個人目標設定の意義と達成できる目標とは
ファンズ株式会社 CTO の若松(@yshnb)です。 CTO の思考シリーズの第3回として、個人目標設定について書いてみたいと思います。
なお、前回までの記事はこちらです。
弊社ファンズでは半期に一度、半期の期初に立てた目標設定の評価と次半期の目標設定のタイミングがあるのですが、ちょうどこの5月末で半期が終了し、6月より新たな期を迎えます。そんなこともあり今回はさまざまな会社においてあるであろう、個人目標設定を題材としてみました。
内容については、弊社の個人目標設定および人事評価制度に限らず、(スタートアップを中心として)ある程度は通用する内容としたつもりですが、弊社ファンズの制度をイメージしつつ記載している点もあるので、もし興味のある方はこちらもご覧ください。
なおこの記事自体は会社としての見解ではなく、あくまで個人的な考えを述べたものです。
個人目標設定はなぜ存在するのか?
個人目標設定って、正直に言えばめんどくさいですよね。そこでそもそも個人目標というものなぜ考えなければならないのか?という点から整理してみたいと思います。
目標を設定するということは、当然ながらその目標達成を目指すことになります。目標を設定し達成する意義として、おおまかに企業としての目標達成意義と、個人としての目標達成意義が考えられますが、まずは企業としての目標達成意義について考えてみましょう。
企業としての目標達成意義
企業はどのような目標を達成する必要があるか?
まずは企業がどのような目標を達成するべきなのか、という点について考えてましょう。おおよそ次のようなものが企業として達成するべき目標にあたるのではないかと思います。
ミッション・ビジョンの実現
たとえば弊社ファンズでは、「未来の不安に、まだない答えを。」というミッション、そして「国民的な資産運用サービスを作る」というビジョンを掲げています。
ミッションは社会的な使命を、またビジョンは我々としてのなりたい姿を明示したもので、企業としての目指すべき方向性を示したものです。
ミッションやビジョンを踏まえて目標を定めることは多くはないかもしれませんが、ミッションやビジョンを実現する未来のためには、先ず足元の目標を達成していくことが必要になってきます。
ステークホルダーへのコミットメント
株主のようなステークホルダーに対しては、出資をしたいただく上で、企業としての経営計画を実現することを通じて企業価値を大きくすることをコミットメントしています。支援していただいたステークホルダーの方々が最終的に利益を得られるように還元していく必要があります。
こうしたステークホルダーからの期待に応えられるように、企業としての目標を定め、それらを実現していく必要があります。
企業経営や事業の継続
企業経営や事業を継続させることも、企業としては重要なことです。
弊社ファンズの場合、 Funds を通じた資産形成の機会を提供する立場として、このプラットフォームを持続的に提供できる必要があります。そのためには、事業を運営する企業体としてのファンズも継続することが必要です。
企業の目標達成から考える、個人目標を設定する理由
ここまでに述べた企業の目標は、個々人が取り組む業務の積み重ねがあって実現できることです。そのため企業としての目標達成を実現しようというとするならば、まずは各自が正しい方向性で課題に取り組むことが必要となります。
2~3人の組織で、目標設定などなくても組織の目標達成のために個人が行動できるという状況であれば、企業としての目標達成のためにわざわざ個人目標を定め、目標達成のために行動するということは必要ないかもしれません。
しかし組織が大きくなれば、組織の目標達成のために個人がどのようにするべきか、自ずと見えづらくなってきます。個人目標を定めることは、個人として取り組むべき方向性と組織の目標達成のために必要なことの方向性をあわせるために存在しているものと考えられます。
個人としての目標達成意義
ここまでは、企業としての目標達成意義に基づいた個人目標の達成について述べてきました。ここからは、個人そのものとしての目標達成の意義について考えてみたいと思います。
個人として目標を設定し、設定した目標を達成する意義にはどのようなものがあるのでしょうか?個人としての目標達成の意義としては、次のようなことが考えられます。
昇給や昇格機会などの獲得
企業として、個人目標の達成度に応じた昇給機会が用意されている場合、個人目標の達成によって、昇給やボーナスなどの一定のインセンティブを得ることができるはずです。
