企業の方が価値がある。

財務経理は売上をあげることはできない

上記については真実である。経理は営業活動をしない。しかし、それはそういった役割を課されていないからであって、財務経理職を蔑む理由にはならない。財務経理職の方も卑下する必要はない。

だが、バックオフィスも間接的に貢献はできる。
経理には社内外の重要情報が集まる場所である。それを生かした分析・提案ができる。
例えば、管理会計による売上推移や商品別粗利益分析、同業他社との比較、販売価格増減の利益試算など。
数字を扱う部署だからこそできるアウトプットはどの会社にも必ずある。中小企業はとかく資金繰りが最重要視され、その他の部分は後回しにされやすい。だが、資金繰りと同じくらい自社分析は大切なことである。

組織全体での数字への意識を持つ

経理には数字と情報が集まる。
しかしそれを会社で共有して経営判断に活かすことができなければ、「伝票入力と支払の部署」という単純作業部隊と見なされても仕方がない。
数字への意識を組織全体で持つには経営陣の助力も必要であろう。以下が重要ポイントだと私は考える。

  • 経営陣自身がもっと数字に興味を持ち、財務諸表への理解を深める

  • 経理の孤軍奮闘にならぬようトップダウンでの意識改革

  • 社内人材で不十分なら外部コンサルタントのサポートをつける

バックオフィスにお金をかけることを嫌う経営陣がいるのは承知している。しかし、経費削減が対症療法だとすれば、バックオフィス強化は原因療法である。バックオフィス強化と組織全体での数字意識は、思いつきの経費削減よりも意味があり、売上拡大による利益増加につながるはずだ。


株式会社Progress|清水裕矢


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