このとき、企業としては営利活動を通じて利益を創出することで、個々の社員に対しても報酬を払うことができるという点は頭にいれておきたい点です。この点を踏まえても個人目標の設定は、会社としての目標達成に貢献するような目標を選ぶべきと考えられます。
またこのような制度の有無に関わらず、多くの会社では結果を出した社員を昇格させるという仕組みがあるのではないでしょうか。キャリアアップを目指すうえでも、目標設定という形で企業との間で目指すべき方向性を合意し、結果を出すことにより、ステップアップに繋げることができるものと考えられそうです。
個人としての能力開発
個人目標を設定する意義は、現在不足している知識やスキルを身につけるなど、自分自身の能力開発のためでもあると言えるのではないかと思います。
業務の経験を通じて能力開発をすることができれば、現在の仕事はもちろん、今後のキャリア、また場合によっては私生活などで役立つ機会もあるかもしれません。
現在自社で活躍しているメンバーには、できるだけ長く組織で活躍してほしいと思う一方で、今後どこかのタイミングで自社を卒業して別の道を進むこともあると思います。個人的には、そうした時にも自社での経験が次のキャリアステップに進む上で役立つような経験を提供できるようにしたいという想いを持っています。
適切な目標設定とはどのようなものか
ここまでの中で、目標設定にどのような意義があるのかという点について述べてきました。それではここからは、適切な個人目標設定とはどのようなものであるのかについて述べていきたいと思います。
組織としての達成意義がある目標であること
まずは組織としての達成意義がある目標であることです。企業は達成するべき目標があるからこそ存在しているのであり、個人目標設定は個人として取り組むべき方向性と組織の目標達成のために必要なことの方向性をあわせるために存在しているため、この観点はとても重要です。
例えば、個人的なスキルの向上や知的好奇心の探究、キャリアアップのための目標を入れようと考えられるかもしれません。しかし、企業としてそのようなスキルが求められていないと、目標を達成しても、組織としての達成意義はあまりないものとなる可能性があります。
組織としての達成意義のない目標になってしまっていると、設定した目標を達成できたとしても期待通りの評価をされなかったり、期待していたインセンティブを得られないこともあるでしょう。
個人として達成意義を感じられる目標であること
個人としての達成意義を感じられる目標であることも重要です。
いくら組織として達成意義のある目標であったとしても、個人として達成意義を感じられないような目標では、取り組む気もなくなってしまうでしょう。
現実的には、組織として取り組むべき目標が、あまり個人としての達成意義を感じられない目標であることもあるかもしれません。
ただ一見して個人としての達成意義を感じられないような目標であったとしても、その目標に取り組む過程で得られるものはあるはずです。
目標設定の意義についてはマネージャーの視点から、背景となる組織戦略やそれを踏まえて目標に取り組む意義、取り組むことで得られるものを伝えてもらい、達成意義に納得感を得た上で取り組めることが望ましいと考えられます。
行動により達成可能だと信じられる目標であること
目標を定めた当初から目標達成が不可能であると感じていると、目標があっても目標に対して行動することができなくなってしまいます。
個人にとってそのままでは達成できないけれども、何かしらの行動を起こすことで達成できると信じられる水準の、行動変容を促せるような目標設定である必要はあります。
達成可能だと信じられるような目標だけを立てることで、人によっては絶対に達成不可能な目標を達成するような、根本的な発想の転換などが出てこなくなる可能性はあるかもれません。
ただ、それはそうした非連続な発想が要求される目標でも達成の道筋をイメージできる人が取り組むべき目標であり、そのイメージがないまま目標だけを立てたとしても、達成することは難しいと思われます。
よい目標は達成可能な道筋が見えている
個人目標設定において、適切な目標設定の要素の1つとして、「行動により達成可能だと信じられる目標」があると述べました。この点をもう少し詳しく考えてみたいと思います。
設定した目標が「行動により達成可能だと信じられる」かどうかは、「目標達成の道筋を解像度高くイメージできている」か否かによると考えています。
目標達成の道筋をイメージできていないと、目標の達成は難しい
「目標達成の道筋を解像度高くイメージできている状態」とは、目標達成にあたり具体的にどのように取り組めばよいのか、また具体的に取り組んだ結果をおおよそ想像できている状態です。
反対に、目標を立てた時点でおおよそどのようなステップで目標を達成していくか…ということを自分自身でイメージできていないと、目標を達成することは難しいと思われます。
目標達成をイメージできていない場合は、目標に対する解像度を上げていく作業が必要になります。
個人的には、個人目標の設定という作業自体、目標達成の道筋をイメージするための作業であると考えています。さらに踏み込めば、「目標達成のための道筋を解像度高くイメージできる」目標を立てることができたならば、半ば目標は達成されたようなものだとすら思っています。
達成までの道筋をイメージできない場合の対処法
目標達成に対する道筋への解像度が低いときに、その道筋への解像度を高くするには、どのような方法があるのでしょうか。
ここでは、目標達成の道筋に対しての解像度が低いケースについて、いくつかのケースに分類し、どのように考えるべきかの指針を整理してみます。
目標として達成すべき結果そのものの理解が曖昧な場合
まず、達成すべき結果そのものへの理解が曖昧な場合があります。典型的には「何をしたら達成なのか」が客観的に明らかにできない場合です。
定量的な達成ラインを定められるとわかりやすいですが、そうした性質の業務ばかりではないと思います。
このような時には、目標達成したときの具体的な状況について想像を深めてみることで、達成すべき結果を見つけられる場合があります。
そのほか、過去の類似事例をもとにして、達成すべき結果を定めることも一案となるのではないかと思います。
達成すべき結果はわかるが、取り組み方がわからない場合
目標として達成すべき状態はわかったが、そこから具体的に取り組むべき課題に分解することはできない場合もあります。今までに取り組んだことのない目標や、土地勘のない課題に取り組むときに多く発生する問題です。
また目標を分解し、取り組むべき課題はわかったが、その課題に対しての解像度が低く、具体的な行動としてどのように取り組んでいけばよいかわからない場合もあるかもしれません。
これらの問題があるときに、マネージャーなどが取り組むための答えを持っている人がいるならば、そのような人からアドバイスをもらうことがもっとも効率的な方法だと思います。組織内に答えを持っている人がいない場合、書籍や Web などで情報を得たり、社外の有識者に相談するなどを通じて、取り組みへの解像度を上げることが必要なのだと思います。
リソースや実現可能性が見通せない場合
取り組み方自体はなんとなくイメージできているものの、解像度が低く実現可能性や所要時間などの必要リソースを見通せない場合です。
営業や採用活動であれば受注率から逆算したリードの獲得数、開発であれば設計・開発・レビュー・テストなどの各工程から所要時間やコストなどを見積もる必要がありますが、課題から結果を出すまでのリソースを見誤っていると、結果を出すための時間が想定以上にかかってしまい、結果的に必要な結果を出すことができない場合もあります。
こうしたケースでも取り組み方がわからない場合と同様、取り組みへの解像度を上げていくことが必要ですが、それと同時に不確実性がある点を織り込んでおき、想定通りでなかった場合のバックアッププランを用意しておくことなどができるとより望ましいでしょう。
目標は達成できるとみんなうれしい
というわけで、今回は個人目標設定について書いてみました。
自分自身が目標を決めて取り組む立場としては、ここまでに書いてきたようなことを必ずしも実践できているかというと実はそうでもなかったりするので、自分自身の反省・思考の整理という点も踏まえて書いています。
以前の記事でも書いたのですが、(組織の目標にもとづき適切な目標が立てられている前提で)マネージャーとしてはメンバー全員が目標達成できることが、企業として目指すべき結果としてもピープルマネジメントの観点でも理想的な状況です。
個人目標設定やその達成ができるといろいろ嬉しかったりするので、個人目標設定について、うまく取り組めるようになるとよいなと思っています。
最後に
恒例の内容ではありますが、人材募集についても触れておきます。
人材募集について
現在募集中のポジションについてはこちらです。もしご興味のある方は、ぜひご連絡いただけると嬉しく思います。
ファンズの採用に関する情報については、以下の内容もご覧ください!
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